この時を待っていた。

諏訪彼方

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あなたの姿を今再び

強い想いを込めて

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「せつ菜っ!目を覚ましてせつ菜!」無駄とわかっていても、どうしても諦めたくなくて必死に呼びかけていた。
すると…
「親友かクラスメイトか従姉妹か妹か知り合いか?」
 いつの間にか背後にイケメンの大学生くらいの男の子がいて声をかけられた。振り返ってみると傘をさしていないのにも関わらずその白いTシャツも、そのかっこいい黒髪もなぜか濡れていない。男の子の美しさと、その奇妙な様につい私は男の子を見つめてしまった。
「答えよ、時野未来みき。その果てた子はあなたにとって何者か」
「義理の…妹です」
「それだけか?」
「えっと…」
「この子はあなたにとって家族でしかないと?」
「それは…」言われて改めて感じる。自身の中にあるせつ菜への思いを。今再び…!


「せつ菜は私にとって大切で!大好きで!ずっと一緒にいたい存在です!」

 それを聞いた男の子は満足げに頷き、せつ菜の前に座り、せつ菜の手を取り、なにやら変なことを言い出した。

私はかけまくしもかしこき生死を司る神を務めるもの。

私の最大の権限である死者蘇生を今!
このよく分からない通り魔に襲われ命を落としたこの時野せつ菜に行使する!

 すると、せつ菜の体にあった刺し傷はなくなり、ブラウスや道路や私についていた血も消え失せ、せつ菜の温もりがが徐々に蘇ってきた。そして、呼吸をしだし、血が再び通い出した。

「うそ…」
「いい忘れていました。私は生死を司る神を務めるもの。ただただ、この子が不憫に思ったからやってきただけですよ。」
「…」
「後数分もすればこの子は目覚めるでしょう。刺されたという事実は変わらないが、死ななかったということになりました。傷が治ったりしたのは、まあおまけでやったことです。」
「ありがとうございます…」
「あ、そうそう、この子に、定期的にキスをしなければ、またこの子は死体に逆戻りします。」
「へ?なっ!?キス!?」
「そうです。まああなたがこの子と恋人になればそんなこと毎日するようになるでしょうから大丈夫でしょう」
「え、ええ!?」
「あなたの想いが成就されることを。では私はこれで。」
そう言うと、男の子の姿をした神様は姿を消してしまった。

「ん…」せつ菜が、せつ菜が目を覚ました!よかった…!ありがとうございます、神様っ!
「…!せつ菜!」
「おねえちゃん…?あれ、私…」
「よかった、よかったっ!」

 その後、せつ菜に事情を話しながら家路を急いだ。キスの件は省いて。最初は驚いていたけど、自身に起きたことを説明できないので、すんなり納得してくれた。
 そして、言わなくてはいけない。覚悟を決めて切り出す。
「ねぇ、せつ菜」
「何?」
「私と、キス、して…」
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