この時を待っていた。

諏訪彼方

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あなたの姿を今再び

夏への扉を開けるとき

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「なんでプール?なんで普段あまり行かないところに?」
「恋人の美しい裸体を見たいな~なんて笑笑」
「水着着てるから裸体じゃないでしょ?って私多分水着、ないよ?」
「ご心配なく、一式ちゃんと用意してきました!あなたに水着を選ぶ権利はなかったですけど」
「用意がいい、ね」
残念だけど、あなたが期待しているような美しい裸体を私は持ち合わせていない。

※  ※  ※
「さ、元気に更衣室行きましょう!」
 せつ菜に腕を引っ張られて、着いて早々更衣室に連行された。

渡された水着(かなり好み)に着替えて、プールに向かう。シャワーを浴びて、プールに入る。

 私は泳ぐのが好きだ。泳ぐ種目は問わない。泳いでいると、自分が魚になれたような気が一瞬する。自分以外の何かになれているという実感がすごくする。だから、好き。私は、せつ菜の存在を忘れて、ひたすら休まず泳ぎ続けた。

 やっと休憩しようかとプールから上がった時、急に見知らぬ男に抱きつかれた。


「君~なかなか胸あるしスタイルいーし可愛いじゃん!俺と遊ぼーぜ~」
 いかにも私には釣り合いそうもなく、一番面倒くさいと思う部類の男が私にに絡んでくる。幸い、この人みたいな変態にいきなり後ろから抱きつかれた時の対処法を知っている。

 後ろから抱きつかれたとき、相手の腕の圧力は体の真ん中にかかっている。大体は胸の下あたりに抱きつくからな~。
 足を踏ん張って力ずくで振りほどこうとしても、男の人の力には勝てない。だから力がかかっている方向さえずらすことができればあとはなんとかなる。

 締め付けられている両腕を前方斜め上に上げ、それと同時に膝を少し曲げて、体の重心を落とす。抱きついてきた相手の力の位置が変わるから、相手の腕が上に外れる。
 さらに、片足を相手の体の後ろに回して踏ん張り、体に近い方の手を相手の顔に近づける。
 手を相手の顔にひっかけたら、ひっかけている手の肘を内旋させて思いっきり相手を投げればいい。

 実際にそれを実行し、素早く離れた。どうやら、この変態は、尻餅をついただけで済んだようだ。

 遠くで見ていたせつ菜が駆け寄ってきた。

「未来、大丈夫?変なことされてない?」
「え、うん。大丈夫。護身術?知ってたから」
「さすが!!」
 そう言うとせつ菜は感嘆の声をあげていた。近くにいたカップルや子供連れにも拍手をされる。

 ん?
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