【R18】鏡の聖女

里見知美

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赤月の加護と呪い

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「あっ……」

 ムスターファが珍しく声を上げた。上目遣いで顔を見れば、ぎゅっと目を瞑り我慢をしているようだ。

 もう、いきそうなの?

 手を添えて扱きあげるとはあ、と腹筋が震える。亀頭部を口に含み舌で尿道部分を刺激すればぐっと握る肩に力が入った。手の扱きと亀頭の刺激でムスターファがめちゃくちゃ感じている。

こんなことは初めてだった。なぜだ?よく戦いの後は気が立って興奮状態に陥るとは聞いたことがあるが感じやすくもなるのだろうか。面白くなって、私は片手を足の付け根に片手は肉棒を扱き、舌を使って荒々しく舐めた。

「み、ミミ……!」

 ムスターファは荒く息を吐き、私を引き剥がすと跳ねるように立ち上がり、私を床に押し倒した。形勢逆転である。

「ちょ、ムスターフ……ッ!」

 床に転がった私の両足を持ち上げるように体を差し込み股の間から顔を出す。そのまま荒々しく私の双方の丘を掴み乳首を口に含んだ。

「きゃっ、あぁっ!」

 今日はできないの知っているのに、どういうつもりだ?と思いつつ、体は反応してしまう。

 じゅっ、ジュルッと音を立てながら私の胸を舐め、乳首を吸い上げ噛み付いてくる。突然凶暴になった獣のようで私は驚いて萎縮する。

「ダメだ、満月みつづきは、我慢が、」

 え?蜜月?
 満つ月?

 満月!?今日は満月か!!狼男か!?

 私を見つめる銀の瞳に、赤が混じっているのに気がついた。頭の中でハムスターが大車輪を疾走している。初めて会った時もこんな瞳をしていたような気がする。でもそれ以来瞳は鉛色だったはず。

 なんで、赤が。血の匂いが。赤月はレドモンドの月で。満月は。

 カチカチと計算式が出来上がる。そこから可能性が呼び起こされた。

 一つ、ムスターファは赤月の加護のせいで、満月ではその力が最高潮になる。つまり我慢がきかない。
 一つ、血が滾り、攻撃的になりも興奮状態になると瞳に朱が入る。
 一つ、血の匂いがより興奮を呼び、私も生理で血の匂いがする。

「女は月に呼ばれると興奮しやすいと聞いたがミミは違うのか?」
「つ、月に呼ばれる?」
「今のミミの状態だ。その、月落つきおちの日」

 生理のことね。つきおち。月のものとはいうけど、月が堕ちる日か。すごい言い回しだわ。

「お前の匂いが強すぎて、酔いそうだ」
「に、臭う?臭うの!?」

 ヒエエッと思わず後ずさりたくなった。臭いと言われるのは嫌だ!気を付けていても、敏感な人にはわかってしまうのか。ムスターファはそう言いながら、私の体をやわやわと撫で回し、乳房を吸い上げてキスマークをつける。いつもよりも吸い付く力が強くて、痛いとすら感じる。本当に食べられてしまいそうな勢いだ。

「赤の満月は蜜月とも言われるほど、男の業が強くなる。だからここ数日、我慢が難しくて。普段は自己処理で済むんだが、ミミが近くにいると」

 自己処理。そうか、だから風呂に行くと。ここ数日疲れて見えたのはそのせいなのか?我慢してるから?知らずに煽ってしまった私が馬鹿でした。ごっめーん、気がつかなかったわぁ。じゃあお風呂場どうぞーーって………言えないよね。

「あの、あの細菌とか入るの怖いし、コンドームとかこっちないみたいだしあの、気持ち悪いでしょ、血塗れの中に入れるのなんて」
「浄化魔法があるから問題ない」
「ええっ!?」

 そう言って膝裏から手を差し込み私の片足を持ち上げると、足の指を口に含んだ。

「ちょっと、ムスターファッ!」

 ちゅば、ちゅばと一本ずつ口に含まれると、口内の熱が伝わって腰に直接電撃が走るようだ。

「あっ、やっ変態!足フェチ!」
「ふ、気持ちいいくせに」

 そう言って足首に歯を立てて、ふくらはぎを舐める口元には意地悪な笑みが浮かんでいる。反対側の手がゆるゆると下腹部を撫でて魔力が流されるのがわかった。

「ま、また性感帯探ったわね!」
「どうかな。そろそろ俺がミミの体を知り尽くしているとは思わないか?」

 スカートの中に手を入れて太ももを撫で回され下腹部が熱くなる。なんで反応するわけ、私のバカ!

