きっとこの世はニャンだふる♪

Ete

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迷走

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生きてる時は、毎日が精一杯で
死んだ時にどうするかなんて考えたこともなかった。

嫁には『俺が先に死んだら、誰か他の人と結婚しなさい』とよく言っていたが、もちろん本心ではない。

脅かせば、俺から『離れない!』って言ってくれるのが嬉しくて、ついつい 心にもない事を言って構っていただけだ。
でもまさか本当に死んでしまうなんて…要らん事を言ったばっかりに『言霊』になってしまったのかもしれない。

あの時バイクに乗らなければ、車だったら生きてたんじゃないか…。
それとも、自分は『死』を予感してて、お気に入りのバイクを お供に選んだのだろうか?
今更どうこう考えても、現実はひっくり返らないのだが。
《後悔先に立たず》とはよく言ったものだ。
生きていれば、やり直しも可能だったかもしれないなぁ。


それより『死んだらそこで終わり』と思っていたのに、死んでから選択を迫られるなんて誰が思うだろう。

漫画でいえば、『死ぬ』とその人を『裁く人』がいて、良い人は天国へ、悪い人は地獄に堕とされるってのが常だが、実は『成仏するか彷徨うか?』を自分で選ぶことになっているとは。
これはさすがに、死んでみないと分からない世界だったわ…。
いや、知りたくもなかったけど。

さて…
こんな事を悠長に考えている俺。
ずっと宙に浮いている訳だが。

これからどうしようか。
一旦身体に戻るか?
でないと、戻れなくなった時に困る。

 待てよ?
困ると言っても、俺を待っているのは『火葬』であって、生き返れる訳ではない。
魂として生き続けるか否か。
遺体に戻るか、このまま浮遊するのか?
どっちも嫌だけど どっちか選ばなくては‼︎

一体どうしたらいいんだ~⁉︎


そうだ、その前に…



「おい!案内人!」


俺は黒服の男を呼んでみた。

…男は出てこない。

「なんだ?いつでも何処でも伺いますって言っていたくせに、出て来ないじゃないか」


あ、そうか。
なんだったっけ?


「おい!NAMAE  NAI‼︎」

俺はヘンテコな名前を呼んでみた。



ひゅーーーーーーーーーー…


ドンガラガッシャーン‼︎



「はいはいは…ヒィ~‼︎」


あ、マジで来た。


ってか、床がないのになんでドンガラ音がするんだ?


「ご用件を伺いますです~」
男は出会った時と違って、髪もスーツもボロボロになっていた。


「お前…ちょっと見ないうちにスッゲー姿 変わってんだけど?」

「ははは(汗) ただいま対応中の方が、えらく興奮なさってましてっ」
また汗を拭き拭き、身なりを整える。
どうやら『さっき亡くなった人』とやらに ボコボコにやられたようだ。
俺はマシな方だったってわけか。

「どのようなご用件でしょう?」

「あ、いやぁ…ちょっと呼んでみただけ」

そう、本当にコイツが来るのか、試してみたかっただけだ。
怒るかな?

「お試しになられたんですね?」
男は笑っている。

「怒らないのか?」

「この仕事、長く続けておりますから慣れております。ご本人にすれば、なかなか信じられないことばかりでしょうから」

意外に人間が出来ているじゃないか。
ん?この人 人間か?

「すまんすまん。あんたも忙しいのに。これで来てくれるってのは信じた。何かの時はまた呼ばせてくれ」
男のその姿を見たら、なんだか申し訳なく思えて、俺は素直に謝った。

「こちらこそ、このような大変な時にお気遣い頂きありがとうございます。またお困りの時はどうぞお呼びください。それでは失礼いたします」
男は会釈するとまた消えていった。

あ、せっかくだったから、遺体に戻るか浮遊か悩んでるって相談すればよかった。
俺としたことが。
もう一回呼び出してやろうか?

その時、足下で、俺の遺体を運び出す話が進んでいるのが聞こえた。

マズイ。

マジで。

ここで遺体と離れても、また身体に戻れるのか?
どのくらい離れても大丈夫なんだろう?

しまった。
そこ聞いておけばよかった。

考えていても無駄だ!
とにかく今は戻るしかない‼︎

なんだったけ?
念じるんだ!

《戻りたい!戻りたい!あの身体に戻りたい‼︎》
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