139 / 1,156
特訓2
しおりを挟む
「さあ、ゆくぞルカ君!」
「はい!」
アレクシアが木剣をルカに振り下ろす。ルカもまた、手に持った木剣でアレクシアの剣を受け止めた。
「くっ…」
ルカの手に衝撃が走る。アレクシアの剣は、ルカが知るどの剣よりも鋭く、それでいて重い。単純な腕力によって生み出された威力ではない。アレクシアが今まで磨き上げてきた技術の賜物だ。
少年は、女剣士の攻撃を受けるので精一杯。反撃を行う隙もない。
(それなら…)
アレクシアの攻撃を受け止めると同時に、全身のバネを使い押し出すように剣を突き出した。女剣士の持つ剣が弾かれる。その一瞬の隙を突き、アレクシアの左肩目掛け斬り下ろし…木剣がその体に触れる直前、ピタリと止めた。
「うん、攻防一体のいい動きだね。――この辺りで一旦休憩しようか」
「はい」
ルカは額の汗を拭いながら頷いた。
◇
ルカがトーナメントへの参加を決めた翌日。ルカとアレクシアは、朝から稽古を続けていた。
――師匠を務めさせて欲しい。
アレクシアのその申し出をルカが受けたのだ。彼にとって願ってもない話だった。
元々、ルカはアレクシアに剣の指導を受けていた。しかしそれはあくまで冒険の合間に行われる僅かな時間に過ぎない。ルカもまたアレクシアに冒険の知識を教えていたから、ギブアンドテイクの関係ともいえた。だが、今は違う。
アレクシアは『師匠』という言葉を使った。この言葉は、剣の世界においては決して軽いものではない。師匠は弟子を導く責任があるし、弟子もまた師匠に従う責務を背負う事になる。もしも弟子が不始末を犯せばそれは師匠の責任、とまで言われるのが剣の世界なのだ。
そしてアレクシアは剣に生きる一族、ツヴァイク家の人間。師弟の契りを交わす事の重要性は誰よりも知っている。つまり、師匠になるというのは全身全霊を使ってルカに剣を指導するというアレクシアの決意の現れである。ルカもまた、それは承知している。
「今の立ち合いはいい動きだった。やはり君はセンスがあるね」
木陰で休みつつアレクシアが言った。休憩中とはいえ、ただ体を休めるのではない。トーナメントまで後9日。時間を無駄にする事はできない。休憩というのは、実質的には剣の術理を教えるための講義である。
「ありがとうございます。ただ、僕にセンスがあるんじゃなくてアレクシアさんの教え方が分かりやすいからですよ」
「いや、お世辞ではなく…君は本当に筋がいい。初伝だというのが信じられないくらいだよ」
ルカは、素直な性格と論理的な思考の持ち主だ。アレクシアの教えをすぐに理解し、それを実行に移す事が出来る。もし上手くいかなかった場合でも、何が駄目だったのかを分析する判断力と再度チャレンジする熱意を備えている。
聡明さに素直さ、それに熱意。ルカは剣術を学ぶ上で必要な素質を備えていた。それ故に、アレクシアはふと疑問に思った。
(なぜ、これ程に才能のあるルカ君がパーティを追放されたのだろうか…)
と。
「はい!」
アレクシアが木剣をルカに振り下ろす。ルカもまた、手に持った木剣でアレクシアの剣を受け止めた。
「くっ…」
ルカの手に衝撃が走る。アレクシアの剣は、ルカが知るどの剣よりも鋭く、それでいて重い。単純な腕力によって生み出された威力ではない。アレクシアが今まで磨き上げてきた技術の賜物だ。
少年は、女剣士の攻撃を受けるので精一杯。反撃を行う隙もない。
(それなら…)
アレクシアの攻撃を受け止めると同時に、全身のバネを使い押し出すように剣を突き出した。女剣士の持つ剣が弾かれる。その一瞬の隙を突き、アレクシアの左肩目掛け斬り下ろし…木剣がその体に触れる直前、ピタリと止めた。
「うん、攻防一体のいい動きだね。――この辺りで一旦休憩しようか」
「はい」
ルカは額の汗を拭いながら頷いた。
◇
ルカがトーナメントへの参加を決めた翌日。ルカとアレクシアは、朝から稽古を続けていた。
――師匠を務めさせて欲しい。
アレクシアのその申し出をルカが受けたのだ。彼にとって願ってもない話だった。
元々、ルカはアレクシアに剣の指導を受けていた。しかしそれはあくまで冒険の合間に行われる僅かな時間に過ぎない。ルカもまたアレクシアに冒険の知識を教えていたから、ギブアンドテイクの関係ともいえた。だが、今は違う。
アレクシアは『師匠』という言葉を使った。この言葉は、剣の世界においては決して軽いものではない。師匠は弟子を導く責任があるし、弟子もまた師匠に従う責務を背負う事になる。もしも弟子が不始末を犯せばそれは師匠の責任、とまで言われるのが剣の世界なのだ。
そしてアレクシアは剣に生きる一族、ツヴァイク家の人間。師弟の契りを交わす事の重要性は誰よりも知っている。つまり、師匠になるというのは全身全霊を使ってルカに剣を指導するというアレクシアの決意の現れである。ルカもまた、それは承知している。
「今の立ち合いはいい動きだった。やはり君はセンスがあるね」
木陰で休みつつアレクシアが言った。休憩中とはいえ、ただ体を休めるのではない。トーナメントまで後9日。時間を無駄にする事はできない。休憩というのは、実質的には剣の術理を教えるための講義である。
「ありがとうございます。ただ、僕にセンスがあるんじゃなくてアレクシアさんの教え方が分かりやすいからですよ」
「いや、お世辞ではなく…君は本当に筋がいい。初伝だというのが信じられないくらいだよ」
ルカは、素直な性格と論理的な思考の持ち主だ。アレクシアの教えをすぐに理解し、それを実行に移す事が出来る。もし上手くいかなかった場合でも、何が駄目だったのかを分析する判断力と再度チャレンジする熱意を備えている。
聡明さに素直さ、それに熱意。ルカは剣術を学ぶ上で必要な素質を備えていた。それ故に、アレクシアはふと疑問に思った。
(なぜ、これ程に才能のあるルカ君がパーティを追放されたのだろうか…)
と。
1
あなたにおすすめの小説
チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?
桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」
その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。
影響するステータスは『運』。
聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。
第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。
すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。
より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!
真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。
【簡単な流れ】
勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ
【原題】
『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
無能はいらないと追放された俺、配信始めました。神の使徒に覚醒し最強になったのでダンジョン配信で超人気配信者に!王女様も信者になってるようです
やのもと しん
ファンタジー
「カイリ、今日からもう来なくていいから」
ある日突然パーティーから追放された俺――カイリは途方に暮れていた。日本から異世界に転移させられて一年。追放された回数はもう五回になる。
あてもなく歩いていると、追放してきたパーティーのメンバーだった女の子、アリシアが付いて行きたいと申し出てきた。
元々パーティーに不満を持っていたアリシアと共に宿に泊まるも、積極的に誘惑してきて……
更に宿から出ると姿を隠した少女と出会い、その子も一緒に行動することに。元王女様で今は国に追われる身になった、ナナを助けようとカイリ達は追手から逃げる。
追いつめられたところでカイリの中にある「神の使徒」の力が覚醒――無能力から世界最強に!
「――わたし、あなたに運命を感じました!」
ナナが再び王女の座に返り咲くため、カイリは冒険者として名を上げる。「厄災」と呼ばれる魔物も、王国の兵士も、カイリを追放したパーティーも全員相手になりません
※他サイトでも投稿しています
S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました
白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。
そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。
王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。
しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。
突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。
スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。
王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。
そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。
Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。
スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが――
なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。
スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。
スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。
この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。
(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。
ヒツキノドカ
ファンタジー
誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。
そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。
しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。
身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。
そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。
姿は美しい白髪の少女に。
伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。
最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。
ーーーーーー
ーーー
閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります!
※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる