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第一章 港町の設計士
港町カムラ
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廃墟と化した村から少し南へ歩いた方角にある『港町カムラ』。
ここが凶霧に追いつめられた弱者たちの最後の生活拠点であり、シュウゴの拠点でもある。
町の周囲は頑強な鋼鉄の柵で囲い、周囲には高台を設置して魔物の奇襲に備えている。
文字通り海に面しているが、今のところ海から魔物が襲い掛かって来る可能性は低い。
それほど海が汚染されているのだ。
ただ、原因は不明で凶霧に似た性質のものによるということだけは確かだ。
奇跡的に浄化魔法が有効であったため、水と塩には困っていない。
カムラの領主『ヴィンゴール』は、的確な判断力と聡明な頭脳を持ち、民の人望も厚い人格者だ。
そしてその直属の組織であるカムラ討伐隊も、勇猛果敢でありながら温厚さも兼ね備えた者たちの集まり。
むしろ彼らが民の税金で働いている以上、高い信用がなければ治安を維持できなくなる。
町へ戻ったシュウゴは、領主の館の西にある『クエスト紹介所』へ向かった。
「「「――お疲れ様です」」」
シュウゴが紹介所へ入ると、奥のカウンターに並んでいる受付嬢三姉妹『ユリ』、『ユラ』、『ユナ』から挨拶を受ける。
この木造二階建ての施設はバラム商会の運営する、クエストの紹介所だ。
カウンターの横にはたくさんの張り紙が貼られた大きな掲示板が立っており、脇には複数の丸テーブルと椅子が並んでハンターたちが打ち合わせをしている。
また、ここの二階にはバラム商会の会長『バラム』の執務室もある。
領主の討伐隊は外の調査や町の治安維持を行っているが、それとは別に『ハンター』と呼ばれるフリーランスの傭兵たちがいるのだ。
彼らはバラム商会からハンタークラスを与えられ、一般市民や商人たちの依頼をクエストとして受注し、完遂の報酬を得て生計を立てている。
そしてそのクエストを一か所に集約し、依頼者の代わりにハンターと契約を結ぶ仲介の役割を担っているのが、この紹介所というわけだ。
「クエストを完了しました。目的のアイテムはここに入っています」
シュウゴは左端の受付嬢『ユナ』へクエスト受注書の控えを渡し、カウンターの裏から回って来たもう一人『ユラ』へ巨大な目玉の入った袋を手渡す。
それを受け取ったユラは、中身を見もせずに微笑む。
「それでは依頼主様に確認をとりますので、報酬金のお受け取りはまた後日、よろしくお願い致します」
彼女ら受付嬢は姉妹だそうで、三人とも容姿はあまり変わらない。
輝くような美しい金髪に透き通るような白い肌。目は澄んだ碧眼で柔らかい眼差しは、受付に立っているだけでハンターの緊張を和ませる。
三人の違いと言えば髪型ぐらいで、ユナが短めのハーフツイン、ユラが肩ぐらいまでの長さのポニーテール、ユリが腰ぐらいまでその綺麗な金髪をおろしている。
前世で女性経験のなかったシュウゴは、彼女らの甘ったるい微笑みが苦手だった。その微笑みが自分にだけ向けられているのではないかと、勘違いしてしまいそうになる。
なのでいつも通り、「は、はい」とぎこちなく返事をして紹介所を出た。
少しばかりドキドキしているのを自覚しながら、シュウゴは紹介所の南をまっすぐ歩いていく。
周囲に広がるのは活発な商業区域だ。
大通りのあちこちで商人たちが雑貨や食料、武器などを売っている。
商人も一般客も身なりはあまり良いとは言えず、必死な値段交渉をしていることから、町が困窮していることは疑いようもない。
ただ、彼らには活気があった。まるで交渉を楽しんでいるような……生きることを楽しんでいるような、そんな笑みを浮かべていた。
それも、この商業区がバラム商会によって均衡を保たれているおかげかもしれない。
このカムラ内で商売をするには、バラム商会の許しを得なければならず、場所も商業区の一部を有料で貸し与えることになっている。
また、商業区内での治安維持は討伐隊に委託されており、そのようにして商業を厳密に管理しているのだ。
