4 / 66
第一章 破滅の影
エンカウント
しおりを挟む
ウィルムたちは、不気味な雰囲気漂う密林の道をただ黙って歩き続ける。
鉱石の乗った荷車を筋骨隆々な獣人のハンターが三人で引き、ウィルムは涼しい顔で後ろを歩いている。彼の横にはジャックが付き、用心棒としての役割をしっかりと果たしていた。
しかし商人としてあまり良い移動方法ではない。
ドラチナスとイノセントを繋ぐこの密林は、モンスターの出現も多く怪物アビスの目撃情報まである。
通常は鳥竜と呼ばれる二足歩行の動物に荷車を引かせ、商人も鳥竜に乗って安全な街道をゆっくり進む。
ただ、今回の場合だと鳥竜二頭が必要な上に借りたところで、イノセントへは森を抜けるしか道がなく、用心棒も雇う必要がなるので費用がバカにならない。
だから力持ちの獣人三人を荷車の運搬件用心棒に雇ったのだ。
「――少し休憩させてくれ」
獣人の疲労を悟ったジャックがウィルムへ進言する。
ちょうど坂道の下に渓流があり、ウィルムたちはそこまで移動して休息をとることにした。
細い川の水辺で獣人たちが休憩しているうちに、ウィルムは周辺に生えている草木に使える薬草はないか探しだした。
ジャックがため息を吐きながら着いて来る。
「あんまり離れるな。用心棒の意味がなくなっちまう」
「ごめんごめん。貧乏性なもので」
ウィルムは苦笑しながら後頭部をかく。
荷車から離れないように慎重に草木をかき分け、周辺を見回していく。
だがそう簡単に価値のある薬草は見つからず、ウィルムは肩を落として獣人たちの元へ戻った。
獣人たちが荷車の取っ手を掴んだところでウィルムが告げる。
「それじゃあ、行こうか」
「……待て」
低い声で止めたのはジャックだった。
厳つい顔に皺を寄せ、警戒心をあらわにしている。
そしてすぐにその理由は判明する。
「っ!? モンスターか!?」
草木をかけ分け、現れたのは四体の小鬼と二体の一つ目鬼だった。
ゴブリンは凶暴だが小型なため、獣人のハンターなら問題ない相手だが、サイクロプスは全長三メートルもある巨体にリーチも長いため油断はできない。
ウィルムの表情が緊張で強張る。
「あんたは荷車に隠れてろ!」
ジャックはそう言って剣を取り、獣人たちと共にモンスターたちへと駆け出す。
本来なら依頼主のウィルムを無防備にするのは危険だが、敵の数を考えるとやむを得ない選択だった。
アビスがいないのが不幸中の幸いか。
「おらぁっ!」
ハンターたちの猛々しい声が響き、ゴブリンたちと武器を激しくぶつけ合う。
サイクロプスの持つ棍棒のリーチは長いが、大振りなため注意さえしていれば直撃は避けられる。
彼らは慎重に立ち回りながら、サイクロプスから一定の距離をとっていた。
「キキィィィ!」
大剣の切っ先を地面に擦りながら移動する獣人へ、ゴブリンが飛び掛かる。しかし彼は、冷静に大剣を下から振り上げた。
重い刃は空中で肉を断ち、ゴブリンを豪快に斬り上げる。
敵を倒して安堵したのも束の間、獣人の元へと迫っていたサイクロプスが大きな棍棒を振り下ろした。
「ぐぅぅぅぅぅ!」
獣人は刃を横にして両腕の力で受け止めるが、あまりの衝撃に砂埃が舞う。
重圧によって足が地面へ食い込むが、それでも膝をつかないのはさすがだ。
「そのまま堪えてろ!」
ジャックが叫びながらサイクロプスの背後へ回る。
そして、素早くその足元を切り払って敵の腱を叩き斬った。
ジャックを追って背後に迫っていたゴブリンを押し潰し、サイクロプスは仰向けに転倒。
サイクロプスの重圧から解放された獣人がすかさず駆け出し、大剣を高々と振り上げた。
「グオォォォンッ!」
残るはゴブリンニ体とサイクロプス一体。
対してハンターは誰一人欠けておらず、形勢は圧倒的優位だ。
ウィルムは勝利を確信し、荷台の前に出て表情を和らげた。
しかし次の瞬間、その背筋を悪寒が走う。
鉱石の乗った荷車を筋骨隆々な獣人のハンターが三人で引き、ウィルムは涼しい顔で後ろを歩いている。彼の横にはジャックが付き、用心棒としての役割をしっかりと果たしていた。
しかし商人としてあまり良い移動方法ではない。
ドラチナスとイノセントを繋ぐこの密林は、モンスターの出現も多く怪物アビスの目撃情報まである。
通常は鳥竜と呼ばれる二足歩行の動物に荷車を引かせ、商人も鳥竜に乗って安全な街道をゆっくり進む。
ただ、今回の場合だと鳥竜二頭が必要な上に借りたところで、イノセントへは森を抜けるしか道がなく、用心棒も雇う必要がなるので費用がバカにならない。
だから力持ちの獣人三人を荷車の運搬件用心棒に雇ったのだ。
「――少し休憩させてくれ」
獣人の疲労を悟ったジャックがウィルムへ進言する。
ちょうど坂道の下に渓流があり、ウィルムたちはそこまで移動して休息をとることにした。
細い川の水辺で獣人たちが休憩しているうちに、ウィルムは周辺に生えている草木に使える薬草はないか探しだした。
ジャックがため息を吐きながら着いて来る。
