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第三章 闇の一族
イーリンとのデート
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商機を逃し、また新しい情報を得るのに奔走するスルーズ商会。
そんな中、ノベルはルインの頼みで街の中央区に来ていた。
なんでも、イーリンが商会で使用する筆記具や書簡などの備品の買い出しをしており、手伝ってやってほしいということだった。
そして、きちんと家まで送ってほしいと。
愛娘を心配するのは分かるが、なぜアリサでなく頼りない自分に頼むのか、ノベルには理解できない。
ノートスの中央区には初めて来たが、意外と繁盛しているようだった。
立ち並ぶ建物には、服屋や雑貨屋、金庫番などが入り、多くの人々が行き交って活気がある。
道行く人々は、デザイン重視の装飾が施された小粋な服装が多く、貴族や騎士、派手な格好で颯爽と歩くハンター風の男など、皆が生き生きとしており、ノートスの経済の中心地と言っても過言ではない。
「――ノ、ノベルさん!?」
ノベルが街の雰囲気に圧倒されながら歩いていると、前方から可憐な声が上がった。
驚いてあたふたとしているイーリンを見つけると、ノベルは手を上げ、ゆっくりと彼女の元へ歩み寄る。
イーリンは、お嬢様然としたヒラヒラな純白のワンピースに、華やかな花柄のカーディガンを羽織っている。綺麗なプラチナブロンドの髪に着けている、小さな華の髪飾りが似合っていて可愛らしい。
彼女は以前よりも良い服を着て、洒落っ気が増してきた。
スルーズ商会が繁盛しているおかげだろう。
「やぁイーリン。手伝いに来たよ」
「へ? 手伝い? どういうことですの?」
ちょこんと首を傾げるイーリン。
「いや、ルインさんからイーリンを手伝うようにって頼まれてね」
「うっ……そういうことでしたの」
イーリンは、なぜだか額を押さえ深いため息を吐いた。
「まったく、お父様ときたら……」
「ん? どうかした?」
「いえ……実は今日、商会のお手伝いは休ませて頂いてるんです。それでここには、個人的な用事で来てるだけでして……」
「えっ!? そうなの?」
「はい。それにもう用事は終わって帰るところなんです。ノベルさんの貴重なお時間を奪ってしまって、本当に申し訳ありません」
「いやいや、気にしないで。イーリンにも会えたし十分だよ」
「どうせ今は暇だから」とは言わなかった。
こんな状況だからこそ、ルインはノベルの気分転換のためにと、気を遣ってくれたのだろう。
その言葉を聞いたイーリンは目を輝かせた。
「ほ、本当ですか!?」
「う、うん」
それから二人は、談笑しながらイーリンの家へ向かってゆっくり歩く。
「そういえば、アリサさんはどちらに?」
「ルインさんが頼みたいことがあるからって言って、屋敷に置いてきたんだ。ちょっと不服そうだったけどね」
「そうだったんですか。お父様ったら……」
「なにか知ってるの?」
「あっ、いえぇ、あのぅ……」
イーリンは急にしどろもどろになる。
心なしか顔が赤くなり、人差し指の先をつんつんさせ始めた。
「実は、お父様は私とノベルさんをその……く、くっつけようと画策しているみたいなんです」
イーリンは恥ずかしそうに言って、上目遣いでノベルを見上げた。
その仕草は普段の堂々とした雰囲気と違って小動物のようだ。
なんだかふわふわした感覚になる。
「そ、そうなの?」
「そうなんです。ことあるごとにノベルさんのことを聞いてきたり、突然ノベルさんのことを絶賛してきたりと、まるでお父様が恋をしているようですわ」
「いや、それは勘弁してほしいね」
ノベルが苦笑すると、イーリンもクスクスと笑った。
しかし、困ったものだと口では言っているが、イーリンも満更でもなさそうだった。
彼女は意を決したようにノベルをまっすぐに見て聞いてくる。
「アリサさんとは、本当になんでもないんですか?」
「うん? うん」
ノベルはその意図がよく分からなかったが、思い当たるふしがなかったので、とりあえず頷いた。
するとイーリンは、ホッとしたように頬を緩め小さく呟いた。
「臆病者の私には、その事実だけで十分ですわ」
「……え? 今なんて?」
ノベルが聞き返すと、イーリンは首を横に振った。
「お父様に良い報告ができそうだと思っただけですの」
それから二人は、たわいもない話で盛り上がり、あっという間にイーリンの家へ辿り着いた。
彼女を送り届けたノベルは、穏やかな気持ちでスルーズ商会の屋敷へ向かう。
ルインにだまされたというような苦い思いはない。
ただ――
「――楽しかった」
イーリンと過ごす時間は、ノベルの荒んだ心に潤いを与えた。
これは、一度どん底に落ち再び這い上がった経験があるから得られたもの。
こんな投資家生活も、王城にいたときとは比べられないぐらい好きになっている。
