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第一章 破滅の影
鉱石商の日常
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それ以降、小型のモンスターとは何度か遭遇したが、ハンターたちが難なく倒しドラチナスへ無事帰りついた。
町へ入ってウィルムが所有する小さな倉庫まで荷車を移動し、ハンターたちへの報酬を渡す。
全員分をまとめて巾着袋に入れており、ジャックが代表して受け取った。
「まいどどうも」
「こちらこそ、いつもありがとう」
「また依頼があったら俺に連絡してくれ。俺にとっても、あんたはお得意様なんだからな」
ジャックは硬い表情を緩ませて告げると、獣人たちを連れて去って行った。
おそらく、ハンター登録をしている『アルビオン商会』へ報告に行くのだろう。
彼らハンターはフリーランスではあるが、ハンター仲介業をしている商会に登録しており、商会や商業組合の受けた依頼を振り分けてもらっている。
ただ、ジャックのように個人で依頼を受けられる上級者は、依頼受注の前に登録商会へ報告して許可を得ないといけない。
それがこの町を牛耳るギルドのルールだ。
依頼の受注状況を商会で管理していないと、一部のハンターだけに依頼が集まり、他の駆け出しハンターや人脈のないハンターに仕事が回ってこない。
もちろんそれは他の商売も同じで、価格競争による市場の独占ができないように、ギルドが目を光らせている。
「さてと……」
ウィルムは荷車よりも一回り小さい台車に鉱石の一部を移し、市場へと繰り出すのだった。
五年前、アビスの出現によってドラチナスは壊滅の危機に瀕したが、皮肉にもそのおかげで経済の豊かな村――町へと変貌を遂げた。
そのときの立役者が武器商人の『グレイヴ』と領主の『アンフィス』だ。
アンフィスは人間だが、竜人や獣人たちを束ねる器量を持ち他領土にも顔が利くため、緊急支援要請を出して多くの腕利きハンターや高名な鍛冶屋をドラチナスへ領内へ集めた。
獣人のグレイヴは、商人たちの目的をアビス討伐に統一すべく、集まった商人や職人たちでギルド『デーモン』を結成して商業を活発化させる。
そして、アンフィスは領地の財源として留保していた資金を市場へ大量供給し、グレイヴの的確なギルド運営によって、アビスに対抗しうる強力な装備の開発とその討伐に成功。
さらに、討伐したアビスからは上質な素材が採れるということで、ドルガン国内外でも注目を集め、今では商業の発展した町として認知されるようになった。
ウィルムは台車を引き、店の立ち並ぶ大通りを歩いていく。
脇には雑貨屋や武器屋、特定の素材を扱う専門店などが多数並んで大勢の人が行き交っており、活気に溢れている。
まるで都市部の商業区のようだ。
「おぅ、あんちゃん! ダークマターと鉄鉱石くれや!」
野太い声に呼ばれると、ウィルムは台車を鍛冶屋の暖簾の前に止め、鍛冶屋の親方から渡された袋にダークマターと鉄鉱石を詰めていく。
ダークマターは、他の鉱物資源と同様に光沢を放つ石だが、高温で溶け火をおこすための燃料となる。鍛冶屋で武器を生産するために使う、鋳鉄炉の動力源になるのだ。
また、溶かさなくてもそれなりの強度を誇るので、鉄鉱石と共に生活用品や様々な製品の素材として利用される。
名前の由来は、溶かすことでドロドロとした真っ黒な液体になり、まるで暗黒のようにも見えることから名付けられたという。
ウィルムはダークマターと鉄鉱石、その他多数の鉱石類でパンパンに膨らんだ袋を渡し、親方からリュート通貨を受け取ると、頬を緩ませて頭を下げた。
「ありがとうございました。またよろしくお願いします」
「おぅ! あんちゃんの売る素材は安くて質も良いから、いつも助かるぜ」
親方の「ガハハハハッ」という豪快な笑い声を背に、ウィルムは台車を引いて歩き去って行く。
ありがたいことだった。
ウィルムは資源国ヴァルファームの鉱石商であるエルダと繋がりがあるおかげで、他の商人たちよりも安く鉱物資源を仕入れることができている。
たとえば、ドラチナスの帰属している『ドルガン連邦国』でもダークマターを産出しているが、貴重な資源なため買い付け価格はどうしても高くなる。それに、売り手の利益向上のために価格が上乗せされるのも少なくない。
だがエルフたちは、利益を産出量と輸出量でカバーできるため、安価に販売している。それに、その質も折り紙付きだ。
