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第13特務消防師団と吸血鬼たち
第7話 蒼の胎動
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紅血を用いた物質形成のコツは、何を作りたいかを明確にイメージすることだ。材質や重量といった、具体的なイメージできればいいと火垂はアドバンスをくれた。
「イメージを明確に……イメージを明確に……」
息を大きく吸って、ゆっくりと吐き出す。
そして、力強く双眸を見開いた。
「『第十四特務消防師団』……か、明松周哉、行きますッ!」
周哉の指先からも紅い血が滴る。それは大きく逆巻き、形を成す……かに思われたが、空中で血液同士の凝固が解かれ、ボタボタと落ちてしまった。
「「「……」」」
しばしの沈黙。三人の間には、気まずい空気が流れた。
「えーと、周哉さんは竜巻をイメージしたんですよね! 初めてでこれほどの完成度を誇るとは!」
「……いえ、火垂さんみたいにカッコよく刀を作れたらいいなぁ、と」
周哉の足元にできた血溜まりは、刀身の形成さえままならない。辛うじて手元には柄らしき部分が残っていたが、そこから伸びる刃は酷く頼りない、へなへなのナマクラであった。
「はは……やっぱり僕みたいな低学歴の高校生には、この程度が限界なんでしょうか……」
「そ、そんなことはありませんよッ! 周哉さんも日本刀の歴史や製法を学び、イメージトレーニングを欠かさなければッ!」
火垂は必死に取り繕うも、それがフォローになっていないことを肝心な本人が気づいていない。
自分で作り出した刀身と同じように、周哉はヘナヘナと膝をついてしまった。
「まっ、初めての血液操作なんてこんなもんだよ。それに見たところ、周哉くんの血液にもきちんとアークパイアの特性が宿っていた。なら次に君が試すべきは────」
周哉にとって目標は、誤って蒼炎の力を暴発させてしまっても、紅血を用いて始末をつけれるようになることだ。
ならば次に試すべきは、アークパイアの力を用いて、自らの蒼炎を鎮火できるか否かであった。
「まずはコンビニの時くらいの火力でいい。小さな火を灯して、それを自分で消してみたまえ。なーに、心配するな。ここなら誰の迷惑にもならないし、ミスっても私と火垂ちゃんがフォローするから」
彼女は敢えてお気楽な態度を気取ってくれたのだろう。こちらの緊張を解きほぐすために。
「わっ……分かりましたッ!」
周哉も立ち上がり、火傷の広がる左腕を構えた。
「大丈夫、落ち着け……小さな火でいいんだ。あとは、それを消すだけで」
自分に言い聞かせながらに、なるべく小さな火力のイメージを迸らせる。
ケーキの上に乗った蝋燭の火くらいがちょうどいいだろうか? いや万が一を考えるなら、もっと小さくだ。
マッチを灯る火。赤リンに擦りつけることによって燃焼する硫黄の小さな火花程度なら。
「マッチの火花……マッチの火花……マッチの火花ッ!!」
周哉の指先から、小さな蒼炎が噴き出した。
しかし、それは火花に在らず。極限にまで引き絞られることで、一点に集約された熱線(レーザー)であった。
「まずい────火垂副団長ッ!」
「分かっていますッ! 七番・血鋼壁(けっこうへき)ッ!」
紅い血は分厚い大盾を形作り、鋭利な先端部を足元に突き立てた。靴裏にも血のアイゼンスパイクを形成し、全身を固定する。
だが蒼白く瞬いた閃光は、それを容易く崩してみせた。
「なっ……⁉」
アークパイアの特異性が火力を抑え、盾の曲面に反射することでレーザーは歪曲しながらも天井のコンクリートを穿つ。
せっかく形成したスパイクはすっぽ抜けて。その場に尻餅をついた火垂は恐る恐る、自らの形成した大盾を見やった。
「……なんです、……今の火力は」
理論上、対戦車ライフルの弾丸さえも受け止めてみせる火垂の盾は融解を始めていた。ドロドロに溶けた着弾点に至っては、穴が開く寸前にまで抉り抜かれている。
あと一センチでも薄い盾をイメージしていたら……そう考えただけでも掌には嫌な汗がにじんだ。
「大丈夫か! 副団長ッ!」
「わ、私は大丈夫です……けど、周哉さんは……」
二人は、この火力を吐き出した周哉の方を見遣った。
「…………」
