追放された少年は『スキル共有スキル』で仲間と共に最強冒険者を目指す

決勝当日

　その日、闘技場《コロッセオ》では楽隊の演奏、曲芸などの演目が朝から行われていた。しかし、それを見る観客たちはどこか浮き足立っている。それもそのはず、この演目は決勝戦が始まるまでの時間つぶし…前座に過ぎないからだ。

「おい、どっちが勝つと思うよ」

「決勝戦の話かい？それなら獣人の姉ちゃんじゃねえか」

「だよな。やっぱりシルヴィ・ローズが一段上だよなあ」

　そんな男たちの会話に、また別の男が加わる。

「でもルカって子供も捨てたもんじゃないぜ。何しろ格上相手に勝ち上がってきたんだ」

「まあな。あの坊主が勝つ所も見てみたい気もするが…しかし、さすがに実力差がなあ…」

「おい、観客の勝者予想率を聞いたか？」

　と、また別の男が加わった。

「シルヴィの勝利予想が97に対し、ルカ・ハークレイは3だとよ」

「ほらな。やっぱり優勝は厳しいぜ」

「だなあ…でも、なんかあのルカって坊主を見てると応援したくなってくるんだよな…」

「そう…だな。なんとなくお前の気持ちも分かるぜ」

　そんな他愛もない話を繰り返す男達から少し離れた場所。観客席の中段に3名の女性の姿があった。

　アレクシア、安鶴沙、レームである。

「い、いよいよ…始まりますね」

「ああ」

　緊張で震え声の安鶴沙に、アレクシアが頷く。

「今朝の特訓の成果が出るといいんですけど…」

「んん？お姉さん達、特訓なんてしてたのかい？」

　レームがアレクシアと安鶴沙の顔を見上げる。

「試合当日の朝に特訓って、あんまり良くないんじゃないかなぁあ。だって、疲れちゃうでしょ？」

「いえ、特訓とはいっても精神的な特訓なので肉体的な疲労は大丈夫なはずです！」

「んー？精神的…？」

　何が何やらよく分からない、といった様子で頭を傾げるレーム。そんな3名に、新たに一人の女性が加わった。

「よォ。今日も邪魔さしてもらおうか」

　そう言って、白髪の少女…ローエングリンが姿を現した。