「あんまり離れるな。用心棒の意味がなくなっちまう」
「ごめんごめん。貧乏性なもので」
ウィルムは苦笑しながら後頭部をかく。
荷車から離れないように慎重に草木をかき分け、周辺を見回していく。
だがそう簡単に価値のある薬草は見つからず、ウィルムは肩を落として獣人たちの元へ戻った。
獣人たちが荷車の取っ手を掴んだところでウィルムが告げる。
「それじゃあ、行こうか」
「……待て」
低い声で止めたのはジャックだった。
厳つい顔に皺を寄せ、警戒心をあらわにしている。
そしてすぐにその理由は判明する。
「っ!? モンスターか!?」
草木をかけ分け、現れたのは四体の小鬼と二体の一つ目鬼だった。
ゴブリンは凶暴だが小型なため、獣人のハンターなら問題ない相手だが、サイクロプスは全長三メートルもある巨体にリーチも長いため油断はできない。
ウィルムの表情が緊張で強張る。
「あんたは荷車に隠れてろ!」
ジャックはそう言って剣を取り、獣人たちと共にモンスターたちへと駆け出す。
本来なら依頼主のウィルムを無防備にするのは危険だが、敵の数を考えるとやむを得ない選択だった。
アビスがいないのが不幸中の幸いか。
「おらぁっ!」
ハンターたちの猛々しい声が響き、ゴブリンたちと武器を激しくぶつけ合う。
サイクロプスの持つ棍棒のリーチは長いが、大振りなため注意さえしていれば直撃は避けられる。
彼らは慎重に立ち回りながら、サイクロプスから一定の距離をとっていた。
「キキィィィ!」
大剣の切っ先を地面に擦りながら移動する獣人へ、ゴブリンが飛び掛かる。しかし彼は、冷静に大剣を下から振り上げた。
重い刃は空中で肉を断ち、ゴブリンを豪快に斬り上げる。
敵を倒して安堵したのも束の間、獣人の元へと迫っていたサイクロプスが大きな棍棒を振り下ろした。
「ぐぅぅぅぅぅ!」
獣人は刃を横にして両腕の力で受け止めるが、あまりの衝撃に砂埃が舞う。
重圧によって足が地面へ食い込むが、それでも膝をつかないのはさすがだ。
「そのまま堪えてろ!」
ジャックが叫びながらサイクロプスの背後へ回る。
そして、素早くその足元を切り払って敵の腱を叩き斬った。
ジャックを追って背後に迫っていたゴブリンを押し潰し、サイクロプスは仰向けに転倒。
サイクロプスの重圧から解放された獣人がすかさず駆け出し、大剣を高々と振り上げた。
「グオォォォンッ!」
残るはゴブリンニ体とサイクロプス一体。
対してハンターは誰一人欠けておらず、形勢は圧倒的優位だ。
ウィルムは勝利を確信し、荷台の前に出て表情を和らげた。
しかし次の瞬間、その背筋を悪寒が走う。
0
あなたにおすすめの小説
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?
あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】全60話 完結しました。読者の皆様ありがとうございます!
世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。
「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。
・神話級ドラゴン
⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺)
・深淵の邪神
⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決)
・次元の裂け目
⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い)
「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」
本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……?
「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー!
【免責事項】
この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
追放即死と思ったら転生して最強薬師、元家族に天罰を
タマ マコト
ファンタジー
名門薬師一族に生まれたエリシアは、才能なしと蔑まれ、家名を守るために追放される。
だがそれは建前で、彼女の異質な才能を恐れた家族による処刑だった。
雨の夜、毒を盛られ十七歳で命を落とした彼女は、同じ世界の片隅で赤子として転生する。
血の繋がらない治療師たちに拾われ、前世の記憶と復讐心を胸に抱いたまま、
“最強薬師”としての二度目の人生が静かに始まる。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる