追放された少年は『スキル共有スキル』で仲間と共に最強冒険者を目指す

ラナキア洞窟-SECRET BOSS-3

　極めて高い上回る再生能力を持ち、核コアである邪神の牙との分離も困難。となれば、

（大技で倒すしかない…）

　ルカはそう結論せざるを得なかった。スケルトンを倒した時と同じように、奥伝剣技クラスの大技をぶつけ、再生が不可能なほどのダメージを与えるより他に倒す方法はない。

（だけど…アレクシアさんはすでに、奥伝剣技を使用してしまっている）

　おそらく、対スケルトン戦で多量の練気プネウマを消費してしまっているはずだ。また『滴水穿石てきすいせんせき』を放つ事が出来たとして…あと一度か、二度か。

　もしその攻撃で仕留める事が出来なければ、ルカたちにはゲルトアルヴスを倒す方法がなくなってしまう。さらに練気プネウマを大量消費してしまえばアレクシアが動けなくなる可能性もある。そうなってしまえば、詰みだ。

（弱点を…何か弱点を見つけないと）

　今はまだ一か八かの賭けに出る状況ではない。何故ならば、こちらに決め手がないのと同じようにゲルトアルヴスもまた、ルカたちを倒す決定的な手段を持ち得ていないからだ。

　ゲルトアルヴスは現在、その手に剣を持っている。元々スケルトンが持っていた、祭祀用の剣。それを先ほどの攻防の最中に拾っていたのだ。だが、ゲルトアルヴスの剣技ではアレクシアはおろかジョゼフにも勝つことはできないだろう。その事が分かっているのか、ゲルトアルヴスも自分から動こうとはしない。

　アレクシアがルカの方にチラリと視線を向けた。指示をくれというアイコンタクト。

「ひとまず今は、力を温存しつつ戦ってください。ゲルトさんの弱点を見極めます」

「承知した」

　アレクシアが頷く。そしてゲルトアルヴスに向かって大きく踏み出そうとしたその時、

「おおおらああ！」

　威勢のいい掛け声とともに、ジョゼフが攻撃を仕掛けた。それに反応し、ゲルトアルヴスがジョゼフに対し身構える。だが、ほぼ同時にアレクシアが動き出していた。

（上手い…！）

　ジョゼフはわざと大きな声を上げながら攻撃する事によって、ゲルトアルヴスの注意を引き付けたのだ。そのおかげで、アレクシアは隙だらけになったゲルトアルヴスを攻撃する事ができる。アレクシアはまず、中伝剣技『穿突せんとつ』でゲルトアルヴスの肩を貫いた。続けて初伝剣技、『斜はす斬り落とし』を繰り出す。しかしこの一撃はゲルトアルヴスの腕によって受け止められた。だが、それは想定の範囲内だ。

　先ほどと同じく、『圧へし斬り』で腕を断てばいい。そう考え、剣に練気プネウマを込める。だが…ゲルトアルヴスの腕はびくともしない。先ほどは断つ事のできた腕に、今は傷一つつける事ができないのだ。

「そんな、まさか…」

　ルカが絶望の呟きを漏らした。その可能性について全く考えていなかったと言えば嘘になる。だが、例え考えていたとしてもそれが事実であるとは認めたくなかった。

（ゲルトさんの体は…再生すればするほど防御力が高くなる…！）

　肉体の強化は一度だけではなかったのだ。おそらく、再生能力が尽きるまで…ゲルトアルヴスの防御力は高くなっていく。

（底知れない再生能力に加えて、底知れない防御力の強化バフ…！こんな相手、どうやって勝てばいいんだ…）