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ユルリッタの余裕は消し去る

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「あ!アンノージュ様ですか?」
「ライル様?」
わたくしはレスヴィオーネ様と一緒に歩いていた時後ろから声をかけられました。
それはメルディ様の婚約者、ライル様です。
レスヴィオーネ様は顔を真っ赤にして手で顔を覆っています。
…どうしたのでしょうか。
そして意味がよく分からない言葉ずっと言い続けます。
「ほ、ほんとの、あの、ライル様だ…!めっちゃイケメン!最高!人生最高でした!」
本当に理解ができません。
ですがこのままだと大変だということがわかっていたので声をかけようとした所、レスヴィオーネ様は興奮のあまり、倒れそうになります。
「やばい…これは…キュン死?いや…これは…尊死…」
そしてライル様が抱きとめ、保健室へ行ってくると言われレスヴィオーネ様は早急に連れ去られたのでした。
…一人になりましたね…
流石に一人になるとユルリッタ様が目をつけるのは確率的に高いです…ならばどうするか…。
では!自分の寮に戻るしかないでしょう!
一人一人小部屋が与えられ鍵がついている。
だったら何も面倒ごとはおこらず自分の趣味を没頭できるはずです!
…ちなみにわたくしの趣味は刺繍と儚い恋愛小説を読むことです。
早速自分の寮に戻ろうとしたのですが…
寮のロビーでざわざわと騒いでいるのが見えます。
真ん中にユルリッタ様が胸を張りながらわたくしの悪事を喋っているようです。
聞いているようでは全て嘘ですけれどね。
ユルリッタ様はわたくしをみてニヤリと笑みを浮かべます。
わたくしは今一人ですので何も盾がありません。
それを利用して調子に乗って悪事をどんどんと言っています。
…はぁ、本当にめんどくさい人達ですわね。早く小部屋に行きましょう。
見ている限りでは悪事を信じる貴族は少なく嘘だ嘘だと大騒ぎです。
ユルリッタ様も困惑して慌てています。
まぁ、自業自得だと思いますけれどね。自分で蒔いた種は自分で解決してください。
わたくしは声を出さずそのまま小部屋に行きました。

「ほぅ…。やはりこの小説は面白いですね…」
恋愛小説を色々と読み漁っているとドアからものすごい大きい音がしました。そしてドアがコンコンとノックされます。
「誰ですか?」
「わたくしです!レスヴィオーネです!」
…あら、どうしたのかしら。
「えぇ入ってどうぞ」
「ありがとうございます!」
入ってきたのは、変声魔術具を持ったユルリッタ様と剣を持ったレディオス様でした。
どういうことでしょう。確かにあの声はレスヴィオーネ様だったはず…もしや魔術具で…?
「やめなさい!その魔術具は寮では使用禁止です!」
「アンノージュ様!そんな身構えないでください。」
「何をおっしゃるのです!?使用禁止にされているのにそれを軽々と破り、人を騙した人が言うことですか!?」
…どうしましょう。このままだと…。
ダメです、冷静にならなくてはなりません。
この場合は話し合いで終わらせましょう。
「ふぅ…。では何の用でここに来たのですか?」
そう言いながら睨みます。
「何の用?それはだなお前みたいな出来損ないをユルリッタのメイドとして雇わせようかと思ってたのだが…できるかな、アンノージュ?あ、いやアンノージュ様、か?」
煽るような目をしてにっこりとこちらを見ます。
…メイド?いやですわ。こんな最低な奴らの下っ端なんか…!
「もし嫌なのでしたらわたくし無理矢理にでも奪って見せますわ…!」
ユルリッタ様は杖を取り出しました。
装飾が多く杖の先には大きい魔石があります。
…この杖は…光のフェルディタールの杖…!?
光の杖とは光の魔力を吸いその杖で攻撃の幅を広くさせる杖です。
とても強く聖女にしか使えないというものです。
「分かりました。ですがここではなく外でやった方がよろしいのでは?」
…これは受けるしかないですわ…。
外を提案してユルリッタとわたくしは闘うことになりました。
「所詮アンノージュ様の魔法は風、火、水。私に勝てることはできませんわ!!」
おほほ、と気高く笑います。
ですがその余裕は一瞬で消し去ります。
わたくしも杖を出したのです。
その杖は、光と闇の合成魔法、フェルディタールとメルデリーアの杖です。
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