俺は善人にはなれない

気衒い

文字の大きさ
238 / 416
第12章 vs聖義の剣

第238話 肉を切らせて骨を断つ

しおりを挟む
「ぐはっ!」

「くっ…………この狼、かなり強くない

か?」

「そりゃ、"神狼"って言われているく

らいだからな!………っと、そっちに行

ったぞ!」

リースがクロスと一戦交えている時、そ

の反対側ではもう1つの戦いが繰り広げ

られていた。その構図は黒衣を纏い、目

にも止まらぬ速さで移動するフェンリル

とそれに翻弄される白い修道服を着た集

団というものであった。

「ふんっ!」

「ぐっ!?」

フェンリルが口に咥えた名剣を振るう

度、まともに斬撃を受けた敵は倒れてい

く。その数は徐々に減っていき、20人

程いた集団もいまや1桁にまでなってい

た。しかし、本来であれば、もうとっく

に勝負がついていてもおかしくはないの

だが、未だ交戦中なのには訳があった。

それは集団の現在の状態にあった。

「むっ!随分と硬いな。我々以外でこん

なタフのある相手は久々だ」

「お褒めに預かり光栄だな、神狼」

「ん?誰だ?」

「俺はグスタフ。この部隊の副部隊長を

務めている。ところでお前は?」

「我の名はウールヴ。クラン"黒天の星

"の従魔部隊に所属している…………な

るほど。確かにこの者達の中で一番威圧

感があるな。で、そんな者が急に出てき

て、どうしたんだ?」

「いや、なに…………俺と一戦交えても

らおうかと思ってな」

「だとしたら、最初から出てくれば良か

ったではないか」

「そんな危険なマネはせんよ。最初は部

下達を使っての様子見が常識だ。どれだ

けの強さを秘めているか分からないから

な」

「貴様は部下を何だと思っている」

「ふんっ!こいつらはクロスさんや俺の

言うことなら、喜んで何でも聞くさ」

「随分と都合のいい頭をしているんだ

な」

「魔物に説教される筋合いはない。って

ことで早速…………………逝けや」

「ぐっ!こ、これは」

グスタフはウールヴに負けず劣らずの速

度で移動して、距離を詰めると持ってい

る長剣を思い切り叩きつけた。これに対

してウールヴは即座に反応し、4本の足

に踏ん張りをきかせて、自身の愛剣で以

って、受け止めることにした。だが、そ

の際、あまりに敵の膂力が想定を超えて

いた為、ウールヴの足が置かれた地面は

陥没しだし、一時的に距離を取ることを

余儀なくされた。

「くっ、これが魔人の力か」

「おっ、よく知ってるな………………にし

てもお前、大したもんだぜ。俺の一撃を

こうまで耐えるとは」

とはいっても簡単に逃してくれる訳もな

く、結局はグスタフの攻撃をその場で耐

え続けるしかない。その後も………………

「"滅狼斬"」

「ぬおっ!?」

「"滅狼斬"」

「ぐっ!?」

「"滅狼斬"」

「しつこい!」

グスタフの執拗なまでの剣撃がウールヴ

に襲い掛かり、ジワジワと追い詰められ

ていく。ところが、ウールヴはただやら

れていたのではなく、ある瞬間を今か今

かと待っていたのだ。そして、その時は

突然訪れた。

「"滅狼………」

「おっ、来たぞ!」

グスタフが何度目か分からない攻撃の為

に振りかぶっている最中、ウールヴはそ

う叫んだ。すると、どうか。ウールヴの

身体が銀色に輝き出し、さらには大量の

魔力が迸っていく。と同時にウールヴ側

からはグスタフの動きがスローモーショ

ンのように映り、次の攻撃も余裕を持っ

て躱せるようになった。そして、そこか

らの動きはとても早かった。

「"神狼斬"」

「がはっ!?な、何だ!?」

まず、猛スピードでグスタフの後ろへと

回り込んだウールヴは背中を斜めに斬り

つけた。グスタフからしたら、いきなり

目の前にいた敵が消え、気が付いたら背

中を斬られていたという状況だ。混乱と

激痛が同時に襲い掛かり、先程とは立場

が逆転してしまうのも致し方がなかっ

た。

「"神狼斬"」

「ぐわあっ!?」

「"神狼斬"」

「ごぼっ!?」

「"神狼斬"」

「し、しつこい」

次にさっきやられたことの仕返しとばか

りに同じ攻撃を執拗な程、繰り返す。相

手の耐久力が高いのも相まって、致命傷

までは至らないが徐々に体力は削られて

いく。

「も、もうやめでぐれ……………」

「安心しろ。この一撃でもう終わる」

「そ、それって…………」

「何の終わりかは言わないがな」









――――――――――――――――――








