59 / 209
Day‘s Eye 魔術師になったデイジー
谷底の爺孫ドラゴン
しおりを挟む
ロバに乗って、大きな裂け目の谷底を進む。私の進む道はどんどん険しくなっていった。
谷に入ると魔獣や野生動物の数が更に増える。図鑑では見たことのない形をした生物がたくさんいた。彼らの生活を脅かさないように速やかに通り過ぎていたので、じっくり観察はできなかったが、十分私の目を楽しませてくれた。
空を見上げれば、崖のところに巣穴が空いている。ここには何の生物が住んでいるのだろう。
「ピィーッ…!」
「ん? 何、また魔獣でもいた?」
草食動物であるロバはどうしても肉食獣の気配に敏感でここまで来るのに何度も怯えた声を漏らしていた。最初は私も一緒になって警戒していたが、何度も繰り返すと慣れもあって私の反応も軽くなる。
しかし、今度ばかりはロバの様子がおかしかった。尋常じゃなくブルブル震えているのだ。
「どうしたの…?」
私はロバから降りて近くの木に繋げると、ひとりで辺りを散策しに行くことにした。後ろで怯えたように甲高い鳴き声を漏らすロバ。一体何に怯えているのか……
半信半疑で探りに行った私だが、すぐにその原因を見つけた。ロバをつなげた場所からそう遠くない、谷底の湖近くにそれはいた。
年季を感じさせる巨体には矢や剣、そして魔法痕が残っており、地面には血溜まり。どうみても重症なのが見て取れた。シワシワのまぶたは閉じられているが、かすかに呼吸をしているようだ。
大きな大きなドラゴンだ。
本物をはじめて目にしたが、おそらく大分年かさのドラゴンなのだろう。鱗が枯れ木のような色をしている。……あちこち血が飛び散って、鉄サビの匂いが辺りに広がっていた。
…大変だ。密猟者に見つかって害されたのだろう。
はるか昔にはその身体から取れる素材や妙薬のもととなる肉を手にするために乱獲されていた存在。最も今では絶滅危惧種として保護対象となっているはずだが……。
倒れたドラゴンに近づこうと、そぉっと足を踏み出す。一歩踏み出した私は何かを踏んでいると気がついた。硬い石ころだろうかと足を持ち上げる。
「……これは、」
落ちていたのはペンダント。
魔術師の証明になるペンダントだ。……瑪瑙石のはめられた、ハルベリオンの魔術師の……
つまり、このドラゴンを屠ろうとしたのはハルベリオンの人間…ハルベリオン国境から大分離れたこの還らずの森にやってきた…ドラゴンを捕まえようとして……。
「グルルル…」
低い地鳴りのような鳴き声に私はハッとして顔を上げると、先程まで閉ざされていたまぶたが開き、縦に裂けた瞳孔とぱっちり目が合った。
「い、今すぐに治癒魔法を…」
保護対象の生物を救うのも魔術師としての使命だ。私は倒れているドラゴンのもとに駆け寄り、呪文を唱えようと口を開いた。
「我に従う光の元素たちよ、このドラゴンを」
『やめよ』
脳に響くようなその声に私はビクリと肩を揺らす。その声は目の前の老ドラゴンから聞こえてきた。
『私はもう老い先長くない。憐れみなら不要だ。そこの娘、魔力を無駄にするんじゃない』
通心術を使ったわけでもないのにドラゴンと意思疎通が出来る…。ドラゴンが私に向けてなにか魔法でも使ったのだろうか…?
