異世界日記

メラン

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3日目(5)

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「「.....。」」
二人の間にとても気まずい空気が流れる。
助けを求めてユナの方を見ると、離れたところで親指を立てている。
行かせるだけ行かせて放置ってことですかそうですか。
「えっと、俺のこと見てたみたいですけど何か用でも?」
「み、見てません!えっと..そう、貴方の後ろにあった壁を見ていただけです!」
「ええ...?」
「わ、私はこれで失礼しましゅ!」
女性はそう言って俺から逃げるようにそそくさと浴室から出て行ってしまった。
浴室から出ていく女性を呆然と見ていると、ユナが笑いをかみ殺しながら近づいてきてまるで慰めるかのように俺の頭を撫でてきた。
「盛大に振られたね。ドンマイ。」
「何がドンマイだ。誰の所為でこんなことになったと思ってるんだよ。」
俺の問いかけにユナは誤魔化すようにそっぽを向いてヒューと口笛を吹く。
「これ以上いたら逆上せそうだから上がる。」
「あ、ちょっと!」
そして俺の静止を無視して浴室から出て行ってしまった。
全く自分勝手な奴だ。
「ふぅー。なんか無駄に疲れた。」
せっかく癒されに来たのにこれじゃあ逆効果だよ。
まあでも、ユナのおかげでネガティブな思考から逃れることができたから差し引きゼロってところかな。
...もしかしてユナはこれを狙ってあんなのこと?
いやいや、それは絶対にない。
だって俺をあの女性の方に押し出した後の笑顔は悪意100%だったもの。
「いろいろ考えてたら逆上せてきた。俺もそろそろ上がろ。」
俺は湯舟から上がって着替えを済ませて銭湯を後にした。
結局あの人は何だったんだろう。
見てませんとか言ってたけど、確実にこっちのこと見てたし....。
まあ、何か用事があるならまた声をかけてくるだろう。
風呂に入って上がった体温を冷ましつつ宿に帰るとちょうど夕食の準備が終わったところだったようででそのまま
夕食をもらって部屋に戻った。
戻るときにアデラさんが洗濯物を有料でよければ預かってくれると言ってくれたので銅貨1枚を払ってお願いした。
洗濯機もないような状況でどうしようと思っていたところだったのでありがたい。
「さて、後は寝るだけだけなんだけど、流石にまだ眠くないんだよな。」
昨日は昼過ぎからグッスリだったし、今日は今日で昼前から夕方まで気絶していた。
いくら色々あって疲れ切っていたとはいえもう十分だ。
とはいえ、すでに夜も更けてきた時間帯。
外に出るもの危ないし、此処で何かするにしてもできることは限られる。
「...ちょっとだけ魔力を動かす練習でもしてみるか?」
下手をしたらまた気絶するかもしれないけど此処でなら全く問題はない。
そうと決まれば即実行だ。
「確かお腹の下の方に...。あった!」
目を瞑って意識を集中すると一度成功させただけあってすぐに感じ取ることができた。
これをジェーンさんとやった時と同じように掌まで移動させる。
問題は此処からだ。
ミルアさん曰く今日倒れたのは魔力を一気に放出したことによる魔力切れが原因。
なら少しずつ放出すれば問題ないのでは?
試しにジェーンさんととやったときとは違って少しずつ掌から外に流れていくように意識する。
「お、これは行けそう。」
思った通り少しずつ流すだけだったらジェーンさんとやった時のような急速に力が抜けるような感覚は襲ってこない。
ただ、魔力が外に出た分だけジワジワと疲労が蓄積していくような感覚がする。
「....ふぅ。」
感覚的には30分ぐらいだろうか?
体内に感じる魔力が減ってきて体力的にもきつくなってきたので魔力を放出するのをやめた。
それほど長い間やっていたわけではないけど、最初よりはスムーズに魔力を操れるようになった気がする。
これだけ出来るようになればジェーンさんも魔法を本格的に教えてくれるはず。
魔力を放出して程よく疲れたし今日はここまでにして寝よう。
明日が楽しみだ。
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