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番外編
花恋ちゃんの新しい恋。その続き。
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あやめ大学1年の9月が舞台です。
ーーーーーーーーーー
「「あ」」
大学生は夏休みの始まりが遅いため終わりも遅い。まだまだ夏休み期間中である9月のとある休日。ファーストフード店でのバイト帰りの私は夕方の駅前をのんびりウィンドウショッピングしていた。
思えばその日はちょっとツイていなかった。クレーマー気質の客とバッティングしたり、それを引きずって、次に来たお客さんに提供するものをうっかり間違えたりと失敗してしまい私は凹んでいた。バイト終わりに彼氏に弱音を吐こうとすれば、彼氏は忙しそうで電話に出ない。
…たまたま運が悪かったんだと思っていたが、やっぱり今日一日ツイていないんだな。
「…お前…」
「…お久しぶりです」
普通にしていれば際立ったイケメンなのに、私を見つけると喧嘩を売ってくる間先輩と遭遇したのだ。
私はうんざりする顔を隠せなかった。だってこうも敵対視されると…ねぇ?
いつも睨んでくるけど、今日はいつもにも増して親の仇のような目で睨んでくる。しばらく会っていなかったというのに何なのよ。
「…お前、とことん俺の邪魔をする気だな…?」
「……邪魔?」
何のことだよ。何の話なのよ。
間先輩の言っている事がわからなくて私は訝しんだ。するとその態度が気に入らなかったのか、相手は舌打ちをしていた。
この人お坊ちゃんのくせに行動が雑なんだよなぁ。何でこんなに荒々しいんだろうか。同じお坊ちゃんの伊達先輩の行動は落ち着いていたのに。性格は置いておいて。
私はここから立ち去ってしまいたいなと考えていた。ただでさえバイトですごい凹んでいる所にこの人の八つ当たりなんて構ってる余裕はないのだ。
「しらばっくれんじゃねぇよ…お前が…従兄なんて出すから花恋が……あの男のどこがいいんだよ…!」
「……あぁ、蓮司兄ちゃんのことですね、なるほど」
そう言えばそんな事あったね。たまに花恋ちゃんが蓮司兄ちゃんとの進展具合を報告してくるが、まだまだお友達の域を抜けないらしい。
「…いやー…私も一度は止めたんですけどね…でも同じ大学だから私が紹介せずとも出会ってたと思いますよ?」
「顔が似ているだけじゃねーか! あんな平凡男のどこがいいんだよ!」
うるさいな。平凡で悪かったな。
「平凡で悪かったな」
私の心の声が漏れていたのかと思ったけど、私こんなに声低くないな。…誰だ?
「俺の従妹をいじめないでくれない?」
「あ、蓮司兄ちゃん」
「出たな田端蓮司…!」
噂をすれば影。私の父方の従兄の田端蓮司が登場した。すごい偶然。
間先輩は更に険しい表情になった。
それを蓮司兄ちゃんは呆れたような顔をして間先輩を見ている。この様子だと大学でもしつこく絡まれているのだろうか? …一応蓮司兄ちゃんの方が年上だし、その態度はまずくないか間先輩…
「文句があるなら、あやめじゃなくて俺に言えばいいだろ」
「俺はこの女にも今まで散々煮え湯を飲まされてきたんだよ。口出しすんな」
人聞きの悪い。間先輩の言葉を受け、蓮司兄ちゃんが私を見下ろしてきた。
「…お前何したの?」
「…花恋ちゃんに振られた後にバッティングしたり?」
後夜祭で壁ドンされてキスしてたの邪魔した事は言わないほうがいいな。花恋ちゃんもそんな事を好きな人に知られたくはないだろうから。
「それだけじゃねーだろ! 行き着く先で出没して!お前はどれだけ邪魔すれば気が済むんだよ!」
「邪魔っていうかタイミングが…ねぇ?」
「初恋の相手だかなんだか知らねーけど、お前なんかこいつの代わりにされてるだけだからな!?」
「初恋? …どういう事?」
間先輩が再び蓮司兄ちゃんに噛み付いてきたのだが、言われた言葉に蓮司兄ちゃんがきょとんとしていた。そして私を見下ろしてどういうことかを尋ねてきたので私は簡単に説明した。
