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このまま出口がないのなら せめてひとつの絵を描けまいか
しおりを挟む冷たい石の壁が、少女の周囲を囲んでいた。
灰色の岩肌は、触れるだけで骨まで凍えるほどの冷気を放ち、彼女を永遠の牢獄に閉じ込めていた。狭く、息苦しく、窓もなく、光の欠片すら許さない闇が支配する──。
ここでは時間という概念が溶け落ち、秒針の音も、日の昇降も去った後。
シン────
のしかかる静寂と、固まった空気。
少女はそこで、膝を抱えて座っていた。長い髪が肩に落ち、淡いドレスが埃にまみれた。
そこで少女はゆっくりと立ち上がり、目を閉じる。
憎しみが胸に渦巻いていた。
この壁──彼女を束縛する無慈悲な存在。そこへ手をかかげ、彼女は指先を虚空に向けた。
「……」
骨ばった細い指の先が空気を切り裂くように動いた瞬間、周囲に微かな光が灯り始めた。
それは最初、針の先のような小さな点だった。
闇の中でぽつりと浮かび、静かに脈打つ。
少女の息づかいが深くなり、また指が動く。
すると点が線となり、線が曲線を描き、徐々に形を獲得していった。幻想の糸が織りなすように……それは柔らかく膨張した。
次に、光は色彩を帯び始めた。
淡い青から、優しい緑へ、そして金色の輝きへ。
少女の足元に、花々が芽吹く。赤い薔薇、青い鈴蘭、白い百合──それぞれが甘い香りを放ち、土のない地面から自然に生え出る。
頭上には澄んだ水色の空が広がり、雲がふわりと浮かび、鳥たちが翼を広げて飛び交う。
彼らは優雅に舞い、さえずりを響かせた。
遠くまで広がる世界は、果てしなく続き、緑の森、輝く湖、そびえる山々が連なっていた。風が優しく吹き、葉ずれの音が耳を撫でた。
「………ハァ」
少女は目をゆっくりと開き、周囲を見渡した。
彼女の創り出した世界は、生き生きと脈動していた。花々は微風に揺れ、空の鳥たちは輪を描いて飛んだ。
そんな輝く世界の中で、少女の姿はぼんやりと透明になり始めていた。彼女は微笑み、束縛のない景色に溶け込むように……少しずつ薄らいでいく。
《 ここは自由の国だ 》
少女の声が響いた。
その声は壁に反響し、幾重にも重なり、広がる。
そうやって夢の翼を広げた後
最後の余韻だけを残して、消えた。
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