棘先の炎

蒼空 結舞(あおぞら むすぶ)

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棘先の炎

自身の誓いを茨に誓う 2話

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車内から降りたスネークとクイラ、そして子供達は2人の案内により薔薇姫の待つ理事長室へと向かう。理事長室へは警備の者が数人佇んでいる為、スネークは幹部だけが持つ事を許される赤く染められた"茨"の刻印が施されている懐中時計を彼らに見せ付ける。
「幹部のスネークと付き添いの者だ。子供達を薔薇姫様に会わせる約束があるはずだ。…通して貰えるか?」
幹部であるスネークに警備の者は扉の前から離れた。そして、スネークは大きな扉を叩く。
「薔薇姫様!スネークです。…子供達を連れて来ました。ー無礼を承知ですが入室してもよろしいでしょうか?」
スネークの問い掛けに扉が勝手に開いた。…何故このような事が起こったのかというと、身体の不自由な薔薇姫はリモコン1つで扉の開閉が出来るのである。薔薇姫からの入室が許可されたスネークとクイラは子供達を連れて入室した。
薔薇姫の居る理事長室の広さに子供達は目を奪われる中、彼女は子供達に向けてにこやかに微笑む。
「皆さん。ようこそいらっしゃいました!…少しばかりですが食事も用意しましたから。…ここでゆっくりなさって下さい。」
すると給仕の者達が出揃い、テーブルに食事を置く。そして、子供達をソファへと座らせた。…だが、子供達は今日の事で混乱しているのもあり、安心して食事を摂るような雰囲気になれない。…そんな彼らを見たノイズは自分から進んで食事に手を付けた。
「うん!上手い!!!…お前らも大丈夫だって!毒なんか入ってねぇし。ーだから安心して食えよ。」
そしてスープを飲み干しおかわりをするノイズの姿を見て、腹を空かせていた子供達はようやく食べ始める。先程から感じていたのだが、恐らくノイズは子供達にとってはリーダー的存在なのであろう。少しずつ口元へ運んでいた子供達が、あまりの料理の美味しさにかきこむほどであった。そんな子供達の様子を見て笑みを浮かべる薔薇姫にスネークは彼女へ耳打ちする。
「子供達は保護出来たものの…、これからはどうしますか?流石に薔薇姫様だけではこの全員は引き取れませんよね…?」
子供達の心配をするスネークに薔薇姫はこのように答えた。
「その心配は無いです。…フォックスに頼んでこの子達の新たな親元へのリストを作っておきました。…大丈夫。社会的地位も愛情でさえも、子供達の未来が明るくなれるような方々をリストアップしたので。」
フォックスこと狐堂 凛太郎(こどう りんたろう)にいつの間にか頼んでいた薔薇姫の用意周到さにスネークは驚き、そして彼女に敬愛をする。そんな2人の姿にクイラは黙って見ていたものの、分かりやすいスネークの心はともかく、心を炎で焼き尽くしている薔薇姫の心情は読むたびに自身も心を炎で包まれそうになる為冷や汗を垂らす程だ。そんなクイラの様子に薔薇姫は気が付き、彼女へ向けてゆっくりと笑った。薔薇姫の心の炎が更に燃え上がり、何事かとクイラは困惑した表情を見せる。
「えっと…。薔薇姫様?…私に何か言いたい事があるのですか?…私自身、読みたくて薔薇姫様の心を読んでいる訳では無いのですが…。」
薔薇姫の事を好いているスネークの前の為、猫を被って言い訳をするクイラに更に薔薇姫は微笑んだ。
「あなたには後ほど言いますよ。…少しお願いしたい事もありますしね。…でも、まずは子供達の食事が終わってからにしましょう。…そしたらお話しします。」
業火のように燃え盛る薔薇姫の心にクイラは畏怖を抱いた。

食事を終えた子供達をスネーク部下達が出揃って彼らを別室へと案内させている最中、薔薇姫はスネークに席を外して欲しい事を願う。すると彼は驚いた表情を見せる。
「薔薇姫様やクイラの事を信用してはいますが…。ーそれは少し危険では?俺も居た方が…。」
そんな彼に薔薇姫は笑い掛け、大丈夫な事を伝えた。そして納得がいっていない様子のスネークは薔薇姫の命礼により出払う事になるりそして広い室内に薔薇姫とクイラの2人だけとなる。読心術を用いても薔薇姫の考えが分からないクイラは長い脚を組んでから、優雅に紅茶を飲む薔薇姫に問い掛ける。
「…で?私の素性などお見通しのあんたが私に何のよう?…お願いだとは聞いてるけど?」
恐らくスネークを出払わせたのは薔薇姫がクイラの本性を知っているからだ。勿論、スネークも彼女の素性を知っているものの、薔薇姫を敬愛をしている彼の傍ではクイラは猫を被り続けるだろう。そう判断したのである。ソファに体を預け不躾な態度を取るクイラではあったが、突然の薔薇姫の言葉に驚愕をした。
「あなたを私達の組織、"茨"へ加入させたいのです。…待遇も良くします。それに…、あなたのお兄さんに関する情報もあげましょう。ー興味はありませんか?」
そして深い笑みを浮かべた薔薇姫の微かな心情を悟ったクイラは、何故か不機嫌な顔をする。そんな彼女の様子に薔薇姫は上品に手を添えた。
「あら?…もしかして、私の本当の心情を気付いてしまいましたか?」
そんな彼女の様子にクイラは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。
「見えたよ…。あんたの狡猾で汚い策略がね。ー私を組織に引き入れてあんたは利用するんだろ?…人を駒みたいな扱いをするあんたの発想には本当にムカつく。…なんでスネークさんがあんたに好意を抱いてるのか私には分からないね。」
薔薇姫に向けて嫌味を言った後、自身も紅茶を一口飲む。セイロン産のフランボワーズの香りに包まれる2人。そんな中でクイラは溜息を吐いてから言い放った。
「あんたは自分が不自由だからって理由で、人を駒のように使って…、そして、私利私欲の為にこの組織を作ったのか?…返答次第ではあんたに利用されるつもりは無い。」
真剣な表情を見せるアメジストに輝く瞳に、薔薇姫はクスリと笑った。
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