「えぇと…小学生の時私が男の子になるって言ってた時期があったでしょう? その時私と花恋ちゃんが出会ったんだけど…男装した私が花恋ちゃんの初恋だったんだって」
それで初恋を引きずっていたけど、蓮司兄ちゃんと出会って新しく恋をしたんだよね。
別に代わりとかじゃないと思うけどなぁ。花恋ちゃんが私にのろけてくる内容は全部蓮司兄ちゃんという人間の話だもの。比較もしていないし、重ねて見ているわけでもないと感じるし。
蓮司兄ちゃんには触りの話しかしなかった。余計なこと言って変な誤解招くと良くないし。過去のことだし、今は別になんともないしさ。
「花恋は初恋の影を追いかけているだけだ。すぐにお前みたいな面白みのない男に飽きるに決まっている! …そのうち花恋をお前から奪ってやるからな!」
間先輩は蓮司兄ちゃんを指差す。そして負け惜しみのような捨て台詞を吐き捨てると私をついでに睨んで逃げていった。
やってることがワンパターンだなあの人。
間先輩が立ち去ったあと、その場に残された蓮司兄ちゃんと私。
「蓮司兄ちゃん、花恋ちゃんとは…」
「…あやめ、なんか食いに行くか。おごってやるよ」
「えっほんと!?」
蓮司兄ちゃんに話しかけようとしたら、食事に誘われた。おごってくれるならラッキーだけど、急にどうしたの?
今の時間は3時すぎ。なので私はおやつでパンケーキをおごってもらった。今日はティラミス風パンケーキにした。ホイップも少し盛ってもらった。
「わーい。パンケーキパンケーキ!」
「女ってこういうの好きだよな」
「全員ってわけじゃないと思うけど、私は好きだね。あ、花恋ちゃんも好きだと思うよ?」
「…ふーん」
なにその素っ気ない反応。花恋ちゃんとのデートの行き先にしたら良いのに。
蓮司兄ちゃんは頬杖をついて、どこか上の空な感じだった。
「…どうしたの。間先輩の言葉に傷ついたの?」
「ばーか。そうじゃねーよ」
「上の空じゃん」
蓮司兄ちゃんはため息を吐くと、椅子の背もたれにより掛かった。
「…おかしいなと思ってたんだよ。あんな可愛い子が俺に好意を抱いてくるのが」
「……」
そうね、何も切っ掛けがなかったらそう感じるよね。
花恋ちゃんははじめこそそうだった。初恋の影を追いかけて蓮司兄ちゃんに恋をしたようだったが、今では蓮司兄ちゃんを一途に想っていると思うよ?
「花恋ちゃんは、ちゃんと蓮司兄ちゃんを見てるよ。はじめは初恋を引きずっていたけど」
「…どうだかな。…あやめの話ばっかりしてるし」
「共通の話題だからじゃないの?」
一体何を話しているのか怖くて聞けないけど、2人の共通点が私だから話題として話してるんじゃないのかな。
蓮司兄ちゃんは斜め下をじっと見て、ぼんやりしていたので、私はホイップを沢山付けたパンケーキを蓮司兄ちゃんの口に押し付けてやった。
こんな時は甘いものを食べるといいよ。
「ぶっ!? …なにすんだよあやめ」
「んー、元気ないから。ていうか蓮司兄ちゃんいつまで花恋ちゃんのこと待たせるの? 早くケジメつけちゃいなよ」
グイグイと押し付けていると蓮司兄ちゃんの口周りがホイップだらけになってしまった。
クリームを口の周りにべっとりつけた蓮司兄ちゃんを撮影して花恋ちゃんに画像を送ってあげた。
花恋ちゃんからはお礼と「いいなぁ私も行きたかった」と返事が来た。今度デートに誘ってみたらいいんじゃないかな? って返すと花恋ちゃんは「じゃあ3人でいこう!」と。
いや、私がいたらデートにならんでしょうが。
あの時の蓮司兄ちゃんは普段よりも元気がなかった。
てっきり私は間先輩とのやり取りに疲れたとか、ディスられたのを気にしているんだと思っていた。
でも蓮司兄ちゃんはそんな事でいつまでも気にしている質でもないので、大丈夫だろうと高をくくっていた。
しかし、私は再び巻き込まれることになる。花恋ちゃんに連絡先を教えてくれと言われたその時から嫌な予感はしていたけど、本当に巻き込まれるだなんて…ねぇ?
