追放された少年は『スキル共有スキル』で仲間と共に最強冒険者を目指す

散士

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特訓2

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「さあ、ゆくぞルカ君!」

「はい!」

 アレクシアが木剣をルカに振り下ろす。ルカもまた、手に持った木剣でアレクシアの剣を受け止めた。

「くっ…」

 ルカの手に衝撃が走る。アレクシアの剣は、ルカが知るどの剣よりも鋭く、それでいて重い。単純な腕力によって生み出された威力ではない。アレクシアが今まで磨き上げてきた技術の賜物だ。

 少年は、女剣士の攻撃を受けるので精一杯。反撃を行う隙もない。

(それなら…)

 アレクシアの攻撃を受け止めると同時に、全身のバネを使い押し出すように剣を突き出した。女剣士の持つ剣が弾かれる。その一瞬の隙を突き、アレクシアの左肩目掛け斬り下ろし…木剣がその体に触れる直前、ピタリと止めた。

「うん、攻防一体のいい動きだね。――この辺りで一旦休憩しようか」

「はい」

 ルカは額の汗を拭いながら頷いた。



 ルカがトーナメントへの参加を決めた翌日。ルカとアレクシアは、朝から稽古を続けていた。

 ――師匠を務めさせて欲しい。

 アレクシアのその申し出をルカが受けたのだ。彼にとって願ってもない話だった。

 元々、ルカはアレクシアに剣の指導を受けていた。しかしそれはあくまで冒険の合間に行われる僅かな時間に過ぎない。ルカもまたアレクシアに冒険の知識を教えていたから、ギブアンドテイクの関係ともいえた。だが、今は違う。

 アレクシアは『師匠』という言葉を使った。この言葉は、剣の世界においては決して軽いものではない。師匠は弟子を導く責任があるし、弟子もまた師匠に従う責務を背負う事になる。もしも弟子が不始末を犯せばそれは師匠の責任、とまで言われるのが剣の世界なのだ。

 そしてアレクシアは剣に生きる一族、ツヴァイク家の人間。師弟の契りを交わす事の重要性は誰よりも知っている。つまり、師匠になるというのは全身全霊を使ってルカに剣を指導するというアレクシアの決意の現れである。ルカもまた、それは承知している。

「今の立ち合いはいい動きだった。やはり君はセンスがあるね」

 木陰で休みつつアレクシアが言った。休憩中とはいえ、ただ体を休めるのではない。トーナメントまで後9日。時間を無駄にする事はできない。休憩というのは、実質的には剣の術理を教えるための講義である。

「ありがとうございます。ただ、僕にセンスがあるんじゃなくてアレクシアさんの教え方が分かりやすいからですよ」

「いや、お世辞ではなく…君は本当に筋がいい。初伝だというのが信じられないくらいだよ」

 ルカは、素直な性格と論理的な思考の持ち主だ。アレクシアの教えをすぐに理解し、それを実行に移す事が出来る。もし上手くいかなかった場合でも、何が駄目だったのかを分析する判断力と再度チャレンジする熱意を備えている。

 聡明さに素直さ、それに熱意。ルカは剣術を学ぶ上で必要な素質を備えていた。それ故に、アレクシアはふと疑問に思った。

(なぜ、これ程に才能のあるルカ君がパーティを追放されたのだろうか…)

 と。
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