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第一章 運命の出会い
弱小女パーティにせがまれる
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ラミィ、ハンナ、シルフィの泊まっている宿の部屋は狭かった。
少しベッドの大きい一人部屋を三人で借りて住んでいるようだ。
綺麗に清掃され、部屋には甘い香りが漂っているが、ぜいたくをしている様子はない。
ヤマトはベッドに座らされ、目の前を三人の美少女に囲まれていた。
「ねぇねぇ、ヤマトく~ん、私たちのパーティ『トリニティスイーツ』に入ってよぉ」
「ぜひともお願いしたい。報酬の取り分はヤマトの好きにしていいから」
「お、お願いします! ヤマトさん!」
三人とも必死だった。
しかし「報酬の取り分を好きにできる」というのは、大胆すぎはしないだろうか。
必死なのは分かるが、それが先ほどのオークのような高利貸しにつけ込まれる隙になる。
ヤマトは彼女たちの行く末が少し不安になった。
とはいっても、そもそもヤマトにハンターは向いていない。
「申し訳ないけど、僕には魔物と戦うだけの力はないし、もうハンターをやるつもりもないよ」
「そ、そんなぁ……」
ハンナが目を潤ませ、ヤマトは「ぅっ……」と頬を引きつらせた。
女の子の涙には弱い。
そのせいで、スノウの無駄な買い物を許してしまっていたぐらいだ。
だがリーダーのラミィは退かない。
「分かったよ。パーティに入らなくてもいい。それでもせめて、ソウルヒートにいた経験から、私たちのパーティになにが足りないのか、どうすれば改善できるのか、アドバイスをもらえないかな? もちろん、パーティに加わらずクエストに行かなくても、稼いだ金はヤマトの好きなように使って構わないから」
「どうしてそこまで……」
「私たちは誓ったんだ。一流のハンターになって、自分の価値を認められるようなるんだって」
「自分の価値?」
「ええ、私たちは元々、弱者として強者に虐げられて来たのよ。私は元騎士だけど、男たちに利用され、泣き寝入りするしかないところをなんとか抜け出して来たんだ」
「にゃはは……私、実は奴隷だったんだよねぇ。それで逃げ出してきたの」
「わ、私は……この褐色の肌のせいで、エルフの仲間たちから嫌われて……」
三人が苦しそうに自分たちの事情を話す。
ラミィは性別のせいで差別され、ハンナは人としての尊厳すら与えられない奴隷の日々を抜け出し、シルフィは容姿によって同族から忌避されたのだという。
だから彼女たちは、自らの力で這い上がり、己の価値を認めさせようというのだ。
そんな願いに、ヤマトは強く共感した。
「そうだったのか……」
「別に、君の同情を得るために話したわけじゃないよ。今のことは忘れて、私たちの仲間になることを検討してほしいんだ」
「分かった。さっき言ってくれた条件は僕からすれば十分魅力的だよ。でもそこまでの条件を与えてくれるなんて、君たちは大丈夫なの? 君たちがせっかく稼いだお金を僕が浪費するかもしれないのに」
「私たちには、こんなことしかできませんから」
シルフィが申し訳なさそうに微笑んで言う。
そんな表情を見て、ヤマトは拳を強く握った。
彼女たちを放っておけば、また借金に手を出しかねない。
それどころか、悪質な商人に利用され、もう二度とハンターとして這い上がることもできなくなるかもしれない。
だから、そうはならないように、投資家として応援したいと思った。
「クエェェェ」
ピー助も肩の上で鳴いて、賛成の意思を伝えてくる。
「分かった、君たちの仲間になるよ。ただし、僕はパーティメンバーとしてクエストには同行しない。資金管理とちょっとしたアドバイスをするだけだ。それでもいいかな?」
「本当かい!? それで十分だよ! 本当にありがとう!」
「やったぁーっ!」
「ありがとうございます! これからよろしくお願いしますね、ヤマトさんっ」
三人が深く頭を下げ、ヤマトは結局断り切れなかったとため息を吐く。
しかし不思議と後悔はない。