☆★☆
「で、こないだミカ先輩たちと新しく出来たイタリアンレストランのランチに行ったら、おじさんと一緒にいる光安さんとばったり遭遇したんですよ。あの人パパ活してるんですね。道理で持ち物が高価なものばかりなんだ」
「大学では有名だぞ。知らなかったのか?」
「そうだったんですか?」
とある日、大学の講義が終わった後に先輩と合流した。その日は亮介先輩のお家で一緒に夕飯を食べようということになったので、スーパーに寄って帰ることになっていたのだ。
先輩にこの間のサークル活動であった出来事を話していたのだが、サークル荒らしの女王・光安嬢がパパ活していることを先輩は知っていたらしい。ていうか光安嬢とその友人達はこの界隈で有名な青田買い集団らしい。
…光安嬢は男を食い潰しているように見えるんだけどね。
「光安さんって3年ですよね。将来どうするんでしょう」
「さぁ…健一郎も声を掛けられたことあると言っていたし…就職しないで、そのまま結婚するのが目的なんじゃないか?」
大久保先輩も粉掛けられたことあるんかい。あの人本当見境ないな。間先輩にもすり寄っていたし。
果たして光安嬢は勉強しているのかな。勉強している風には見えないけど、実は頭が良いのだろうか。
スーパーに到着して、買い物をしていた私達。今日は豚ならぬ鶏の生姜焼きにしようと思う。てなわけで精肉コーナーにてお肉のパックを手に取ろうとしたら、私の鞄の中から着信音が鳴った。スマホを取り出して液晶を確認すると花恋ちゃんから電話がかかってきていた。
先輩に買い物を託すと、私は電話に出る。花恋ちゃんが電話するの珍しいな。いつもアプリでメッセージやり取りしてるから。
「もしもし?」
『…あ、あやめちゃん…?』
電話口で聞こえたのは花恋ちゃんの泣き声。ぐす、と鼻をすする音が聞こえた。
「…どうしたの花恋ちゃん」
「…っく、蓮司さんが…あやめちゃんの代わりに見てるって…私そんなつもり無いのに……好きだって言っても信じてくれないの……どうしたら分かってもらえるのかな…?」
「…え?」
どういう事? 代わりに見てる……?
……まさか、あの間先輩の言ったことを真に受けているのか蓮司兄ちゃんは!