しかし、こんな平和な日々も長くは続かないのだと分かっていた。
覚悟していたことだ。復讐を誓ったその日から。
……ちなみに、その後のアリサがへそを曲げたのは言うまでもない。
そんな中、ノベルはルインの頼みで街の中央区に来ていた。
なんでも、イーリンが商会で使用する筆記具や書簡などの備品の買い出しをしており、手伝ってやってほしいということだった。
そして、きちんと家まで送ってほしいと。
愛娘を心配するのは分かるが、なぜアリサでなく頼りない自分に頼むのか、ノベルには理解できない。
ノートスの中央区には初めて来たが、意外と繁盛しているようだった。
立ち並ぶ建物には、服屋や雑貨屋、金庫番などが入り、多くの人々が行き交って活気がある。
道行く人々は、デザイン重視の装飾が施された小粋な服装が多く、貴族や騎士、派手な格好で颯爽と歩くハンター風の男など、皆が生き生きとしており、ノートスの経済の中心地と言っても過言ではない。
「――ノ、ノベルさん!?」
ノベルが街の雰囲気に圧倒されながら歩いていると、前方から可憐な声が上がった。
驚いてあたふたとしているイーリンを見つけると、ノベルは手を上げ、ゆっくりと彼女の元へ歩み寄る。
イーリンは、お嬢様然としたヒラヒラな純白のワンピースに、華やかな花柄のカーディガンを羽織っている。綺麗なプラチナブロンドの髪に着けている、小さな華の髪飾りが似合っていて可愛らしい。
彼女は以前よりも良い服を着て、洒落っ気が増してきた。
スルーズ商会が繁盛しているおかげだろう。
「やぁイーリン。手伝いに来たよ」
「へ? 手伝い? どういうことですの?」
ちょこんと首を傾げるイーリン。
「いや、ルインさんからイーリンを手伝うようにって頼まれてね」
「うっ……そういうことでしたの」
イーリンは、なぜだか額を押さえ深いため息を吐いた。
「まったく、お父様ときたら……」
「ん? どうかした?」
「いえ……実は今日、商会のお手伝いは休ませて頂いてるんです。それでここには、個人的な用事で来てるだけでして……」
「えっ!? そうなの?」
「はい。それにもう用事は終わって帰るところなんです。ノベルさんの貴重なお時間を奪ってしまって、本当に申し訳ありません」
「いやいや、気にしないで。イーリンにも会えたし十分だよ」
「どうせ今は暇だから」とは言わなかった。
こんな状況だからこそ、ルインはノベルの気分転換のためにと、気を遣ってくれたのだろう。
その言葉を聞いたイーリンは目を輝かせた。
「ほ、本当ですか!?」
「う、うん」
それから二人は、談笑しながらイーリンの家へ向かってゆっくり歩く。
「そういえば、アリサさんはどちらに?」
「ルインさんが頼みたいことがあるからって言って、屋敷に置いてきたんだ。ちょっと不服そうだったけどね」
「そうだったんですか。お父様ったら……」
「なにか知ってるの?」
「あっ、いえぇ、あのぅ……」
イーリンは急にしどろもどろになる。
心なしか顔が赤くなり、人差し指の先をつんつんさせ始めた。
「実は、お父様は私とノベルさんをその……く、くっつけようと画策しているみたいなんです」
イーリンは恥ずかしそうに言って、上目遣いでノベルを見上げた。
その仕草は普段の堂々とした雰囲気と違って小動物のようだ。
なんだかふわふわした感覚になる。
「そ、そうなの?」
「そうなんです。ことあるごとにノベルさんのことを聞いてきたり、突然ノベルさんのことを絶賛してきたりと、まるでお父様が恋をしているようですわ」
「いや、それは勘弁してほしいね」
ノベルが苦笑すると、イーリンもクスクスと笑った。
しかし、困ったものだと口では言っているが、イーリンも満更でもなさそうだった。
彼女は意を決したようにノベルをまっすぐに見て聞いてくる。
「アリサさんとは、本当になんでもないんですか?」
「うん? うん」
ノベルはその意図がよく分からなかったが、思い当たるふしがなかったので、とりあえず頷いた。
するとイーリンは、ホッとしたように頬を緩め小さく呟いた。
「臆病者の私には、その事実だけで十分ですわ」
「……え? 今なんて?」
ノベルが聞き返すと、イーリンは首を横に振った。
「お父様に良い報告ができそうだと思っただけですの」
それから二人は、たわいもない話で盛り上がり、あっという間にイーリンの家へ辿り着いた。
彼女を送り届けたノベルは、穏やかな気持ちでスルーズ商会の屋敷へ向かう。
ルインにだまされたというような苦い思いはない。
ただ――
「――楽しかった」
イーリンと過ごす時間は、ノベルの荒んだ心に潤いを与えた。
これは、一度どん底に落ち再び這い上がった経験があるから得られたもの。
こんな投資家生活も、王城にいたときとは比べられないぐらい好きになっている。
しかし、こんな平和な日々も長くは続かないのだと分かっていた。
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