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最終章 投資家の戦い
隠し玉
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――シュッ!
「っ! ヤマトさん!」
そのとき、ヤマトのななめ後ろに立つ木の影から、矢が放たれた。
一番早く気付いたシルフィが叫ぶも既に遅い。
それはまっすぐにヤマトの背中へと迫り――
「――させない!」
アヤが素早く間に入り、小太刀を振るい矢を弾く。
そして間髪入れず、矢の飛んできたほうへナイフを投げた。
「っ!」
すぐに木の影から悲鳴が聞こえ、刺客が姿を現した。
「ヤマト、よくも……」
それは憎悪に顔を歪めたスノウだった。
ナイフの刺さった右肩からは血が流れ、左手で押さえている。
右手に持つ弓はひと目で高質なものと分かり、それで狙いが正確だったのだと納得できた。
最初からそこに潜んでいたことを考えると、交渉の結果がどうなろうとヤマトを殺すつもりだったということか。
どこまでも救えない。
しかしドランは、クククと急に笑い出した。
「なにがおかしい!?」
「これは決定的だなぁ。スノウは、屋敷に不法侵入した君たちに襲われ負傷した。それを騎士へ通報すれば、私たちの勝ちだ」
「この期に及んで、まだそんなことを」
「バカだね。手段なんて選んでいるから、足元をすくわれるんだよ」
ドランは勝ち誇ったように笑う。
彼の狙いは最初からこれだったのかもしれない。
誰かが傷つけられれば、ヤマトたちから襲われたのだと言って、追いつめるつもりだったのだろう。
そうすれば、トリニティスイーツが本当に冤罪なのか疑わしくなり、ギガスもまだ言い訳ができるかもしれない。
だがそれを許すヤマトではなかった。
彼はあきれたようにため息を吐いて仲間の名を呼ぶ。
「……ラミィ」
「ようやく出番か」
ヤマトの背後にいた人物がローブを脱ぎ捨てると、白銀の甲冑を着た女騎士が現れた。
トリニティスイーツのリーダーであり、今は騎士のラミィだ。
彼女の姿を見て、シルフィは目を見開き歓喜の声を上げた。
「ラミィさん!」
「……なに? 騎士だと!?」
「お久しぶりですね、ドラン殿。以前会ったときはハンターでしたが、今は騎士団に所属しているんですよ」
ラミィが勝ち誇ったように告げると、ドランの頬が引きつる。
こんなこともあろうかとヤマトが協力を依頼していたのだ。
ヤマト以外をローブで隠していたのは、ラミィの正体がバレないためのカモフラージュ。
彼女はドランをまっすぐに見据え、堂々と告げる。
「騎士団に通報するという話でしたけど、必要ありませんよ。ずっと騎士の私が見ていたんですから。スノウからの正当防衛ということでヤマトたちに非はありません。そもそも、不法侵入もしていないですし」
「やってくれるな。だが、それでも多勢に無勢だ。そこの女騎士ごと消してしまえばなにも問題はない。こちらの有利は変わらないぞ!」
「――ねぇ、聞きたいことがあるんだけど」
緊迫の状況下で口を挟んだのは、ハンナだった。
声には感情がこもっておらず、フードをかぶっているため表情は見えない。
「ハンナ? なにを……」
ヤマトが戸惑いの声を上げるが、彼女は反応せず、ドランを見据えゆっくり歩き出した。
「っ! ヤマトさん!」
そのとき、ヤマトのななめ後ろに立つ木の影から、矢が放たれた。
一番早く気付いたシルフィが叫ぶも既に遅い。
それはまっすぐにヤマトの背中へと迫り――
「――させない!」
アヤが素早く間に入り、小太刀を振るい矢を弾く。
そして間髪入れず、矢の飛んできたほうへナイフを投げた。
「っ!」
すぐに木の影から悲鳴が聞こえ、刺客が姿を現した。
「ヤマト、よくも……」
それは憎悪に顔を歪めたスノウだった。
ナイフの刺さった右肩からは血が流れ、左手で押さえている。
右手に持つ弓はひと目で高質なものと分かり、それで狙いが正確だったのだと納得できた。
最初からそこに潜んでいたことを考えると、交渉の結果がどうなろうとヤマトを殺すつもりだったということか。
どこまでも救えない。
しかしドランは、クククと急に笑い出した。
「なにがおかしい!?」
「これは決定的だなぁ。スノウは、屋敷に不法侵入した君たちに襲われ負傷した。それを騎士へ通報すれば、私たちの勝ちだ」
「この期に及んで、まだそんなことを」
「バカだね。手段なんて選んでいるから、足元をすくわれるんだよ」
ドランは勝ち誇ったように笑う。
彼の狙いは最初からこれだったのかもしれない。
誰かが傷つけられれば、ヤマトたちから襲われたのだと言って、追いつめるつもりだったのだろう。
そうすれば、トリニティスイーツが本当に冤罪なのか疑わしくなり、ギガスもまだ言い訳ができるかもしれない。
だがそれを許すヤマトではなかった。
彼はあきれたようにため息を吐いて仲間の名を呼ぶ。
「……ラミィ」
「ようやく出番か」
ヤマトの背後にいた人物がローブを脱ぎ捨てると、白銀の甲冑を着た女騎士が現れた。
トリニティスイーツのリーダーであり、今は騎士のラミィだ。
彼女の姿を見て、シルフィは目を見開き歓喜の声を上げた。
「ラミィさん!」
「……なに? 騎士だと!?」
「お久しぶりですね、ドラン殿。以前会ったときはハンターでしたが、今は騎士団に所属しているんですよ」
ラミィが勝ち誇ったように告げると、ドランの頬が引きつる。
こんなこともあろうかとヤマトが協力を依頼していたのだ。
ヤマト以外をローブで隠していたのは、ラミィの正体がバレないためのカモフラージュ。
彼女はドランをまっすぐに見据え、堂々と告げる。
「騎士団に通報するという話でしたけど、必要ありませんよ。ずっと騎士の私が見ていたんですから。スノウからの正当防衛ということでヤマトたちに非はありません。そもそも、不法侵入もしていないですし」
「やってくれるな。だが、それでも多勢に無勢だ。そこの女騎士ごと消してしまえばなにも問題はない。こちらの有利は変わらないぞ!」
「――ねぇ、聞きたいことがあるんだけど」
緊迫の状況下で口を挟んだのは、ハンナだった。
声には感情がこもっておらず、フードをかぶっているため表情は見えない。
「ハンナ? なにを……」
ヤマトが戸惑いの声を上げるが、彼女は反応せず、ドランを見据えゆっくり歩き出した。
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