そして、弱小女パーティ『トリニティスイーツ』を、誰もが認めるような最強パーティへ導くと誓うのだった。
もう二度と彼女たちが泣かなくてすむように。
少しベッドの大きい一人部屋を三人で借りて住んでいるようだ。
綺麗に清掃され、部屋には甘い香りが漂っているが、ぜいたくをしている様子はない。
ヤマトはベッドに座らされ、目の前を三人の美少女に囲まれていた。
「ねぇねぇ、ヤマトく~ん、私たちのパーティ『トリニティスイーツ』に入ってよぉ」
「ぜひともお願いしたい。報酬の取り分はヤマトの好きにしていいから」
「お、お願いします! ヤマトさん!」
三人とも必死だった。
しかし「報酬の取り分を好きにできる」というのは、大胆すぎはしないだろうか。
必死なのは分かるが、それが先ほどのオークのような高利貸しにつけ込まれる隙になる。
ヤマトは彼女たちの行く末が少し不安になった。
とはいっても、そもそもヤマトにハンターは向いていない。
「申し訳ないけど、僕には魔物と戦うだけの力はないし、もうハンターをやるつもりもないよ」
「そ、そんなぁ……」
ハンナが目を潤ませ、ヤマトは「ぅっ……」と頬を引きつらせた。
女の子の涙には弱い。
そのせいで、スノウの無駄な買い物を許してしまっていたぐらいだ。
だがリーダーのラミィは退かない。
「分かったよ。パーティに入らなくてもいい。それでもせめて、ソウルヒートにいた経験から、私たちのパーティになにが足りないのか、どうすれば改善できるのか、アドバイスをもらえないかな? もちろん、パーティに加わらずクエストに行かなくても、稼いだ金はヤマトの好きなように使って構わないから」
「どうしてそこまで……」
「私たちは誓ったんだ。一流のハンターになって、自分の価値を認められるようなるんだって」
「自分の価値?」
「ええ、私たちは元々、弱者として強者に虐げられて来たのよ。私は元騎士だけど、男たちに利用され、泣き寝入りするしかないところをなんとか抜け出して来たんだ」
「にゃはは……私、実は奴隷だったんだよねぇ。それで逃げ出してきたの」
「わ、私は……この褐色の肌のせいで、エルフの仲間たちから嫌われて……」
三人が苦しそうに自分たちの事情を話す。
ラミィは性別のせいで差別され、ハンナは人としての尊厳すら与えられない奴隷の日々を抜け出し、シルフィは容姿によって同族から忌避されたのだという。
だから彼女たちは、自らの力で這い上がり、己の価値を認めさせようというのだ。
そんな願いに、ヤマトは強く共感した。
「そうだったのか……」
「別に、君の同情を得るために話したわけじゃないよ。今のことは忘れて、私たちの仲間になることを検討してほしいんだ」
「分かった。さっき言ってくれた条件は僕からすれば十分魅力的だよ。でもそこまでの条件を与えてくれるなんて、君たちは大丈夫なの? 君たちがせっかく稼いだお金を僕が浪費するかもしれないのに」
「私たちには、こんなことしかできませんから」
シルフィが申し訳なさそうに微笑んで言う。
そんな表情を見て、ヤマトは拳を強く握った。
彼女たちを放っておけば、また借金に手を出しかねない。
それどころか、悪質な商人に利用され、もう二度とハンターとして這い上がることもできなくなるかもしれない。
だから、そうはならないように、投資家として応援したいと思った。
「クエェェェ」
ピー助も肩の上で鳴いて、賛成の意思を伝えてくる。
「分かった、君たちの仲間になるよ。ただし、僕はパーティメンバーとしてクエストには同行しない。資金管理とちょっとしたアドバイスをするだけだ。それでもいいかな?」
「本当かい!? それで十分だよ! 本当にありがとう!」
「やったぁーっ!」
「ありがとうございます! これからよろしくお願いしますね、ヤマトさんっ」
三人が深く頭を下げ、ヤマトは結局断り切れなかったとため息を吐く。
しかし不思議と後悔はない。
そして、弱小女パーティ『トリニティスイーツ』を、誰もが認めるような最強パーティへ導くと誓うのだった。
もう二度と彼女たちが泣かなくてすむように。
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