「無事だった?」

リースは自身の戦いが終わるとウールヴ

の方へ急いで駆けつけた。ちなみにグス

タフ以外に残っていた敵の残党はリース

が以前テイムしたスライムによって処理

されている。

「はい。"肉切骨断にくたち"が

ギリギリ間に合いました」

「あんな危険な賭けに出なくても」

「いいえ。戦闘には常に何が起こるか分

かりません。最悪を想定して動かなくて

は」

「確かにね……………それにしても魔人っ

て厄介だったね」

「ええ。皆さん、無事であればいいでし

ょうけど……………って、そういえば!」

ウールヴはあることを思い出し、慌て

て、少し離れた木陰へと向かった。そこ

にいたのは………………

「ジェイド殿!しっかりしてくれ!ジェ

イド殿!」

木にもたれかかりながら、目を閉じてい

る門番ジェイドだった。彼はリース達が

駆けつける前、敵に相当な深手を負わさ

れていたのだ。

「ジェイド殿!」

「ウールヴ……………本当はもう分かって

るんだよね?」

「いいえ!何のことか分かりかねます!

それよりも隊長!は、早く彼の回復をし

ないと!」

「ウールヴ……………」

「な、何を突っ立っているんですか!1

分1秒だって惜しいはずです!さぁ、早

く…………」

「もう遅いんだよ」

「っ!?な、何を」

「彼はもう……………亡くなっているん

だ」

「そ、そんなはずはない!隊長はいつも

言っていたじゃないですか!仲間達はも

ちろん、傘下も縄張りの者も守りたいっ

て」

「気持ちはそうだよ。でも、現実は非情

だ。努力はするが、できないことだって

ある」

「で、でも"|天使の蘇生《エクスト

ラ・リバース》"は?あれは究極の回復

魔法で亡くなった者も生き返らせること

ができると……………」

「そんなのは御伽噺だ。大切な人を亡く

した人達がそうあって欲しいと抱いた願

望そのもの。亡くなった人を生き返らせ

るなんてのは誰であったってできること

じゃない。むしろ、|できてはいけないん

だ《・・・・・・・・・・》。もし、そ

んなことができたとしても生き返った人

は本当にその人自身ではないかもしれな

い。例えば、性格や考え方、行動が以前

とは異なっているとか」

「………………」

「とりあえず、このことはローズに伝え

よう。全ての戦いが終わった後でね」

「………………我々が駆けつけた時、既に

瀕死の中、ジェイド殿は我に伝言を託し

ました。内容は………………"里のみんな

やローズ、今までありがとう。幸せだっ

た。それからシンヤ達、みんなを守って

くれて、ありがとう。俺はもうすぐ遠く

へ行くが、みんなは元気で幸せに暮らし

てくれ"と。本当はもっと色々なことを

言いたかったはずですが、命の灯火があ

と僅かだったこと、それと我が戦闘に集

中できるように配慮して、短い伝言とな

ってしまったかと」

「そうか」

「我は言ったんです!"最期のような台

詞を言わないで下さい!あなたは必ず助

け出します!"…………って。我はロー

ズ様にどの面下げて、伝えれば」

「ウールヴは最善を尽くした。君に全責

任はないよ。これはリーダーである僕の

責任だ……………何が"縄張りの人達を見

捨てるようなことはしないから"だよ。

僕の方こそ、何様だってんだ」

リースは思わず、ウールヴに背を向けて

ポツリと呟いた。あまり大きな声ではな

かったが、不思議とウールヴの耳には届

いた。それから、彼女が肩を震わせてい

ることに気が付いた。

「…………とりあえず、今はシードさん

の手当てをする。それが終わったら、他

の仲間達への加勢に行こう。これ以上、

こんなことを繰り返させてはならない」

「はい!」

5分程経って、振り返ったリースの目は

真っ赤に腫れ上がり、目尻から頬にかけ

て、透明なラインができていた。しか

し、その顔は何かを覚悟した者のそれで

あり、戦士としてはこれ以上ない程、立

派なものだった。






――――――――――――――――――――

ウールヴ

性別:雌 種族:フェンリル(魔物) 

年齢:23歳

Lv 40

HP 4000/4000

MP 4000/4000

ATK 4000

DEF 4000

AGI 4000

INT 4000

LUK 4000

固有スキル

咆哮・威嚇・生存本能・肉切骨断・魔の

境地・守護神・叡智・サイボーグ・炎熱

操作・戦士の誓い・透過・明鏡止

水・???