「ミミの体は、どこもかしこも甘いから……舐めても舐めても飽き足らないくらいだ」
「や、やぁっ」

 気がつけば、ムスターファの瞳は赤く染まっていた。銀に差し込む赤ではなく、レドモンドのような瞳の色。うっそりと微笑む顔が、ムスターファのものではない気がして。ぎょっとして、ぞくりとした。

 その時感じたのは、強烈な嫌悪感。

「ダメ、ムスターファ。」

 私の声が強張った。びく、とムスターファが動きを止める。

「私に触らないで」

 ———お前の愛するこの女は、私が穢してやろう。

 前世でブルーノに体を暴かれ、今世ではレドモンドに?

 触るな。
 汚らわしい、男。
 触るな。シルヴァーナに触るな!

 パリッと音がして、ムスターファが瞬時に距離をとった。狼狽えて私を見つめる。

「ミミ?」
「触らないで!穢らわしい!!」

 私は嫌悪感に身を震わせて、両腕を抱きしめムスターファを退けた。結界が発動して、ムスターファが初めて弾かれた。愕然としたムスターファの顔が瞳に映って、ハッと気がついた。

 私は今、何て言った?
 シルヴァーナの感情が一瞬とはいえ私を動かした。

「ご、ごめん、ムスターファ!これは、私、じゃなくて」
「……いや。俺が悪い。すまなかった」

 ムスターファはそういうと部屋を出て行って、その夜から私の元に帰ってこなくなった。






「ミミ様~。最近元気ないですけど、大丈夫ですか?」

子供達との読書を終えたところで、カリンさんが声をかけてきた。

「え、そうかな。大丈夫だけど。」
「最近団長と会っていないんでしょう?さみしいって顔に書いてありますよ」
「え、うん、まあ。忙しそうだし。その、外の様子はどうなのかな?王宮の問題とか」

 なんとなく、触られたくなくて話を切り替えると、カリンさんはにこやかに状況を話し始めた。

「ええ、貴族の方は大体カタがついたんですよ。有力貴族なんて王都に残っていませんでしたからね。みんな自分の領地に戻っていて、それぞれ辺境から学びながら領地改革を進めていたし」
「へえ。それじゃ政治体制は」
「しばらくは自治体の寄せ集めになりそうです。それぞれの地区の教会を復興させて、神官を数名ずつ派遣しているんです。そこから月の神に祈ってもらって加護をいただこうとみんな頑張ってます。ここの子供達も残る83人ですが、大半は近く教会に受け入れ態勢ができるはずですから」
「え、そうなんだ。すごい早いですよね」
「ミミ様のおかげですよ~。あのスラム地区の浄化から、どんどん自然に浄化が広がっていっているんです。ひどいところは1課のみんなが手分けして浄化してますしね。」
「そう……。私の出る幕ないね」
「ミミ様はここでも忙しいですから。無理はしないでください。子供達もみんなミミ様大好きですし」

 それはそれで嬉しいけど、聖女じゃなくてもできるよね?私の中にあるシルヴァーナの力だったらもっと色々、浄化とかもできそうなんだけど。神殿から出してもらえないし。

「でも、もっと力になりたいんだけど……」
「今、前聖女様の回復を急いでるんですよ。この間、団長が王宮から助け出して特務の寮にいるんですよ、彼女。で、団長が直々見てますからね。多分すぐにも復帰できるはずです」
「ムスターファが、直々?」
「ええ、団長はどの分野にでも率いでていますからね。今まで以上に引っ張りだこなんです」

 それじゃ、私、魔石収拾の仕事があるので、とカリンさんはニコニコ笑って去って行った。

 そうか。私の力がなくても、大丈夫なんだ。
 せっかくいろいろな魔法も覚えたのに、使わずに終わるのかな。前の聖女様が復帰するなら、私は必要ないってことかな?ムスターファが直々治療してるんだし。ジャハールの魔力相応だって言ってたし、ムスターファの魔力とも近い魔力量ってことなのか。

 治療って、どんな治療なんだろう。だって、前聖女は王子を淫魔に変えたって言ってたよね。大丈夫なのかな?ムスターファまで虜になったり、なんてことはないか。治療してるんだもんね。

 生理はとっくに終わって、赤月の満月も終わってしまった。昨夜の赤月は半月になっていた。っていうことはどのくらいあっていないのかな?赤月は3ヶ月ほどあるから、半月ってことは1ヶ月半くらいってことかしら。

 満月だったのは2週間くらい前?そんなに会っていないのか。今まではどんなに忙しくても、夜は会いに来てくれてたのに。どうして?やっぱり、怒ってる?触らないで、なんて言ったんだから当然か。

「やー……もう。もやもやするなあ」

 漠然とした不安に包まれていると、外が騒がしくなってジャハールが走ってきた。

「ミミ様!お部屋に戻って!早く!」

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