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EP10 エゴシエータ―・オリジン(前編)
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夕星(ゆうせい)は以前にも遥か彼方の空に向けて、願ったことがあった────
あれはたしか小学生の頃だ。夕暮れ時の教室で、幼少期の自分が一枚のメッセージカードと睨み合っている。
「むむむ……!」
短冊を模したメッセージカードの裏には「スターレター・プロジェクト」とあった。
どうやら、とある企業が人工衛星を開発しているらしく、そこへ全国の少年少女から募集した「願いごと」を乗せて、宇宙へと打ち上げるそうだ。
大仰なプロジェクト名に対して内容は呆気ないほどシンプルで、今の夕星ならばそれが企業の広報戦略であったことも理解できる。
けれど、当時の自分はまだ七歳になったばかりの子供だったのだ。「星に願いが届けば」なんて謳い文句を本気で信じていし、だからこそ、メッセージカードにも真剣に向き合った。
プロのスポーツ選手にもなりたいし、ゲームの世界大会で優勝もしてみたい。
ベルトを巻いてヒーローにだって変身してみたいし、ドラゴンと友達になるのも悪くない。
そうやって頭に浮かんだ「願いごと」を書いては消してを繰り返し、いつの間にか放課後になっていた。
何度も書き直したメッセージカードはすでによれきって、これ以上の書き直しもできないだろう。
「いい加減、決めないと」とぼやきながら、瞳を伏せた。
そして「やはりこれしかない」と2B鉛筆を走らせる。
『────カッコよくて大きなロボットにのってみたい』
夕星は自らが選んだ「願いごと」に満足し、席を立った。あとはこのメッセージカードを職員室で待つ担任に渡すだけだ。
足早に教室を去ろうとした、すぐそこで────
◇◇◇
どうして、今更あのときのことを思い出すのだろうか?
「俺はたしか、あの時にヒバチと……」
夕星の意識は次第に明瞭になってゆく。頭には泥を詰めたような倦怠感こそあれど、目を開けられないほどじゃない。ゆっくりと上体を起こしながら、辺りの様子を伺った。
「今、何時だよ? というか、ここは……」
見慣れぬ一室だ。清潔感のあるベットから壁面に至るまでが全て真っ白で塗りつぶされている。
そして部屋の最奥には、よく見知った人物が腕を組み交わしていた。
愛用の拡声器を構えながらに白衣を羽織る女性など、夕星は一人しか知らない。
「未那月(みなつき)先生?」
『グッドモーニング。神室くん♪ ここは私たちの組織が保有する秘密基地の一室さ。変な所じゃないから安心して羽を伸ばしたまえ』
彼女の口調におかしな点は何もなかった。だが、拡声器を通した彼女の声が、乾いたノイズまみれのものへと変貌する。
「な、なんで……⁉」
その声は〈エクステンド〉の操縦席で語りかけてきたあの声と全く同じものなのだ。
「ビックリしたろう? この拡声器にはボイスチェンジャー機能が付いていてね。正体を隠したいときに重宝してるのさ」
こちらの困惑などお構いなしに彼女は続ける。ほくそ笑んで、謳うように言葉を紡ぐのだ。
「美人な保険の先生とはあくまでも仮の姿。今ここに私の姿を明かそうじゃないか!」
脱ぎ捨てた白衣の下から露わになったのは、彼女のスレンダーな体型を強調するタイトなスーツ姿であった。腰には大太刀の鞘を携えて、黄金のネクタイピンには「ARAs」の文字が綴られている。
「私の名は未那月美紀(みき)。────未那月刀剣術の師範代にして、秘密結社ARAs(エリアズ)を指揮する者さ」
あれはたしか小学生の頃だ。夕暮れ時の教室で、幼少期の自分が一枚のメッセージカードと睨み合っている。
「むむむ……!」
短冊を模したメッセージカードの裏には「スターレター・プロジェクト」とあった。
どうやら、とある企業が人工衛星を開発しているらしく、そこへ全国の少年少女から募集した「願いごと」を乗せて、宇宙へと打ち上げるそうだ。
大仰なプロジェクト名に対して内容は呆気ないほどシンプルで、今の夕星ならばそれが企業の広報戦略であったことも理解できる。
けれど、当時の自分はまだ七歳になったばかりの子供だったのだ。「星に願いが届けば」なんて謳い文句を本気で信じていし、だからこそ、メッセージカードにも真剣に向き合った。
プロのスポーツ選手にもなりたいし、ゲームの世界大会で優勝もしてみたい。
ベルトを巻いてヒーローにだって変身してみたいし、ドラゴンと友達になるのも悪くない。
そうやって頭に浮かんだ「願いごと」を書いては消してを繰り返し、いつの間にか放課後になっていた。
何度も書き直したメッセージカードはすでによれきって、これ以上の書き直しもできないだろう。
「いい加減、決めないと」とぼやきながら、瞳を伏せた。
そして「やはりこれしかない」と2B鉛筆を走らせる。
『────カッコよくて大きなロボットにのってみたい』
夕星は自らが選んだ「願いごと」に満足し、席を立った。あとはこのメッセージカードを職員室で待つ担任に渡すだけだ。
足早に教室を去ろうとした、すぐそこで────
◇◇◇
どうして、今更あのときのことを思い出すのだろうか?
「俺はたしか、あの時にヒバチと……」
夕星の意識は次第に明瞭になってゆく。頭には泥を詰めたような倦怠感こそあれど、目を開けられないほどじゃない。ゆっくりと上体を起こしながら、辺りの様子を伺った。
「今、何時だよ? というか、ここは……」
見慣れぬ一室だ。清潔感のあるベットから壁面に至るまでが全て真っ白で塗りつぶされている。
そして部屋の最奥には、よく見知った人物が腕を組み交わしていた。
愛用の拡声器を構えながらに白衣を羽織る女性など、夕星は一人しか知らない。
「未那月(みなつき)先生?」
『グッドモーニング。神室くん♪ ここは私たちの組織が保有する秘密基地の一室さ。変な所じゃないから安心して羽を伸ばしたまえ』
彼女の口調におかしな点は何もなかった。だが、拡声器を通した彼女の声が、乾いたノイズまみれのものへと変貌する。
「な、なんで……⁉」
その声は〈エクステンド〉の操縦席で語りかけてきたあの声と全く同じものなのだ。
「ビックリしたろう? この拡声器にはボイスチェンジャー機能が付いていてね。正体を隠したいときに重宝してるのさ」
こちらの困惑などお構いなしに彼女は続ける。ほくそ笑んで、謳うように言葉を紡ぐのだ。
「美人な保険の先生とはあくまでも仮の姿。今ここに私の姿を明かそうじゃないか!」
脱ぎ捨てた白衣の下から露わになったのは、彼女のスレンダーな体型を強調するタイトなスーツ姿であった。腰には大太刀の鞘を携えて、黄金のネクタイピンには「ARAs」の文字が綴られている。
「私の名は未那月美紀(みき)。────未那月刀剣術の師範代にして、秘密結社ARAs(エリアズ)を指揮する者さ」
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