私が驚きでぴしりと固まっていると、老ドラゴンは怠そうに目を細めた。
『私も年をとった。平和ボケして密猟者に背後を奪われてしまった』
「……魔術師に襲われたの?」
私が静かに問いかけると、老ドラゴンは顔を持ち上げて何かを示した。
……気づかなかった。ドラゴンの巨体で隠れていたが、彼の後ろには死屍累々と人間の死体が転がり落ちていた。それを直視してしまった私はサッと目をそらす。まるで人形みたいに転がっているが、数時間前までは生きていた生身の人間。腕がちぎれていたり、頭がない遺体もあった。
たとえそれが犯罪者だとしても平然と直視できるものではなかった。
『突然そやつらがやってきてな。若い頃のように軽く遊んでやろうと相手してやったら…このザマだ。なにやら怪しげな呪術を使って私の足を引っ張りおって……腹が立ったので頭をもぎ取ってくれたわ』
やられた分は倍返ししてやったと鼻を鳴らす老ドラゴン。このドラゴンはドラゴン狩りが合法だった時代から生きていたのだろう。だから情け容赦なく殲滅できたのかな…。
人間側が加害者で犯罪を犯しているので同情はしないけどさ。むしろ人間がごめんねと謝りたい気分である。
『私の肉が必要だと言っていた。我らドラゴンの肉は妙薬扱いだからな』
確かにドラゴンの肉は妙薬であるが……今は寿命で死んだドラゴンからでないと採取出来ない代物で大変高価な品だ。…金儲け目当てだろうか。
……これはここだけの話にするわけには行かないな。…国に、王太子殿下に伝書鳩を送ろう。それと証拠の品を持っていって……あと投影術で現場の映像も……
私が次にすることを頭の中で順序立てていると、老ドラゴンが身体を動かした。
『魔術師の娘よ、私の頼みを聞いてくれるか』
「…頼み? ……あ」
老ドラゴンの身体の下には子ドラゴンが気を失って倒れていた。この子を守って戦っていたのかもしれない。
『この子はまだ100年と少ししか生きていない、まだまだ幼い子どもなんだ』
それ16年程度しか生きていない私に言っちゃいますか。いや、ドラゴンの寿命はすごく長いので100年だったら人間で言う10歳児感覚でしょうけどね。
『この子をどうか頼めないだろうか』
せめて独り立ちするまで気にかけてあげて欲しい。
その言葉からは孫を守りたいけど、それが無理だと理解している祖父の無念が伝わってきた。
気持ちはなんとなく伝わってくるけど、私は魔術師駆け出しで、ドラゴンの生育法とか詳しく知らないよ…
「ぐるる…」
意識が戻ったのか喉を鳴らす子ドラゴン。パチリと開けたその瞳は美しい金色だった。まだ柔らかそうな鱗を持ったその身体をのっそり起こし、傍らに倒れ込んだ老ドラゴンを見た子ドラゴンは悲痛な鳴き声を上げていた。
老ドラゴンと違って何を言っているかはわからないが、自分を庇って瀕死の重体になった祖父を心配し、嘆き悲しんでいるというのは見て解った。
金色の瞳からボロボロと涙がこぼれ落ちる。…ドラゴンも泣くのかと不謹慎にも感心していると、子ドラゴンは私の存在に気がついたようでこちらを見てきた。
目が合って数秒、その数秒で私は子ドラゴンから敵認定されたらしい。羽を広げた子ドラゴンは私に襲いかかってきたのだ。
「!? 元素よ、転送させよっ」
慌てていつもよりも端折った呪文を唱えると、元素たちはその声に素直に応じてくれた。私は転送術で素早く遠ざかると、崖にぽっかり空いた巣穴らしき場所へ降り立つ。
「ぐぎゃああああ!!」
怒りの咆哮を上げ、私に向かって負の感情を向けてくる子ドラゴンはこちらへ向かって飛んできた。
絶滅危惧種だ。怪我はさせたくない。しかしこっちに攻撃を仕掛けてくる。気絶させるか…
「我に従う闇の元素たちよ!」
『やめよ、その娘は私を治そうとしたんだ。お前を襲ってきた人間どもはすべて私が屠った』
私が呪文を唱えようとすると、それを遮るように老ドラゴンが制止してきた。その言葉にピタリと動きを止める子ドラゴン。攻撃をやめると、すぐに老ドラゴンの元へ飛んでいった。
『私は元々長く生き過ぎた。…生き物には寿命がある。いつか別れが来るものだ。それは解っているな?』
「キュルルル…」
老ドラゴンの別れの言葉に悲しそうに鳴く子ドラゴン。わかっていてもあっさりと別れを受け入れられないのであろう。
『…魔術師の娘よ、人間はドラゴンを薬にするのだろう? …年老いた身体でいいなら使うが良い。…その代わり、この子を頼む』