蓮司兄ちゃんも満更じゃないと思っていた。花恋ちゃんを好ましく想っていると思っていた。
……好きと言わせておいて突き放したってことか。花恋ちゃんの話を聞かずに、間先輩の話を信じて。
……おいおい、そりゃないぜ従兄よ。
「花恋ちゃん、今どこにいるの?」
『…家の最寄りの駅…』
「わかった。すぐにいく」
私は電話を切ると、買い物中の先輩に声をかけた。
「先輩すいません。花恋ちゃんがうちの従兄のせいで泣いてるので、私そっちに行きます。夕御飯は一人で食べてください」
「…は?」
「それじゃ!」
ポカーンとする先輩をその場に残して私はスーパーを飛び出した。
ーーーーーーーーーー
「「あ」」
大学生は夏休みの始まりが遅いため終わりも遅い。まだまだ夏休み期間中である9月のとある休日。ファーストフード店でのバイト帰りの私は夕方の駅前をのんびりウィンドウショッピングしていた。
思えばその日はちょっとツイていなかった。クレーマー気質の客とバッティングしたり、それを引きずって、次に来たお客さんに提供するものをうっかり間違えたりと失敗してしまい私は凹んでいた。バイト終わりに彼氏に弱音を吐こうとすれば、彼氏は忙しそうで電話に出ない。
…たまたま運が悪かったんだと思っていたが、やっぱり今日一日ツイていないんだな。
「…お前…」
「…お久しぶりです」
普通にしていれば際立ったイケメンなのに、私を見つけると喧嘩を売ってくる間先輩と遭遇したのだ。
私はうんざりする顔を隠せなかった。だってこうも敵対視されると…ねぇ?
いつも睨んでくるけど、今日はいつもにも増して親の仇のような目で睨んでくる。しばらく会っていなかったというのに何なのよ。
「…お前、とことん俺の邪魔をする気だな…?」
「……邪魔?」
何のことだよ。何の話なのよ。
間先輩の言っている事がわからなくて私は訝しんだ。するとその態度が気に入らなかったのか、相手は舌打ちをしていた。
この人お坊ちゃんのくせに行動が雑なんだよなぁ。何でこんなに荒々しいんだろうか。同じお坊ちゃんの伊達先輩の行動は落ち着いていたのに。性格は置いておいて。
私はここから立ち去ってしまいたいなと考えていた。ただでさえバイトですごい凹んでいる所にこの人の八つ当たりなんて構ってる余裕はないのだ。
「しらばっくれんじゃねぇよ…お前が…従兄なんて出すから花恋が……あの男のどこがいいんだよ…!」
「……あぁ、蓮司兄ちゃんのことですね、なるほど」
そう言えばそんな事あったね。たまに花恋ちゃんが蓮司兄ちゃんとの進展具合を報告してくるが、まだまだお友達の域を抜けないらしい。
「…いやー…私も一度は止めたんですけどね…でも同じ大学だから私が紹介せずとも出会ってたと思いますよ?」
「顔が似ているだけじゃねーか! あんな平凡男のどこがいいんだよ!」
うるさいな。平凡で悪かったな。
「平凡で悪かったな」
私の心の声が漏れていたのかと思ったけど、私こんなに声低くないな。…誰だ?
「俺の従妹をいじめないでくれない?」
「あ、蓮司兄ちゃん」
「出たな田端蓮司…!」
噂をすれば影。私の父方の従兄の田端蓮司が登場した。すごい偶然。
間先輩は更に険しい表情になった。
それを蓮司兄ちゃんは呆れたような顔をして間先輩を見ている。この様子だと大学でもしつこく絡まれているのだろうか? …一応蓮司兄ちゃんの方が年上だし、その態度はまずくないか間先輩…
「文句があるなら、あやめじゃなくて俺に言えばいいだろ」
「俺はこの女にも今まで散々煮え湯を飲まされてきたんだよ。口出しすんな」
人聞きの悪い。間先輩の言葉を受け、蓮司兄ちゃんが私を見下ろしてきた。
「…お前何したの?」
「…花恋ちゃんに振られた後にバッティングしたり?」
後夜祭で壁ドンされてキスしてたの邪魔した事は言わないほうがいいな。花恋ちゃんもそんな事を好きな人に知られたくはないだろうから。
「それだけじゃねーだろ! 行き着く先で出没して!お前はどれだけ邪魔すれば気が済むんだよ!」
「邪魔っていうかタイミングが…ねぇ?」
「初恋の相手だかなんだか知らねーけど、お前なんかこいつの代わりにされてるだけだからな!?」
「初恋? …どういう事?」
