番って10年目

アキアカネ

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 結局映画にも全然集中できなかった。

 そのあとも普通にご飯食べて、お風呂入って、ふたりでベッドに。
 同じベッドに寝たところでなにも起きなかったけど。
 しかもダブルベッドだからくっつかなくても寝れてしまう。俺はくっついて寝たいんだけどね!

「ヒデくん」

 小さな声で隣のヒデを呼んでみる。
 ヒデからは返事はなく、すぴすぴと穏やかな寝息が聞こえている。

「寝るの早すぎ……こっちの気も知らないで」

 ヒデの寝顔を見つめながら思う。
 このままじゃダメだよな。

 この辺りでちゃんとしないと、番の関係は一生モノなんだから。

「おやすみ」

 俺がそういうとヒデも笑ったような気がした。
 それにしてもヒデの寝顔はいつみても可愛いな。

 あれから俺もすぐに寝てしまった。
 次に気がつくと朝になっていて、隣にいるはずのヒデはもうベッドから姿を消していた。
 とりあえず顔を洗おうとベッドを出ると、ソファでスマホをいじるヒデがいた。

「あっ起きた? おはよう」

「おはよ」

「ナギもコーヒー飲む?」

「飲む~! 俺、顔洗ってくるね」

「わかった!」

 俺の返事を聞いてニコニコとキッチンに向かっていくヒデ。最近コーヒーにハマっているヒデはまるで子どものようにウキウキしている。いい歳したアラサーだってのに、可愛くて仕方ない。
 どこかのなにかで読んだことがある。
 カッコいいはまだ引き返せるけど可愛いの領域にいってしまったら戻れないらしい。

 俺もうダメじゃん。

「お待たせ」

 身なりを整えて、俺もソファに座った。
 ソファにはコーヒーと一緒に俺を待つヒデがいる。

「ちょうど淹れたてだよ。この前と違うところの豆なんだ」

「楽しみだな。いただきます……おいしい!」

「よかった!」

「本当だよ。毎日飲みたいくらい」

「ナギのためならいつでも淹れるよ」

 はい、今ときめいた。
 
 もうこれプロポーズじゃない?
 毎朝君の味噌汁が飲みたいみたいな。
 まあヒデにそんな気全くないのは返事で分かるから、全然喜べない。

 のんびりとした朝の時間。
 今なら聞けるかもしれない。

「ねえヒデ」

「なに?」

「この前会ったときね、聞いたんだけど、ルイ結婚するんだって」

「そうだったんだ! おめでとう!」

「うん! いいよね、結婚」

 何気なく話しているけど、内心とても緊張している。
 ヒデは結婚のことどう思っているのかな。

「そうだね」

 ヒデの声は変わらず穏やかだった。
 それって結婚願望あるってこと?

 暗に匂わせてうざったいって思われるかも。
 そう思って避けてきた。だけど、もう言っちゃえ!

「ヒデも結婚したい……?」
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