死にかけの中での遺言である。この流れじゃ断りにくいな。…知らないよ。私が世話したせいでドラゴンらしくないドラゴンに育っても。
私は重々しく頷いた。仕方ない、関わってしまったのが最後だ。私に出来ることをしてあげよう。
老ドラゴンは安心したようにため息を吐き出すと、側で泣いている子ドラゴンに静かに言葉を遺す。
『…お前と出会えて私は幸せだった。伴侶も子もいない、同胞を見送るだけの寂しい人生だったが、ここまで長生きしたのはお前と出会うためだったのだろう…長生きしてよかった』
老ドラゴンの顔に子ドラゴンの涙がポタポタと降り落ちる。
『幸せにおなり』
そう最後に言い残し、老ドラゴンは息を引き取った。その瞳は開けたまま、もう何も映していないがきっと彼は最期の瞬間まで孫と慈しんだ子ドラゴンの姿を見守っていたかったのだろう。
永遠の眠りについた老ドラゴンの体をゆすり「起きて」と促す子ドラゴン。その動作を繰り返しても彼はもう声を出さない。心臓は止まり呼吸もしていない。そこにいるのは永き時を生き延びて自然に還ろうとしている亡骸だけである。
「ギャオオオオオン!!!」
大粒の涙を流し、空へと叫ぶ子ドラゴンの鳴き声が谷底に反響した。その咆哮は先ほど私に向けて吐き捨てた怒りとは違う、嘆きの咆哮だ。
この地にひとり取り残された悲しみが私にまで伝わってきて、私はその子ドラゴンに憐れみの感情を抱いてしまったのであった。
谷に入ると魔獣や野生動物の数が更に増える。図鑑では見たことのない形をした生物がたくさんいた。彼らの生活を脅かさないように速やかに通り過ぎていたので、じっくり観察はできなかったが、十分私の目を楽しませてくれた。
空を見上げれば、崖のところに巣穴が空いている。ここには何の生物が住んでいるのだろう。
「ピィーッ…!」
「ん? 何、また魔獣でもいた?」
草食動物であるロバはどうしても肉食獣の気配に敏感でここまで来るのに何度も怯えた声を漏らしていた。最初は私も一緒になって警戒していたが、何度も繰り返すと慣れもあって私の反応も軽くなる。
しかし、今度ばかりはロバの様子がおかしかった。尋常じゃなくブルブル震えているのだ。
「どうしたの…?」
私はロバから降りて近くの木に繋げると、ひとりで辺りを散策しに行くことにした。後ろで怯えたように甲高い鳴き声を漏らすロバ。一体何に怯えているのか……
半信半疑で探りに行った私だが、すぐにその原因を見つけた。ロバをつなげた場所からそう遠くない、谷底の湖近くにそれはいた。
年季を感じさせる巨体には矢や剣、そして魔法痕が残っており、地面には血溜まり。どうみても重症なのが見て取れた。シワシワのまぶたは閉じられているが、かすかに呼吸をしているようだ。
大きな大きなドラゴンだ。
本物をはじめて目にしたが、おそらく大分年かさのドラゴンなのだろう。鱗が枯れ木のような色をしている。……あちこち血が飛び散って、鉄サビの匂いが辺りに広がっていた。
…大変だ。密猟者に見つかって害されたのだろう。
はるか昔にはその身体から取れる素材や妙薬のもととなる肉を手にするために乱獲されていた存在。最も今では絶滅危惧種として保護対象となっているはずだが……。
倒れたドラゴンに近づこうと、そぉっと足を踏み出す。一歩踏み出した私は何かを踏んでいると気がついた。硬い石ころだろうかと足を持ち上げる。
「……これは、」
落ちていたのはペンダント。
魔術師の証明になるペンダントだ。……瑪瑙石のはめられた、ハルベリオンの魔術師の……
つまり、このドラゴンを屠ろうとしたのはハルベリオンの人間…ハルベリオン国境から大分離れたこの還らずの森にやってきた…ドラゴンを捕まえようとして……。
「グルルル…」
低い地鳴りのような鳴き声に私はハッとして顔を上げると、先程まで閉ざされていたまぶたが開き、縦に裂けた瞳孔とぱっちり目が合った。
「い、今すぐに治癒魔法を…」
保護対象の生物を救うのも魔術師としての使命だ。私は倒れているドラゴンのもとに駆け寄り、呪文を唱えようと口を開いた。
「我に従う光の元素たちよ、このドラゴンを」
『やめよ』
脳に響くようなその声に私はビクリと肩を揺らす。その声は目の前の老ドラゴンから聞こえてきた。
『私はもう老い先長くない。憐れみなら不要だ。そこの娘、魔力を無駄にするんじゃない』
通心術を使ったわけでもないのにドラゴンと意思疎通が出来る…。ドラゴンが私に向けてなにか魔法でも使ったのだろうか…?