間先輩が再び蓮司兄ちゃんに噛み付いてきたのだが、言われた言葉に蓮司兄ちゃんがきょとんとしていた。そして私を見下ろしてどういうことかを尋ねてきたので私は簡単に説明した。
「えぇと…小学生の時私が男の子になるって言ってた時期があったでしょう? その時私と花恋ちゃんが出会ったんだけど…男装した私が花恋ちゃんの初恋だったんだって」
それで初恋を引きずっていたけど、蓮司兄ちゃんと出会って新しく恋をしたんだよね。
別に代わりとかじゃないと思うけどなぁ。花恋ちゃんが私にのろけてくる内容は全部蓮司兄ちゃんという人間の話だもの。比較もしていないし、重ねて見ているわけでもないと感じるし。
蓮司兄ちゃんには触りの話しかしなかった。余計なこと言って変な誤解招くと良くないし。過去のことだし、今は別になんともないしさ。
「花恋は初恋の影を追いかけているだけだ。すぐにお前みたいな面白みのない男に飽きるに決まっている! …そのうち花恋をお前から奪ってやるからな!」
間先輩は蓮司兄ちゃんを指差す。そして負け惜しみのような捨て台詞を吐き捨てると私をついでに睨んで逃げていった。
やってることがワンパターンだなあの人。
間先輩が立ち去ったあと、その場に残された蓮司兄ちゃんと私。
「蓮司兄ちゃん、花恋ちゃんとは…」
「…あやめ、なんか食いに行くか。おごってやるよ」
「えっほんと!?」
蓮司兄ちゃんに話しかけようとしたら、食事に誘われた。おごってくれるならラッキーだけど、急にどうしたの?
今の時間は3時すぎ。なので私はおやつでパンケーキをおごってもらった。今日はティラミス風パンケーキにした。ホイップも少し盛ってもらった。
「わーい。パンケーキパンケーキ!」
「女ってこういうの好きだよな」
「全員ってわけじゃないと思うけど、私は好きだね。あ、花恋ちゃんも好きだと思うよ?」
「…ふーん」
なにその素っ気ない反応。花恋ちゃんとのデートの行き先にしたら良いのに。
蓮司兄ちゃんは頬杖をついて、どこか上の空な感じだった。
「…どうしたの。間先輩の言葉に傷ついたの?」
「ばーか。そうじゃねーよ」
「上の空じゃん」
蓮司兄ちゃんはため息を吐くと、椅子の背もたれにより掛かった。
「…おかしいなと思ってたんだよ。あんな可愛い子が俺に好意を抱いてくるのが」
「……」
そうね、何も切っ掛けがなかったらそう感じるよね。
花恋ちゃんははじめこそそうだった。初恋の影を追いかけて蓮司兄ちゃんに恋をしたようだったが、今では蓮司兄ちゃんを一途に想っていると思うよ?
「花恋ちゃんは、ちゃんと蓮司兄ちゃんを見てるよ。はじめは初恋を引きずっていたけど」
「…どうだかな。…あやめの話ばっかりしてるし」
「共通の話題だからじゃないの?」
一体何を話しているのか怖くて聞けないけど、2人の共通点が私だから話題として話してるんじゃないのかな。
蓮司兄ちゃんは斜め下をじっと見て、ぼんやりしていたので、私はホイップを沢山付けたパンケーキを蓮司兄ちゃんの口に押し付けてやった。
こんな時は甘いものを食べるといいよ。
「ぶっ!? …なにすんだよあやめ」
「んー、元気ないから。ていうか蓮司兄ちゃんいつまで花恋ちゃんのこと待たせるの? 早くケジメつけちゃいなよ」
グイグイと押し付けていると蓮司兄ちゃんの口周りがホイップだらけになってしまった。
クリームを口の周りにべっとりつけた蓮司兄ちゃんを撮影して花恋ちゃんに画像を送ってあげた。
花恋ちゃんからはお礼と「いいなぁ私も行きたかった」と返事が来た。今度デートに誘ってみたらいいんじゃないかな? って返すと花恋ちゃんは「じゃあ3人でいこう!」と。
いや、私がいたらデートにならんでしょうが。
あの時の蓮司兄ちゃんは普段よりも元気がなかった。
てっきり私は間先輩とのやり取りに疲れたとか、ディスられたのを気にしているんだと思っていた。
でも蓮司兄ちゃんはそんな事でいつまでも気にしている質でもないので、大丈夫だろうと高をくくっていた。
しかし、私は再び巻き込まれることになる。花恋ちゃんに連絡先を教えてくれと言われたその時から嫌な予感はしていたけど、本当に巻き込まれるだなんて…ねぇ?