武技スキル

刀剣術:Lv.MAX

体術 :Lv.MAX

魔法

全属性魔法

装備

黒衣一式(神級)

輝剣レージング(特級)

称号

狼神の加護・陸の王者・忠誠を誓う者・

傅く者・従者の心得・武神・魔神・魔物

キラー・盗賊キラー

――――――――――――――――――――

肉切骨断

発動後、10分間は全ステータスが7割

程になり、10分が経過すると全ステー

タスが元の2倍になる

――――――――――――――――――――
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

最弱スキルも9999個集まれば最強だよね(完結)

排他的経済水域
ファンタジー
12歳の誕生日 冒険者になる事が憧れのケインは、教会にて スキル適性値とオリジナルスキルが告げられる 強いスキルを望むケインであったが、 スキル適性値はG オリジナルスキルも『スキル重複』というよくわからない物 友人からも家族からも馬鹿にされ、 尚最強の冒険者になる事をあきらめないケイン そんなある日、 『スキル重複』の本来の効果を知る事となる。 その効果とは、 同じスキルを2つ以上持つ事ができ、 同系統の効果のスキルは効果が重複するという 恐ろしい物であった。 このスキルをもって、ケインの下剋上は今始まる。      HOTランキング 1位!(2023年2月21日) ファンタジー24hポイントランキング 3位!(2023年2月21日)

モブ高校生と愉快なカード達〜主人公は無自覚脱モブ&チート持ちだった!カードから美少女を召喚します!強いカード程1癖2癖もあり一筋縄ではない〜

KeyBow
ファンタジー
 1999年世界各地に隕石が落ち、その数年後に隕石が落ちた場所がラビリンス(迷宮)となり魔物が町に湧き出した。  各国の軍隊、日本も自衛隊によりラビリンスより外に出た魔物を駆逐した。  ラビリンスの中で魔物を倒すと稀にその個体の姿が写ったカードが落ちた。  その後、そのカードに血を掛けるとその魔物が召喚され使役できる事が判明した。  彼らは通称カーヴァント。  カーヴァントを使役する者は探索者と呼ばれた。  カーヴァントには1から10までのランクがあり、1は最弱、6で強者、7や8は最大戦力で鬼神とも呼ばれる強さだ。  しかし9と10は報告された事がない伝説級だ。  また、カードのランクはそのカードにいるカーヴァントを召喚するのに必要なコストに比例する。  探索者は各自そのラビリンスが持っているカーヴァントの召喚コスト内分しか召喚出来ない。  つまり沢山のカーヴァントを召喚したくてもコスト制限があり、強力なカーヴァントはコストが高い為に少数精鋭となる。  数を選ぶか質を選ぶかになるのだ。  月日が流れ、最初にラビリンスに入った者達の子供達が高校生〜大学生に。  彼らは二世と呼ばれ、例外なく特別な力を持っていた。  そんな中、ラビリンスに入った自衛隊員の息子である斗枡も高校生になり探索者となる。  勿論二世だ。  斗枡が持っている最大の能力はカード合成。  それは例えばゴブリンを10体合成すると10体分の力になるもカードのランクとコストは共に変わらない。  彼はその程度の認識だった。  実際は合成結果は最大でランク10の強さになるのだ。  単純な話ではないが、経験を積むとそのカーヴァントはより強力になるが、特筆すべきは合成元の生き残るカーヴァントのコストがそのままになる事だ。  つまりランク1(コスト1)の最弱扱いにも関わらず、実は伝説級であるランク10の強力な実力を持つカーヴァントを作れるチートだった。  また、探索者ギルドよりアドバイザーとして姉のような女性があてがわれる。  斗枡は平凡な容姿の為に己をモブだと思うも、周りはそうは見ず、クラスの底辺だと思っていたらトップとして周りを巻き込む事になる?  女子が自然と彼の取り巻きに!  彼はモブとしてモブではない高校生として生活を始める所から物語はスタートする。

勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。 魔法が使えるようになった人類。 侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。 カクヨム公開中。

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話

TB
ファンタジー
岩崎理(いわさきおさむ)40歳バツ2派遣社員。とっても巻き込まれ体質な主人公のチーレムストーリーです。

処理中です...