燃える月

諏訪彼方

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プロローグ

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 私たちの住んでいた城が落とされた。私たちの主は炎の中、自害した。私は主の妻となっていた幼馴染と2人、まだ攻められていないという主の領地の端にある支城に向かってひた走っている。当然護衛はいない。

「月、もういい。私たちも潔く諦めましょう?」
 横を走る幼馴染の提案を完全に無視する。
「私はもう、走れないから……」
「今は黙って一緒に来て」

 支城にはまだ数百の兵と筆頭家老殿がいる。けど、数日経てばきっと攻め込まれてしまう。多分また苛烈に。

 私たちが加わって何かが変わるわけじゃない。いや、多少士気は上がるかもしれない。

 幼馴染は絶対死なせない。私が必ず守ってみせる。
まずは城に、あなたを連れ出さないと。
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