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「で、こないだミカ先輩たちと新しく出来たイタリアンレストランのランチに行ったら、おじさんと一緒にいる光安さんとばったり遭遇したんですよ。あの人パパ活してるんですね。道理で持ち物が高価なものばかりなんだ」
「大学では有名だぞ。知らなかったのか?」
「そうだったんですか?」
とある日、大学の講義が終わった後に先輩と合流した。その日は亮介先輩のお家で一緒に夕飯を食べようということになったので、スーパーに寄って帰ることになっていたのだ。
先輩にこの間のサークル活動であった出来事を話していたのだが、サークル荒らしの女王・光安嬢がパパ活していることを先輩は知っていたらしい。ていうか光安嬢とその友人達はこの界隈で有名な青田買い集団らしい。
…光安嬢は男を食い潰しているように見えるんだけどね。
「光安さんって3年ですよね。将来どうするんでしょう」
「さぁ…健一郎も声を掛けられたことあると言っていたし…就職しないで、そのまま結婚するのが目的なんじゃないか?」
大久保先輩も粉掛けられたことあるんかい。あの人本当見境ないな。間先輩にもすり寄っていたし。
果たして光安嬢は勉強しているのかな。勉強している風には見えないけど、実は頭が良いのだろうか。
スーパーに到着して、買い物をしていた私達。今日は豚ならぬ鶏の生姜焼きにしようと思う。てなわけで精肉コーナーにてお肉のパックを手に取ろうとしたら、私の鞄の中から着信音が鳴った。スマホを取り出して液晶を確認すると花恋ちゃんから電話がかかってきていた。
先輩に買い物を託すと、私は電話に出る。花恋ちゃんが電話するの珍しいな。いつもアプリでメッセージやり取りしてるから。
「もしもし?」
『…あ、あやめちゃん…?』
電話口で聞こえたのは花恋ちゃんの泣き声。ぐす、と鼻をすする音が聞こえた。
「…どうしたの花恋ちゃん」
「…っく、蓮司さんが…あやめちゃんの代わりに見てるって…私そんなつもり無いのに……好きだって言っても信じてくれないの……どうしたら分かってもらえるのかな…?」
「…え?」
どういう事? 代わりに見てる……?
……まさか、あの間先輩の言ったことを真に受けているのか蓮司兄ちゃんは!
蓮司兄ちゃんも満更じゃないと思っていた。花恋ちゃんを好ましく想っていると思っていた。
……好きと言わせておいて突き放したってことか。花恋ちゃんの話を聞かずに、間先輩の話を信じて。
……おいおい、そりゃないぜ従兄よ。
「花恋ちゃん、今どこにいるの?」
『…家の最寄りの駅…』
「わかった。すぐにいく」
私は電話を切ると、買い物中の先輩に声をかけた。
「先輩すいません。花恋ちゃんがうちの従兄のせいで泣いてるので、私そっちに行きます。夕御飯は一人で食べてください」
「…は?」
「それじゃ!」
ポカーンとする先輩をその場に残して私はスーパーを飛び出した。
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