追放された少年は『スキル共有スキル』で仲間と共に最強冒険者を目指す

最終決戦8

　自身の肉体の損傷を顧みない程の『雷神』の使用。まさしく自らの命を燃やし尽くすようなルカの攻撃を前に、メドレウトはあくまで冷静にルカを分析する。

（なぜ、このような馬鹿げた戦術を取りながら未だに体が崩壊しない？）

　すでにルカの筋肉は幾度も限界を超えている。筋肉と神経はズタズタに断裂し、すでに動けなくなっているはずだ。事実、ルカの周囲には断裂した筋肉から飛び散った血飛沫が舞っている。

「なるほど、考えてみれば単純な事…回復魔術か」

　メドレウトが見抜いた通り、ルカは自身の体に回復魔術を施していた。しかも、その回復魔術はメドレウトとの戦いの前に発動している。通常、回復魔術は発動後に効果を失う。だが、魔術増強マジック・ブーストで魔力を込め続ければ、魔力を込めている間は常に回復の効果が持続する。これは、かつてゲルトアルヴスとの戦いで検証済みだ。

　すなわち、ルカは『雷剣』で自身の体を傷付けながら、同時に回復魔術でその傷を修復する…という行為を繰り返していた。『雷剣』と『魔術増強マジック・ブースト』の両天質スキルを発動出来るルカだからこそ可能な芸当である。

「しかし…例え瞬時に回復しようとも、筋肉が断裂する痛みが消える訳ではあるまい」

　その通り…ルカは、常に断裂を続ける筋肉の痛みに襲われていた。0.1秒よりもさらに短い一瞬の間に、ルカの筋肉は裂け、それが回復するというループを繰り返している。全身の筋肉が引きちぎれる、まさしく拷問のような…いや、拷問でもあり得ないような痛みに耐え、ルカは連撃を繰り出していく。