不幸ヤンキー、"狼"に狩られる。〜跳躍〜

蒼空 結舞(あおぞら むすぶ)

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花人の謎

【閑話休題】不幸ヤンキー、”狼”が越してくる。《中編③》

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「嬢ちゃん~、この2人が不思議だな~って顔してるな!」
 …なんでバレたのだろう?
 撫子の言葉に、肩を震わせ意表を突かれた顔をしてしまいそうになるのを堪えた。しかし、オニオンスープを飲み干してニヤつく彼はそれでも彼女の反応を見て分かったようだ。驚く麗永やうららを見て代弁するように話していく。
「まっ、シスコンのあまり厳しくする兄貴と、今ではファンクラブが復活した妹の、こ~んな痴話喧嘩を見れば、そう思うわなっ!」
 なんと自分の隣に座る男が大きく笑いながらも自分の気持ちを汲み取ったのだ。それが彼女にとっては不思議であった。なぜならば自分はこの男に”テレパシー”など送っても居ないのだから。
「…撫子さん。なんで、分かったんですか? …私の気持ち」
 すると彼はニヤつきながらこのような答えを示す。
「そんなの見れば分かるさ~。甘く見ないでくれよ~?」
「…それは、どういう?」
 すると撫子は得意げに笑うのだ。
「こちとら長年、嬢ちゃんのを実行してるであろう人間嫌いな”狼”と高飛車でプライドの高い刑事の友人なんだからよ~!」
 どういう訳なのか分からずにいる少女に今度は麗永が睨むような視線で彼を見た。まるでいつも自分が高飛車な奴だと言いたげだと言われた気がしたからである。
「誰が高飛車でプライドの高い刑事ですか、これだからあなたって人は…」
「まぁまぁ~、そんなカリカリすんなよ~。白銀の王子様?」
「…おちょくってます? あなた」
 撫子の煽りに額に皺を寄せる麗永に彼は大きな笑いをした。そして今度は、驚きを見せるうららに話し掛けた。それは心の心中を代弁したものであった。
「それにしても、妹ちゃんはもう嬢ちゃんの事なんとも思ってないのか~? …嬢ちゃんの顔がって言ってるぜ?」
「困惑って…なんでですか?」
 するとうららは顔をへの字に曲げてから「何を言ってるんだ?」というような表情を見せていた。逆にその表情が心にとっては不思議でならない。
 …なんでそんな顔をするの? 私はあなたを傷つけたんだよ? 
 しかしその答えは想定外であったのだ。最後のハンバーグを食した彼女はマグカップに入っている麦茶を飲んで首を傾げたのだ。
「別に心ちゃんは悪い事なんてしてないじゃないですか?」
 …どういうこと? だって私はあなたの過去を暴いてしまったから…―
「私は自分の過去が知りたかった。それを教えてくれた。…自分が願って望んだ行動に後悔しなくて良かったですよ~!」
 その言葉に心はまた戸惑いを見せた。普通だったら軽蔑する相手を招いて食事に誘うのもおかしい話だが、こんなにも彼女がポジティブで責任感のある人間だと思いもしなかった。
 …この人、強いんだ。幸君や哉太君と同じくらい。
 驚愕し微動だにしない心にうららは気にせずにまた言葉を紡ぐ。それは心が意図としない言動であった。
「…だからありがとう。心ちゃん!」
「…ありがとう。私…が、ですか?」
 機械のような硬く緊張した少女の声にうららは少し笑ってしまう。それで自分の考えが当たっていたのだと実感した。
 …やっぱりこの子は私のことを思ってくれていた。初めて会った時より人間らしくなっているけれど…もしかしたら、昔の私と似ているのかもしれない。
 昔の記憶は戻ってはいないが、直感的に感じたうららは笑みを深めて緊張している人形の氷を溶かそうとするのだ。
 ―昔の自分のようにならないように。
「だって私がしたかったんだもん。心ちゃんがそれを手伝ってくれたんだから、心ちゃんはまったくもって悪くない。…だから私のことで自分を責めないでくれないかな?」
 太陽のような温かい微笑みに心は自身を蝕んでいた”罪”という不安をかたどった氷は、太陽に解けて無くなっていく感覚を得た。
 …私を許してくれるんだ。…なんて心の器が大きい人。
 罪に苛まれていた人形はうららの優しげな笑みに応えるように少しだけ頷いた。その2人の姿を見て2人の男は優しく見守るのだ。
 ―ある”狼”が作戦を実行しているのを忘れて。


「哉太さんの風呂場って…なんか、ラブホみてぇだな」
 哉太の自宅の風呂場を見て幸は1人呟いた。透明なガラスの仕切りに色が変化する電光灯にジャグジーが搭載されているので、初めて見た時には驚いたものだ。しかも広い。
 …絶対、風呂場でも一発、やらしいことのあんなことやこんなことをするに違いない。って、なにを考えている、俺!!?
 思考が悶々としていて普段はしないハレンチな想像をしてしまう幸は、そんな自分にも嫌気が差してしまった。だから深呼吸をしたのだ。
「…さっさとシャワー浴びて風呂入る…か」
 1人寂しく呟いて服や下着を畳んで置き、シャワーの蛇口を捻って浴びる。湯が完全に沸いていないせいで冷水のままだが、今の幸にはちょうど良いものだ。しかしやはり寒気を催してシャワーを止めつつ、シャンプーに手を伸ばした。
 ―そこで不思議に思う。
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