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SAGE

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序章

pt8

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俺はZOZOから届いた箱を手にして部屋に戻った。
この箱の中には、俺が求めていたスニーカーが入っている。
言い忘れたが、俺は結構スニーカーが好きなギタリストだ。
斬新なデザインのものや、シンプルイズベストなものまで幅広く好きだ。

俺のスニーカー好きがどの程度のものかって説明が始まる前に、さっさと箱を開けることにするぜ。

ぱか

俺は白と黒でシンプルにまとまって洗練されたニケのスニーカーを手に取った。

うーーーん。すばらしい。
あのブーメランのようにシュンっと切れのあるロゴに洗練されたフォルムが合わさるとここまでオシャレになるんだなぁ。。。

思わず心の中で唸ってしまったぜ。
フェンダーのテレキャスを手に入れたときくらいの唸り具合だったと思うんだけど、どうかな?

早速紐を通してみる。
結構めんどくさい。
でも、それもまた一つの楽しみだろ?

そして履いてみる。
鏡の前で足元をチェックしてみる。

・・・。
うーーーん。
すばらしい。

スニーカーを丁寧に脱ぎ、鏡の脇に添える。

大満足の俺は、今の昂った気持ちのままギターを持ったらとんでもないフレーズが生まれるんじゃないかと思った。
俺はこの気持ちが冷める前に急いでギターを手にした。

ギターを持ち上げる。
ストラップを肩にかける。
鏡の前に立つ。
仁王立ちする。

・・・。

・・・。

ダメだ。
出てこない。

これがいわゆる天才の苦悩というやつじゃないだろうか?
やっぱ、天才ほど悩むと思うんだよね。それを乗り越えることが大事だと思うんだよね。

口調が若干”森レオ”みたいになった俺は履いたままだったスニーカーを脱いだ。
そして自分のギタリストとしての才覚のヤバさを噛みしめるようにそっと目を閉じて、ゆっくりと左手をCコードのポジションに持って行く。

「ふーーー」

呼吸を整える。

ピックを優しくなでおろす。

ジャーーーーン。
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