ただ、ドラチナスではギルドによる商人保護があるため、安いからとウィルム一人で鉱石市場を独占できるわけではない。
各商人が一度に売れる量には限度が設けられているのだ。
町へ入ってウィルムが所有する小さな倉庫まで荷車を移動し、ハンターたちへの報酬を渡す。
全員分をまとめて巾着袋に入れており、ジャックが代表して受け取った。
「まいどどうも」
「こちらこそ、いつもありがとう」
「また依頼があったら俺に連絡してくれ。俺にとっても、あんたはお得意様なんだからな」
ジャックは硬い表情を緩ませて告げると、獣人たちを連れて去って行った。
おそらく、ハンター登録をしている『アルビオン商会』へ報告に行くのだろう。
彼らハンターはフリーランスではあるが、ハンター仲介業をしている商会に登録しており、商会や商業組合の受けた依頼を振り分けてもらっている。
ただ、ジャックのように個人で依頼を受けられる上級者は、依頼受注の前に登録商会へ報告して許可を得ないといけない。
それがこの町を牛耳るギルドのルールだ。
依頼の受注状況を商会で管理していないと、一部のハンターだけに依頼が集まり、他の駆け出しハンターや人脈のないハンターに仕事が回ってこない。
もちろんそれは他の商売も同じで、価格競争による市場の独占ができないように、ギルドが目を光らせている。
「さてと……」
ウィルムは荷車よりも一回り小さい台車に鉱石の一部を移し、市場へと繰り出すのだった。
五年前、アビスの出現によってドラチナスは壊滅の危機に瀕したが、皮肉にもそのおかげで経済の豊かな村――町へと変貌を遂げた。
そのときの立役者が武器商人の『グレイヴ』と領主の『アンフィス』だ。
アンフィスは人間だが、竜人や獣人たちを束ねる器量を持ち他領土にも顔が利くため、緊急支援要請を出して多くの腕利きハンターや高名な鍛冶屋をドラチナスへ領内へ集めた。
獣人のグレイヴは、商人たちの目的をアビス討伐に統一すべく、集まった商人や職人たちでギルド『デーモン』を結成して商業を活発化させる。
そして、アンフィスは領地の財源として留保していた資金を市場へ大量供給し、グレイヴの的確なギルド運営によって、アビスに対抗しうる強力な装備の開発とその討伐に成功。
さらに、討伐したアビスからは上質な素材が採れるということで、ドルガン国内外でも注目を集め、今では商業の発展した町として認知されるようになった。
ウィルムは台車を引き、店の立ち並ぶ大通りを歩いていく。
脇には雑貨屋や武器屋、特定の素材を扱う専門店などが多数並んで大勢の人が行き交っており、活気に溢れている。
まるで都市部の商業区のようだ。
「おぅ、あんちゃん! ダークマターと鉄鉱石くれや!」
野太い声に呼ばれると、ウィルムは台車を鍛冶屋の暖簾の前に止め、鍛冶屋の親方から渡された袋にダークマターと鉄鉱石を詰めていく。
ダークマターは、他の鉱物資源と同様に光沢を放つ石だが、高温で溶け火をおこすための燃料となる。鍛冶屋で武器を生産するために使う、鋳鉄炉の動力源になるのだ。
また、溶かさなくてもそれなりの強度を誇るので、鉄鉱石と共に生活用品や様々な製品の素材として利用される。
名前の由来は、溶かすことでドロドロとした真っ黒な液体になり、まるで暗黒のようにも見えることから名付けられたという。
ウィルムはダークマターと鉄鉱石、その他多数の鉱石類でパンパンに膨らんだ袋を渡し、親方からリュート通貨を受け取ると、頬を緩ませて頭を下げた。
「ありがとうございました。またよろしくお願いします」
「おぅ! あんちゃんの売る素材は安くて質も良いから、いつも助かるぜ」
親方の「ガハハハハッ」という豪快な笑い声を背に、ウィルムは台車を引いて歩き去って行く。
ありがたいことだった。
ウィルムは資源国ヴァルファームの鉱石商であるエルダと繋がりがあるおかげで、他の商人たちよりも安く鉱物資源を仕入れることができている。
たとえば、ドラチナスの帰属している『ドルガン連邦国』でもダークマターを産出しているが、貴重な資源なため買い付け価格はどうしても高くなる。それに、売り手の利益向上のために価格が上乗せされるのも少なくない。
だがエルフたちは、利益を産出量と輸出量でカバーできるため、安価に販売している。それに、その質も折り紙付きだ。
ただ、ドラチナスではギルドによる商人保護があるため、安いからとウィルム一人で鉱石市場を独占できるわけではない。
各商人が一度に売れる量には限度が設けられているのだ。
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