風の唄 森の声

坂井美月

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絡み合う赤い糸④

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翌日から、恭介は朝食を食べると何処かへ出かけるようになり、美咲もなんだか元気が無いようだった。
ギクシャクしている中、風太は美咲に
「美咲、今日の夕飯は何が食べたい?」
と、声を掛けた。
縁側でぼんやりと考え事をしていた美咲は
「え?夕飯?風太君、さっき朝ごはん食べたのに、もう夕飯の事を考えているの?」
とクスクス笑い出す。
「やっと笑ったな。なんか、今日は美咲も恭介も…空もようすが変だった。何かあったのか?」
純粋な目で見つめられ、美咲は再び笑顔を消してしまう。
昨日の夜、恭介の部屋に行くと恭介の姿が無かった。
あちこち探してやっと見つけると、空とキスをする恭介を見てしまったのだ。
「美咲?」
再び表情を曇らせる美咲を心配そうに見ている風太に
「空さんは…」
そう言いかけて口を噤む。
(空さんは教授の事を前から知っていて、本当は好きなんじゃないのか?)
と、口から出そうになる言葉を飲み込む。
「空?美咲、空と何かあったのか?」
「え?ううん。何も無いよ。そう言えば、空さんって風太君のお母さんなの?」
美咲が何気無く聞くと、今度は風太が寂しそうに笑って
「空は…オイラの母ちゃんじゃないんだ。オイラの母ちゃんは、罪を犯して死んじゃったんだって。父ちゃんは人間らしいけど、良く知らねぇ。父ちゃんと母ちゃんの話を聞くと、空が悲しそうな顔をするんだ」
風太はそう言うと、美咲の隣に座って足をぶらぶらさせる。
「そっか…、寂しいね」
ぽつりつ美咲が呟くと
「オイラ、寂しくなんかねぇぞ!ずっと座敷童子と空が一緒に居てくれたから」
と、笑顔で答えると
「な!座敷童子」
と言って、いつの間にか美咲を挟んで、風太が座る反対側に座敷童子が座って頷いていた。
「座敷童子ちゃん!いつから居たの?」
驚いて声を上げると
「さっきからずっと一緒に居たぞ。オイラと座敷童子は、一心同体だからな」
風太がそう言うと、座敷童子の口がパクパクと動く。
「だよな~!」
風太には座敷童子の声が聞こえるらしく、何やら楽しそうに会話している。
「あの…風太君って、座敷童子ちゃんの声が聞こえるの?」
恐る恐る聞いてみると
「え?美咲には聞こえないのか?」
と驚かれてしまう。
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