彼はそのままの姿で静止していた。かと、思えば足元をフラつかせ、その場に倒れ込む。
「……なるほどね。周哉くんの潜在的な能力をちょっーと舐めすぎてたかも」
「イメージを明確に……イメージを明確に……」
息を大きく吸って、ゆっくりと吐き出す。
そして、力強く双眸を見開いた。
「『第十四特務消防師団』……か、明松周哉、行きますッ!」
周哉の指先からも紅い血が滴る。それは大きく逆巻き、形を成す……かに思われたが、空中で血液同士の凝固が解かれ、ボタボタと落ちてしまった。
「「「……」」」
しばしの沈黙。三人の間には、気まずい空気が流れた。
「えーと、周哉さんは竜巻をイメージしたんですよね! 初めてでこれほどの完成度を誇るとは!」
「……いえ、火垂さんみたいにカッコよく刀を作れたらいいなぁ、と」
周哉の足元にできた血溜まりは、刀身の形成さえままならない。辛うじて手元には柄らしき部分が残っていたが、そこから伸びる刃は酷く頼りない、へなへなのナマクラであった。
「はは……やっぱり僕みたいな低学歴の高校生には、この程度が限界なんでしょうか……」
「そ、そんなことはありませんよッ! 周哉さんも日本刀の歴史や製法を学び、イメージトレーニングを欠かさなければッ!」
火垂は必死に取り繕うも、それがフォローになっていないことを肝心な本人が気づいていない。
自分で作り出した刀身と同じように、周哉はヘナヘナと膝をついてしまった。
「まっ、初めての血液操作なんてこんなもんだよ。それに見たところ、周哉くんの血液にもきちんとアークパイアの特性が宿っていた。なら次に君が試すべきは────」
周哉にとって目標は、誤って蒼炎の力を暴発させてしまっても、紅血を用いて始末をつけれるようになることだ。
ならば次に試すべきは、アークパイアの力を用いて、自らの蒼炎を鎮火できるか否かであった。
「まずはコンビニの時くらいの火力でいい。小さな火を灯して、それを自分で消してみたまえ。なーに、心配するな。ここなら誰の迷惑にもならないし、ミスっても私と火垂ちゃんがフォローするから」
彼女は敢えてお気楽な態度を気取ってくれたのだろう。こちらの緊張を解きほぐすために。
「わっ……分かりましたッ!」
周哉も立ち上がり、火傷の広がる左腕を構えた。
「大丈夫、落ち着け……小さな火でいいんだ。あとは、それを消すだけで」
自分に言い聞かせながらに、なるべく小さな火力のイメージを迸らせる。
ケーキの上に乗った蝋燭の火くらいがちょうどいいだろうか? いや万が一を考えるなら、もっと小さくだ。
マッチを灯る火。赤リンに擦りつけることによって燃焼する硫黄の小さな火花程度なら。
「マッチの火花……マッチの火花……マッチの火花ッ!!」
周哉の指先から、小さな蒼炎が噴き出した。
しかし、それは火花に在らず。極限にまで引き絞られることで、一点に集約された熱線(レーザー)であった。
「まずい────火垂副団長ッ!」
「分かっていますッ! 七番・血鋼壁(けっこうへき)ッ!」
紅い血は分厚い大盾を形作り、鋭利な先端部を足元に突き立てた。靴裏にも血のアイゼンスパイクを形成し、全身を固定する。
だが蒼白く瞬いた閃光は、それを容易く崩してみせた。
「なっ……⁉」
アークパイアの特異性が火力を抑え、盾の曲面に反射することでレーザーは歪曲しながらも天井のコンクリートを穿つ。
せっかく形成したスパイクはすっぽ抜けて。その場に尻餅をついた火垂は恐る恐る、自らの形成した大盾を見やった。
「……なんです、……今の火力は」
理論上、対戦車ライフルの弾丸さえも受け止めてみせる火垂の盾は融解を始めていた。ドロドロに溶けた着弾点に至っては、穴が開く寸前にまで抉り抜かれている。
あと一センチでも薄い盾をイメージしていたら……そう考えただけでも掌には嫌な汗がにじんだ。
「大丈夫か! 副団長ッ!」
「わ、私は大丈夫です……けど、周哉さんは……」
二人は、この火力を吐き出した周哉の方を見遣った。
「…………」
彼はそのままの姿で静止していた。かと、思えば足元をフラつかせ、その場に倒れ込む。
「……なるほどね。周哉くんの潜在的な能力をちょっーと舐めすぎてたかも」
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