追放された少年は『スキル共有スキル』で仲間と共に最強冒険者を目指す

一次試験〜来島安鶴沙2〜

「さて、それじゃあ方針としては…ゴーレムとやらを探しつつ食料確保って感じですかねぇ」

　安鶴沙は自らの腹部を撫でた。まだ空腹という訳ではないが、この島で10日生きるという事を考えれば食料確保は必要不可欠だ。

「って言っても、魔物モンスターを倒して食料にする、とかちょっと難度高いんですよねえ…もし倒せたとしても調理方法とか分かんないですし」

　現在、安鶴沙はその背に背嚢バックパックを背負っている。ナイフ、鍋など冒険者として生きていく上で最低限の装備は持っているが、かと言ってそれを有効利用できなければ意味がない。

「山菜とかキノコは食べれるものと毒があるものを見分ける自信がないですし…ここは果物でも探しますか」

　そんな事を呟きながら森の中を歩いていると、芳醇な香りが漂ってきた。バナナか、メロンか、それとも蜂蜜のような甘く芳しい香り。

「これは…っ！」

　香りに誘われフラフラと歩いて行ったその先には、一本の樹木。数本の枝が伸び、そこには1m程もある巨大な葉が茂っている。安鶴沙のいた世界ではあり得ない異様な大きさの葉さだ。しかし、安鶴沙の目を捉えたのはそこではない。彼女の瞳が吸い寄せられたのは枝に実っているリンゴほどの大きさの果実。形は洋梨のような瓶型。その実は赤く、いかにも食べ頃といった雰囲気だ。しかも都合のいい事に、ちょうど安鶴沙の手が届く位置にぶら下がっている。

「これは！いかにも美味しそうな果物じゃないですかぁ。えへへ、これは幸先いいですねぇ」

　と、果実に手を伸ばしもぎ取ろうとした瞬間。

「え…」

　まるで罠《トラップ》でも発動したかのように、木に茂っている巨大な葉が安鶴沙目掛けて襲いかかってきた。