火と風。

うー

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2.噂をよんだ演習

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「そんじゃー、学年でのトーナメント演習頑張れよ~」



担任のゆるい応援の声を聞きながらトーナメント表を確認する。うむ、なるほど。


「水の人と当たりすぎではありませんかね」


私は、火の属性。相性の悪い水属性の魔法使いさんとの演習がほとんど、という事態を把握。そして落ち込む。


「朝ごはんあんまり食べられなかったから、力が出ん…」


ちょっぴし寝坊した今朝。リビングに行くと案の定あいつがいた。それは無視して準備を急いで。寝ぐせも直さないとだし、お気に入りのタオルも探さないとだし、あたふたしていたら朝ごはんを少ししか食べられなかったのだ。あいつはガッツリ食べていた。何故だお前、ここは私の家だ。私より食べるな。というか、朝から来るな。


「なー、ディー」

「なに」

「お前、力足りんの?倒れんなよ?」

「…」


ガッツリ食べていたあなたが恨めしい、という気持ちを微塵も隠さずにキッと睨みつける。飄々としている姿が余計腹が立つ。それもこれも空腹なのがいけない。こいつに当たってもしょうがない。大人な私は一応会話をしてあげる。大人だからな。


「……まぁ、一対一じゃないし大丈夫だよ」

「あー、まぁ」


ふと、琥珀色の目がこちらを覗く。

「なに?」

「んー」


ぐいっと近づく距離。
光の加減で金色にキラキラする瞳が目に入る。それに濃紺の短めの髪。なんでか、落ち着くんだよな、こいつの配色。
あ、なんか天体観測してる気持ちになるからだな、きっと。髪が夜空で、瞳が星。納得。幼馴染17年目にしての発見。

それにしても、この香りが届く距離。動揺はしない。こいつとの距離感なんてこんな感じである。ふん…こいつ無駄にいい匂い。むかつく。

じっと見つめてくるキラキラの瞳。なんでこんなに見つめてくるんだ?
それに負けぬよう見つめ返す。
すると、猫のようにしなやかに、するりと耳元に近づいてきた。


「俺も、いるしな」

「…」


囁かれた言葉を理解するよりも、おい、その甘ったるい声はどこから出てた。ちょっと解剖させろ。鳥肌立ったわ。

というか、なんだその、俺が助けるよ発言。悔しい気持ちがふつふつと…。…負けてられない。そっちがその気ならこっちだって。
「クールな外見と態度に似合わず負けず嫌いね」と親友の悪女…性格のよろしい美女によく言われる。なるほど。私はクールに思われているらしい。とその時知った。負けず嫌い、というか、こいつに負かされたままなのがムカつくだけだ。…世間ではこの気持ちを負けず嫌いというのかもしれない。よし、認めた、私、負けず嫌いです。

すぐ近くにある胸元部分の服をぐいっと引き寄せ、私も負けじと微笑む。


「そうね、サンがいるだけで心強いわ」


幼少期にからかいも含めて呼んでいたアレクサンダーの愛称を使いながら、全然、これっぽちも、いやミジンコほども思っていないことを言う。嘘ではない。思っていない。…たぶん。

さぁーっと風が吹く。あぁ、神様ナイス援助。風属性のこいつにぴったりな仕返しを思いついて、自然と笑みが浮かぶ。


「あぁ。良い、風ね」


少し離れて瞳を見つめる。風属性のこいつに、挑発をこめてつぶやく。

ふふん。


「じゃ、また」


少しぽかんとしている顔を、ざまぁ、と思いつつ、私はトーナメントが行われる会場へと足を運ぶ。
っとその前にトイレ行こうっと。生理現象は我慢できません。
















「っ(ぐおぉぉお!!!)」

ちょっと先輩!何をしてんの公衆の面前で!しかもアレクサンダー先輩のあのふやけそうな顔!何をした!何を言ったんですか!?先輩!!
自覚ないけど、クール美人さんなんですから、そんな女神みたいに微笑まないでくださいよぉ!周りもノックダウン寸前、いや確実に、されている。
紅の長い髪を風になびかせ、微笑む姿はまるで女神。やばいな。先輩、美しい。いつものクールさがギャップ作りに拍車をかけましたか。ふぁぁああ!アレクサンダー先輩、顔、赤い。…ふぁあああ!何やったの先輩!
それにしても、ぐふふふ。これは、良いもの見れましたね。あとでエラ先輩に報告しないと。ふふふ。












「アレックス」

「…」

「ねぇ、アレックス?」

「…」

「…ディアナ見たかしら?」

「っ!」

「あ、やっと反応したわね。どうしたの?あの子、また無自覚にあなたを虜にでもしたかしら?…あ、ごめんなさいねぇ、もう、すっかり、あの子の、虜、だったわねぇ」

「ぅ……ディーなら会場に行った」

「そう。それで?」

「…」

「なにがあったの?聞かせてくれるわよね?」

「…じゃあ、言わせてもらう」


一旦俯き、心を落ち着かせる。深呼吸もしておこう。

「…エラ、あいつ至近距離で微笑みやがった。最高の言葉と共に」

「あらあら。なんて?」

「サンがいるだけで心強いわ。あぁいい風ね。じゃ、また。…って感じ」


真似して言葉を紡ぐ。ついでに微笑みも添えて。


「あらあら、それはまた。ふふふふふ、なるほど。それであほ面でぽかーんとしていたのね」

「っサンって呼ばれただけで!動悸が!やばいのにっ…微笑みと!!〔風〕をほめる言葉…挙句の果てに、髪が靡いて届くあいつの香りが…ぐっ、俺、頑張ったと思うんだ。うん。もう少しで抱きしめてキスするところだった」

「ふふふ、本音ダダ漏れね」

「お前に隠せないことはもう、身をもって体験済みだ」

「あらあら、そうね。良い判断よ」

「だろ?」

「まぁ、その前に、あの子をイラつかせて悔しさを生み出す言動をあなたがしたからじゃないかしら」

「…いつから見てた」

「さぁ?」

「…いや、やる気出たわ。困ってなくても助けることにした」

「いいんじゃない?じゃあ、ディアナの事よろしくね」

「ははっ言われなくてもそのつもり」



















「やーっぱ、俺しかいないでしょう?お前の力を支えるのは。ん?」

甘い言葉と、隠し切れない愛おしさをこめて。君に微笑む。

いや違うな。



頼れるのは俺しかいないだろ、ってゆー刷り込みと、ざまぁ、という気持ちを込めて。愛しい君に。





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