魔女として断罪された悪役令嬢は婚約破棄されたので魔王の妃として溺愛されることを目指します

悠月

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第三章 内政チートで魔王の国を改革! 魔王からの好感度アップを目指します

5 まずは台所から改革しましょう②

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 * * *
 
 30分後。
 先ほどまでの期待に満ちたベルクの目は、いまや失望に彩られていた。

「残念です。エレイン様のお力添え、期待していたのですが……。野菜の皮むきは、難しかったですよね……」

 期待に応えることができず、私自身も悔しい。
 私は、前世でもこの世界でも、料理の下ごしらえをした経験が、あまりなかったのだ。
 前世では、コンビニエンスストアというものが町の至る所にあった。
 24時間、いつでも好きな時に、お弁当やお総菜を買うことができたのである。
 ゲーマーで彼氏もいなかった私が、手の込んだ料理を作る機会はあまりなく、朝も昼も夜も、コンビニにお世話になりっぱなしだった。
 けして、料理ができないわけではない。
 しかし、コンビニやスーパーマーケットに行けば、カット野菜や冷凍野菜というものが手に入った。
 料理を作る必要がある場合でも、下ごしらえの手間が省けるそれらの野菜を使って、時短メニューを作るのが常だったのだ。

 そして、この世界に転生してからの私は、公爵令嬢である。
 裁縫や刺繍は貴婦人の仕事だと教え込まれたが、厨房には立ったことがなかった。

「ええと……期待されていたところ、本当に申し訳ありません。面目ない次第です」
「いえ、こちらこそ、元公爵令嬢のエレイン様に、このような下働きの仕事をお願いした私が、そもそもいけなかったのです。気が利かず、大変失礼いたしました」
「あ、いいえ、そんなことは……!」

 なんとか、期待に応えたい。
 ヴィネ様のためにも、がっくりと肩を落とすベルクのためにも。
 そう思って、何か役に立てるアイデアを提案できないかと、私は必死に考えを巡らす。

「あ、ああ、そうだわ、ピーラー……ピーラーさえあれば! もう少し、何とかなったと思うのですけれど……いえ、でもこんなのは単なる言い訳に過ぎませんわね」

 そう、ピーラーさえあれば、私だって野菜の皮むきぐらい何とかなるのだ。
 実家で夕飯作りの手伝いをしたことだってある。
 何度も言うが、私だってけして料理ができないわけではないのだ。
 ただ、忙しい日常の中、効率を第一の優先事項と考え家事を行っていただけなのである。

(あれ、でも、ピーラーがあれば、この忙しそうな人たちも、時短料理が作れて助かるのかしら?)

「ピ、ピーラー……ですか? それは、いったいどういったものなのです?」

 聞いたことのない単語に、ベルクは小首を傾げる。

「ピーラーというのは……」

 私は床の土間に、指で絵を描きながら、説明を始めた。

「Y字型になった道具の先端に、細い刃が二枚ついているのです。二枚の刃の間には、少しだけ隙間が空いていまして。刃はちょっと動くように止められているのですが……。で、手前に引くと、スルスルっと皮一枚分の厚さだけ、むけるようになっている道具なのです。これはけして、無精しているわけではなく、時短料理のためには……」
「それは……! 確かに便利そうですね!」

 先ほどまで失望一色だったベルクの顔に、希望の色が浮かぶ。

「『時短』とおっしゃいましたか? それは、画期的な考えですね。料理人たちは、毎日、とても忙しいのです。今は朝なので、夕食時に比べれば余裕はありますが。夕食となれば、今の比じゃないぐらい、慌ただしくなります。それでも今日は暇な方なのですよ。客人を迎えるとなれば、こんなものではすみません。その道具があれば、料理人たちの仕事は楽になりますか?」
「そうですね……おそらく」
「では、さっそく試作品を作らせてみましょう」

 ベルクは笑顔を浮かべ喜んでくれているが、私としては今ひとつ納得がいかない。
 前世の知識と小さな頃から積み重ねてきた勉強をもとに、「ババーンと派手に内政改革! ヴィネ様のお役に立つわよ!」と意気込んでアヴァロニア王国までやって来たものの、現実は理想に追いつかない。なかなか難しいものだ。

(これじゃあ、ベテラン主婦の便利グッズ発明って感じだわ。いや、いいんだけど……便利グッズが悪いわけじゃないんだけど。こんな地味な改善案だけじゃダメ。もっと、なんとかいいアイデアを出さないと、私!)


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