シュウゴは商業区の活気に心地よさを感じながら、軽く露店を眺めて回る。
ここが凶霧に追いつめられた弱者たちの最後の生活拠点であり、シュウゴの拠点でもある。
町の周囲は頑強な鋼鉄の柵で囲い、周囲には高台を設置して魔物の奇襲に備えている。
文字通り海に面しているが、今のところ海から魔物が襲い掛かって来る可能性は低い。
それほど海が汚染されているのだ。
ただ、原因は不明で凶霧に似た性質のものによるということだけは確かだ。
奇跡的に浄化魔法が有効であったため、水と塩には困っていない。
カムラの領主『ヴィンゴール』は、的確な判断力と聡明な頭脳を持ち、民の人望も厚い人格者だ。
そしてその直属の組織であるカムラ討伐隊も、勇猛果敢でありながら温厚さも兼ね備えた者たちの集まり。
むしろ彼らが民の税金で働いている以上、高い信用がなければ治安を維持できなくなる。
町へ戻ったシュウゴは、領主の館の西にある『クエスト紹介所』へ向かった。
「「「――お疲れ様です」」」
シュウゴが紹介所へ入ると、奥のカウンターに並んでいる受付嬢三姉妹『ユリ』、『ユラ』、『ユナ』から挨拶を受ける。
この木造二階建ての施設はバラム商会の運営する、クエストの紹介所だ。
カウンターの横にはたくさんの張り紙が貼られた大きな掲示板が立っており、脇には複数の丸テーブルと椅子が並んでハンターたちが打ち合わせをしている。
また、ここの二階にはバラム商会の会長『バラム』の執務室もある。
領主の討伐隊は外の調査や町の治安維持を行っているが、それとは別に『ハンター』と呼ばれるフリーランスの傭兵たちがいるのだ。
彼らはバラム商会からハンタークラスを与えられ、一般市民や商人たちの依頼をクエストとして受注し、完遂の報酬を得て生計を立てている。
そしてそのクエストを一か所に集約し、依頼者の代わりにハンターと契約を結ぶ仲介の役割を担っているのが、この紹介所というわけだ。
「クエストを完了しました。目的のアイテムはここに入っています」
シュウゴは左端の受付嬢『ユナ』へクエスト受注書の控えを渡し、カウンターの裏から回って来たもう一人『ユラ』へ巨大な目玉の入った袋を手渡す。
それを受け取ったユラは、中身を見もせずに微笑む。
「それでは依頼主様に確認をとりますので、報酬金のお受け取りはまた後日、よろしくお願い致します」
彼女ら受付嬢は姉妹だそうで、三人とも容姿はあまり変わらない。
輝くような美しい金髪に透き通るような白い肌。目は澄んだ碧眼で柔らかい眼差しは、受付に立っているだけでハンターの緊張を和ませる。
三人の違いと言えば髪型ぐらいで、ユナが短めのハーフツイン、ユラが肩ぐらいまでの長さのポニーテール、ユリが腰ぐらいまでその綺麗な金髪をおろしている。
前世で女性経験のなかったシュウゴは、彼女らの甘ったるい微笑みが苦手だった。その微笑みが自分にだけ向けられているのではないかと、勘違いしてしまいそうになる。
なのでいつも通り、「は、はい」とぎこちなく返事をして紹介所を出た。
少しばかりドキドキしているのを自覚しながら、シュウゴは紹介所の南をまっすぐ歩いていく。
周囲に広がるのは活発な商業区域だ。
大通りのあちこちで商人たちが雑貨や食料、武器などを売っている。
商人も一般客も身なりはあまり良いとは言えず、必死な値段交渉をしていることから、町が困窮していることは疑いようもない。
ただ、彼らには活気があった。まるで交渉を楽しんでいるような……生きることを楽しんでいるような、そんな笑みを浮かべていた。
それも、この商業区がバラム商会によって均衡を保たれているおかげかもしれない。
このカムラ内で商売をするには、バラム商会の許しを得なければならず、場所も商業区の一部を有料で貸し与えることになっている。
また、商業区内での治安維持は討伐隊に委託されており、そのようにして商業を厳密に管理しているのだ。
シュウゴは商業区の活気に心地よさを感じながら、軽く露店を眺めて回る。
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