私が驚きでぴしりと固まっていると、老ドラゴンは怠そうに目を細めた。
『私も年をとった。平和ボケして密猟者に背後を奪われてしまった』
「……魔術師に襲われたの?」
私が静かに問いかけると、老ドラゴンは顔を持ち上げて何かを示した。
……気づかなかった。ドラゴンの巨体で隠れていたが、彼の後ろには死屍累々と人間の死体が転がり落ちていた。それを直視してしまった私はサッと目をそらす。まるで人形みたいに転がっているが、数時間前までは生きていた生身の人間。腕がちぎれていたり、頭がない遺体もあった。
たとえそれが犯罪者だとしても平然と直視できるものではなかった。
『突然そやつらがやってきてな。若い頃のように軽く遊んでやろうと相手してやったら…このザマだ。なにやら怪しげな呪術を使って私の足を引っ張りおって……腹が立ったので頭をもぎ取ってくれたわ』
やられた分は倍返ししてやったと鼻を鳴らす老ドラゴン。このドラゴンはドラゴン狩りが合法だった時代から生きていたのだろう。だから情け容赦なく殲滅できたのかな…。
人間側が加害者で犯罪を犯しているので同情はしないけどさ。むしろ人間がごめんねと謝りたい気分である。
『私の肉が必要だと言っていた。我らドラゴンの肉は妙薬扱いだからな』
確かにドラゴンの肉は妙薬であるが……今は寿命で死んだドラゴンからでないと採取出来ない代物で大変高価な品だ。…金儲け目当てだろうか。
……これはここだけの話にするわけには行かないな。…国に、王太子殿下に伝書鳩を送ろう。それと証拠の品を持っていって……あと投影術で現場の映像も……
私が次にすることを頭の中で順序立てていると、老ドラゴンが身体を動かした。
『魔術師の娘よ、私の頼みを聞いてくれるか』
「…頼み? ……あ」
老ドラゴンの身体の下には子ドラゴンが気を失って倒れていた。この子を守って戦っていたのかもしれない。
『この子はまだ100年と少ししか生きていない、まだまだ幼い子どもなんだ』
それ16年程度しか生きていない私に言っちゃいますか。いや、ドラゴンの寿命はすごく長いので100年だったら人間で言う10歳児感覚でしょうけどね。
『この子をどうか頼めないだろうか』
せめて独り立ちするまで気にかけてあげて欲しい。
その言葉からは孫を守りたいけど、それが無理だと理解している祖父の無念が伝わってきた。
気持ちはなんとなく伝わってくるけど、私は魔術師駆け出しで、ドラゴンの生育法とか詳しく知らないよ…
「ぐるる…」
意識が戻ったのか喉を鳴らす子ドラゴン。パチリと開けたその瞳は美しい金色だった。まだ柔らかそうな鱗を持ったその身体をのっそり起こし、傍らに倒れ込んだ老ドラゴンを見た子ドラゴンは悲痛な鳴き声を上げていた。
老ドラゴンと違って何を言っているかはわからないが、自分を庇って瀕死の重体になった祖父を心配し、嘆き悲しんでいるというのは見て解った。
金色の瞳からボロボロと涙がこぼれ落ちる。…ドラゴンも泣くのかと不謹慎にも感心していると、子ドラゴンは私の存在に気がついたようでこちらを見てきた。
目が合って数秒、その数秒で私は子ドラゴンから敵認定されたらしい。羽を広げた子ドラゴンは私に襲いかかってきたのだ。
「!? 元素よ、転送させよっ」
慌てていつもよりも端折った呪文を唱えると、元素たちはその声に素直に応じてくれた。私は転送術で素早く遠ざかると、崖にぽっかり空いた巣穴らしき場所へ降り立つ。
「ぐぎゃああああ!!」
怒りの咆哮を上げ、私に向かって負の感情を向けてくる子ドラゴンはこちらへ向かって飛んできた。
絶滅危惧種だ。怪我はさせたくない。しかしこっちに攻撃を仕掛けてくる。気絶させるか…
「我に従う闇の元素たちよ!」
『やめよ、その娘は私を治そうとしたんだ。お前を襲ってきた人間どもはすべて私が屠った』
私が呪文を唱えようとすると、それを遮るように老ドラゴンが制止してきた。その言葉にピタリと動きを止める子ドラゴン。攻撃をやめると、すぐに老ドラゴンの元へ飛んでいった。
『私は元々長く生き過ぎた。…生き物には寿命がある。いつか別れが来るものだ。それは解っているな?』
「キュルルル…」
老ドラゴンの別れの言葉に悲しそうに鳴く子ドラゴン。わかっていてもあっさりと別れを受け入れられないのであろう。
『…魔術師の娘よ、人間はドラゴンを薬にするのだろう? …年老いた身体でいいなら使うが良い。…その代わり、この子を頼む』
死にかけの中での遺言である。この流れじゃ断りにくいな。…知らないよ。私が世話したせいでドラゴンらしくないドラゴンに育っても。
私は重々しく頷いた。仕方ない、関わってしまったのが最後だ。私に出来ることをしてあげよう。
老ドラゴンは安心したようにため息を吐き出すと、側で泣いている子ドラゴンに静かに言葉を遺す。
『…お前と出会えて私は幸せだった。伴侶も子もいない、同胞を見送るだけの寂しい人生だったが、ここまで長生きしたのはお前と出会うためだったのだろう…長生きしてよかった』
老ドラゴンの顔に子ドラゴンの涙がポタポタと降り落ちる。
『幸せにおなり』
そう最後に言い残し、老ドラゴンは息を引き取った。その瞳は開けたまま、もう何も映していないがきっと彼は最期の瞬間まで孫と慈しんだ子ドラゴンの姿を見守っていたかったのだろう。
永遠の眠りについた老ドラゴンの体をゆすり「起きて」と促す子ドラゴン。その動作を繰り返しても彼はもう声を出さない。心臓は止まり呼吸もしていない。そこにいるのは永き時を生き延びて自然に還ろうとしている亡骸だけである。
