きっとこの世はニャンだふる♪

Ete

文字の大きさ
上 下
40 / 42

家猫になるために!

しおりを挟む
俺は朝になると実家の庭のテーブルに乗って、昼間はそこら辺で過ごす。
ご飯やおやつを貰って、遊んでもらい、夜になると倉庫に戻る。
それが俺の日課になった。

ある日、俺のご飯の匂いを嗅ぎつけて、どこからか野良猫がやって来た。
(俺も野良猫だけど)

こいつ見たことがない。
どこから来やがった?
グレーのしま猫!
俺の縄張りに来るんじゃね~‼︎

「ギャーーーーー!」
「ナーーーーーオッ!」
俺たちは揉み合いになって喧嘩した。
負けるもんか‼︎
俺は相手に噛みついて、相手も俺を引っ掻いた。

その騒動に気がついた母親が、
「コリャ~‼︎どこの猫だ‼︎」と大声を出して、ホウキで追っ払ってくれた。
やれやれ。
ちょっと血が出てしまった。

「お前が早くご飯食べんからだ!」
…俺まで叱られた。


気温が下がって来て、日が暮れるのも早くなり、夜はすごく寒くなった。
それでも俺は庭のテーブルの上で過ごした。
毛皮を着ているとは言え、やっぱり寒い。
俺はまぁるくなってジッとしていた。
すると可哀想に思ったのか、母親がテーブルの上に籠を載せて、毛布まで入れてくれた。
俺は早速座ってみた。

あったかぁ~い!
俺はぬくぬくしながら過ごす事ができた。

翌々日にはかまくらのような形の『猫千蔵』まで用意された。
わざわざ買ってきてくれたようだ。
中に入ると風を通さないから暖かい。
だけどみんなが見えなくなるからちょっと嫌いだ。

そんな時、ふと気がつくと、テーブルが少しサッシに近い。
こんなに近かったっけ?

次の日はもっと、その次の日はもっともっと近くなっていて、俺が入れるぐらいにサッシが開けてあった。
母親はその近くで横になって、俺に入ってこいと誘ってくる。

入ってもいいのかな…。

俺はしばし考えた。
メリットとデメリット。
でも目標は家猫!
いつまでも手をこまねいている場合じゃない。
…思い切って家に入ってみようか?
ダッと入って、ダダダッと出ればいいんだ!

頭でイメージしながらチャレンジしてみることにした!

行くぞ‼︎
ダッ‼︎

俺はテーブルからジャンプして、居間の中に着地成功!
でも母親が捕まえようとしたので、慌ててダダダッと外に出た。

ハァハァハァ…。
やれば出来るじゃんか。
ってか、出る必要なくね?
家の方がずっとあったかいのに。
俺ってバカ?

でも俺は汚れてる。
そこだよそこ‼︎

その数日後。
俺はまた家の中に入ろうと思った。
この間のように、ダッと入ってダダダッと出る!
よし!
これを繰り返していれば、そのうち自由に出入り出来るんじゃないか?

俺は思い切って居間に入った!
よし!成功‼︎

だが戻ろうとした瞬間、サッシがいきなり閉められた!
え⁉︎ 出れない⁉︎

「シャーーーーーーーッ‼︎」
俺は威嚇しながら後退り。
壁にドンッとお尻が当たった。

そこには妹が居て、頭から一気にネットを被されて、あっという間に体も突っ込まれてしまった!
「ニャニャ⁉︎ニャンだ⁉︎」
さらにそのままバスケットの中に入れられてロックまで!

「さぁこのまま病院行くぞ!」
妹が大きな声を出している。

病院⁉︎
誰が?
まさか‼︎
この俺⁈

俺は車に乗せられて、動物病院へ連れて行かれた。

車中の話を聞いていると、どうやら俺が家に入る入らないで躊躇している間に、妹たちは俺を捕まえて、病院で検査してもらおうと考えていたようだ。

「ニャンだ。そうならそうと教えてくれたらこんな苦労は…トホホ」
俺は籠の鳥ならぬ籠の猫。
そのまま診察室にイン‼︎

ほほぉ~?
ここが動物病院?
初めて来た。

俺はネットのまま、獣医さんにあちこち構われた。
「お利口さんだね~?」
獣医が感心している。
あったりまえよ!
俺はただの猫じゃないんだ。

耳の中、この間 野良猫と喧嘩した傷、背中、お腹など、あちこち診察された。
いきなり尻尾を掴まれたと思ったら、
『ブスッ』

「ンギャ⁉︎」
お尻の穴に体温計をぶち込まれた(泣)

「熱もないし、傷も大したことないですね。あとはお腹の中に虫がいる事があるので、そちらも検査しておきましょう!ちょっとごめんね」
先生はまた尻尾を掴んでお尻の穴に…

『ブスブスッ!』
「ンギャーーーーーーッ⁉︎」

便の検査だと言って、綿棒ぶち込まれた…(大泣き)
続けてノミダニ駆除だと薬を飲まされ、さらに体にも薬をつけられた。
「本当に野良猫にしてはお利口さんだ。大人しいね」

そりゃ先生。俺、出来た猫だから…トホホ…。

「検査の結果、やっぱりお腹に虫がいるので駆虫剤飲ませましょう。猫エイズはありませんでした」
猫エイズ⁉︎恐ろしい事言ってくれるぜ。
「グエッ!」
俺の口を無理矢理開けて、また薬を飲まされた。

こうして俺の一連の検査は終了。
人間の健診なみに思いっきり疲れた。

俺はネットからは出されたが、帰りもバスケットの中に閉じ込められて車に乗せられた。
妹が横にいて、病院でのことを 面白おかしく話すから、ちょっと黙らせてやろうと思って、バスケットの隙間から手を伸ばして引っ掻いてやった。

「ギャーーーーー!痛い!」

ヒヒヒヒ!
ザマァミロにゃ。

そんなことをしているうちに、車は実家に到着した。
しおりを挟む

処理中です...