きっとこの世はニャンだふる♪

Ete

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抜けるんです

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「あんたも俺も、な、何で浮いてんだ⁉︎」

俺は思いっきり動揺した。

しかも俺の足の下に
叶和子(かなこ)に妹、両親がいて、
何より、台に横たわっているのは…まさに俺⁉︎

「ですから~さっきから言ってるように、お亡くなりになったんですよ」
サングラスの男が言う。

「俺が死んだってことかっ⁉︎」
「ぐへっ!」
俺は男のネクタイを思いっきり引っ張ってやった。

ビヨーーーーーーン!

掴んだネクタイが思いっきり伸びる。

「なっ!何で伸びるんだよ!このネクタイ💢!」

びっくりして手離す。


バシッッッッッ‼︎

「痛アァッ‼︎」


今度は男の顔にシュッと跳ね返っていった。
《テレビで観たことある光景…》

「いやぁ、皆さんこの状況になると 那智さんと同じことされまして」

男はハンカチを出して額の汗を拭いながら喋る。

「皆さんの気持ちはすご~く解るんです。だから最初は我慢してたんですよ~。でもその度に首を絞められると こっちも痛いでしょ?ネクタイも自前なんですよ。ひどい時は引きちぎられますからね~。それで伸びるのに替えまして。こっちの方がまだマシです」

笑っていやがる…。
漫才やってる場合か‼︎

「俺が死んだって証拠は⁉︎妹達の声も聴こえるし、現にこうやって話もできる!」

「証拠なんて。今の状態がそれですよ。話ができるのは私とだけです。亡くなっても耳は最期まで聴こえるって聞いたことありません?あれですよ。あれ」

男は台に横たわった俺と、浮いている俺を指して説明する。

…何てこった…

「じゃあ あそこの俺は…本当に…息をしていないんだな?」
「その通りです」
「もう…あの身体にはもう戻れないのか…」

俺は情けなくて、流石に泣きそうになった。


「戻れますよ?」

「そうだよな。死んだんなら戻れないよな…」

って……ハァ⁉︎


「今なんて言った⁉︎ 戻れるのかっ⁉︎」

「はい♡」


嬉しそうな顔で男は返事する。
返事にハート付けてんじゃね~‼︎

「試しに戻ってみてください」
こいつ、またサラリと言いやがって!

「どうやって⁉︎」

「簡単ですよ。『戻りたい』と頭で念じるだけです」

こいつの言ってる事 信用できるのか?

「大丈夫ですよ。どうぞやってみてください」
この笑顔が胡散臭い。

でも…戻れるものなら戻りたい!


…ええい!


《あの身体に戻りたいぃいいいいい‼︎》


俺は思いっきり頭の中で念じてみた。


するとどうだ。
俺はスゥ~っと吸い込まれるように『俺の身体』に戻っていくじゃないか?

さっきの冷たい台の上にいるのが分かる…

手は?足は⁉︎声は⁉︎

…身体は何処も動かない…。


…本当に死んじまったんだ…


「いかがです?」
男はいつの間にか俺の『遺体』の横に来て、顔を覗き込んでいるのが分かる。
眼は開いていないのに…分かる…。

『いかがもクソもねーよ‼︎』
俺は心の中で声を発した。

「じゃあ今度はそこから出てきてください」

ハァ⁉︎
また何 言ってやがんだ⁉︎

「同じですよ、『出たい』って念じるだけです」

クッソォオオオ‼︎
こいつの言いなりになるのがスッゲー腹が立つ‼︎
腹立つけど…
だからって死んでる身体にいるのも…

ええいっ‼︎

「出たい!出たい‼︎出たい!」

俺はヤケクソになって念じた。
するとどうだ⁉︎

「ま…また浮いてる⁉︎」

俺はまた『俺の身体』からスゥ~と抜け出してきたではないか?

「初めてにしてはお上手ですね~」
男はパンパンと拍手をしやがった。

「これ、素直な方はすぐ出来るんです。でも信じない方はなかなか出来なくて」
褒められてもちっとも嬉しくない。

「そもそも、これが出来るからって良いことでもあるのかっ」
俺はカッとなって言い返す。

「もちろん、ありますとも‼︎」

男は偉そうに言い放った。





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