「ギャオオオオオン!!!」
大粒の涙を流し、空へと叫ぶ子ドラゴンの鳴き声が谷底に反響した。その咆哮は先ほど私に向けて吐き捨てた怒りとは違う、嘆きの咆哮だ。
この地にひとり取り残された悲しみが私にまで伝わってきて、私はその子ドラゴンに憐れみの感情を抱いてしまったのであった。
30
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
やけに居心地がいいと思ったら、私のための愛の巣でした。~いつの間にか約束された精霊婚~
小桜
恋愛
ルディエル・アレンフォードは森に住む麗しの精霊守。
そんな彼が、いよいよ伴侶を迎えようと準備を始めているらしい。
幼馴染という関係に甘んじていたネネリア・ソルシェは、密かにショックを受けていた。
そろそろ彼との関係も終わらせなければならないけれど、ルディエルも精霊達もネネリアだけに優しくて――?
「大丈夫。ずっと居たいと思えるような場所にしてみせるから」
鈍感なネネリアと、一途で奥手なルディエル。
精霊に導かれた恋は、本人だけが気づかない。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!
エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」
華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。
縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。
そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。
よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!!
「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。
ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、
「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」
と何やら焦っていて。
……まあ細かいことはいいでしょう。
なにせ、その腕、その太もも、その背中。
最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!!
女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。
誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート!
※他サイトに投稿したものを、改稿しています。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
酒飲み聖女は気だるげな騎士団長に秘密を握られています〜完璧じゃなくても愛してるって正気ですか!?〜
鳥花風星
恋愛
太陽の光に当たって透けるような銀髪、紫水晶のような美しい瞳、均整の取れた体つき、女性なら誰もが羨むような見た目でうっとりするほどの完璧な聖女。この国の聖女は、清楚で見た目も中身も美しく、誰もが羨む存在でなければいけない。聖女リリアは、ずっとみんなの理想の「聖女様」でいることに専念してきた。
そんな完璧な聖女であるリリアには誰にも知られてはいけない秘密があった。その秘密は完璧に隠し通され、絶対に誰にも知られないはずだった。だが、そんなある日、騎士団長のセルにその秘密を知られてしまう。
秘密がばれてしまったら、完璧な聖女としての立場が危うく、国民もがっかりさせてしまう。秘密をばらさないようにとセルに懇願するリリアだが、セルは秘密をばらされたくなければ婚約してほしいと言ってきた。
一途な騎士団長といつの間にか逃げられなくなっていた聖女のラブストーリー。
◇氷雨そら様主催「愛が重いヒーロー企画」参加作品です。
【完結】成りすましの花嫁に、祝福の鐘は鳴る?
白雨 音
恋愛
代々、神に仕える一族、モード家の直系の娘は、《聖女の光》を持って
生まれると言われているが、三姉妹の真中、クレアは違った。
《聖女の光》を持たずに生まれたクレアは、不遇の少女時代を送り、
二十歳を迎える頃には、すっかり気弱でお人好しの娘に育っていた。
一方、聖女として頭角を現し始めた妹のロザリーンは、隣国の王から妃にと望まれる。
クレアは妹付きの侍女として、一緒に隣国に行く事になるが、途中、一行は賊に襲われてしまう。
だが、それは王との結婚を望まぬロザリーンの策謀だった___
ロザリーンと間違われ、王宮で手厚く保護されたクレアだったが、
聖女の力が使えないと分かるや否や、王は激怒する。
王を執り成し、クレアの窮地を救ってくれたのは、騎士団長のオーウェン。
だが、その為に、彼は行き場の無い花嫁(クレア)との結婚を命じられてしまう___
異世界恋愛:短めの長編
※18禁にしていますが、ささやかなものです。《完結しました》
お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる