風の唄 森の声

坂井美月

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交差する想い①

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その日、風太が話した通り、茶碗蒸しと竹の子ご飯が出された。
「肉!久し振りの肉!」
大騒ぎする修治に、美咲が頭を叩き
「うるさい!風太君や座敷童子ちゃんを見てごらんなさい!大人しく待ってるじゃ無い!」
そう叫ぶ。
「そんなに肉が食いたいなら、俺の分を上げようか?」
竹の子ご飯を差し出す恭介に、修治が手を伸ばそうとすると、今度は風太がその手を叩く。
「修治!ダメだぞ!オイラ、恭介に食べさせる為に大龍神様の神殿まで行ってきたんだ!お前は自分の分を食べろ!」
そう言って怒っている。
「恭介も恭介だぞ!オイラはお前の為にもらってきたんだ。ちゃんと食べなくちゃダメだぞ!」
恭介にも怒り出した風太に、恭介は苦笑いを浮かべる。
「じゃあ、食べましょうか」
美咲がそう言うと、恭介は食卓に空が居ない事に気が付く。
「藤野君、空さんがまだ…」
「空さんなら、出掛けましたよ」
恭介の言葉を遮るように、美咲がそう答えた。
「え?」
「何でも、大龍神様の神殿をお守りする当番だとかで…。今日は戻らないそうです」
美咲がそう言うと、恭介は用意された食事を見つめ
「そうか…、居ないのか…」
そう呟いた。
記憶が戻った事で、彼女に確認したい事が幾つもあった。でも、それを故意に避けられているような気がしてならなかった。
すると
「恭介は空が好きなのか?」
と、突然、風太が聞いてきた。
「え?」
驚いた顔をすると
「恭介と空がくっ付けば、恭介はずっと此処に残れるのにな。な、座敷童子!」
風太が楽しそうに言うと、座敷童子が首を横に振った。
「なんだよ、座敷童子。お前、恭介が嫌いなのかよ!」
そう言うと、座敷童子が美咲の顔を見た。
風太は座敷童子の視線に気付いて
「あ!そうか!美咲は恭介が好きだったのか。じゃあ、残念だけど諦める。オイラ、美咲も大好きだから、美咲が悲しむなら恭介とバイバイ出来るぞ」
風太の言葉に、美咲は涙が出そうになった。
(とっくに失恋してるのに…。教授にとって、私はずっと自分を慕う生徒のまま)
美咲は挫けそうになる気持ちを振り切るように、首を振って
「ほら!無駄話していたら、せっかく風太君がもらってきてくれた鶏肉と卵を使った茶碗蒸しと、炊き込みご飯が冷めちゃうよ!食べよう!」
そう叫んで、「いただきます」と言ってご飯を口に入れた。
(空さん…。どんなに誤魔化しても、こんなに愛情のこもった料理を出されたら、あなたが教授をどう思ってるのか分かっちゃうじゃないですか…)
溢れそうになる涙を堪えて、美咲は必死に食事を口に運んだ。

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