サクリファイスリベリオン ~冤罪で追いつめられた元凄腕ハンターは、ギルドの陰謀を暴き人脈を駆使して復讐する~

高美濃 四間

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第一章 破滅の影

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 翌日、午後には鑑定の結果が出て、「すべて品質に問題なし」ということが分かり、商品も無事に返却された。
 だが、そのときにはもう手遅れだった。

「――悪いねぇ、あんちゃん」

 いつもは豪快な笑みを浮かべる鍛冶屋の親方が、ばつが悪そうに目を逸らして後頭部に手を当てる。
 これでもう三件目だ。
 ウィルムは鑑定の結果が出てすぐに鉱石を売りに来たが、いつも取引しているお得意先は皆、迷惑そうに愛想笑いを浮かべ、鉱石素材の取引を拒絶してきた。
 町中へ「ウィルムの取り扱う鉱石素材が不良品かもしれない」という噂が広まっていたからだ。
 正式な鑑定結果も問題なかったと訴えるが、誰も聞く耳を持たない。
 商人にとっての信用は、それだけセンシティブなものなのだ。

 ウィルムが肩を落としながら台車を引き、大通りを歩いていると、背後から怒声が上がった。

「――おい、あんたっ!」

「はい?」

 ウィルムが驚いて振り向くと、そこに仁王立ちしていたのはレザーアーマーを着込んで背に長剣を収めた獣人のハンターだった。
 その眼差しはきつく強い意志を秘めている。

「ウィルム・クルセイドだな?」

「は、はぁ……そうですが」

「人ひとりを殺しておいて、よくのうのうと商売ができるな! どれだけツラの皮が厚いんだ」

「なっ!? そ、それは誤解なんです!」

 獣人が声を荒げたことで周囲の注目を集め始め、ウィルムは慌てて否定した。
 
「よくも抜け抜けと、そんなことが言えるな」

「いきなり突っかかって来て、そう言うあなたいったいなんなんですか?」

「俺は、死んだハンターの仲間だよ」

「っ!?」

 ウィルムは目を見開き、声を詰まらせる。
 そしてようやく気付いた。
 この男が瞳に宿しているのは、純粋な憎悪だ。

「あんたに俺の気持ちが分かるか? 目の前で仲間が死んだ俺の気持ちがよ。俺はあんたを絶対に許さない」

「だからそれは……」

 ウィルムは気圧けおされながらも、なんとか誤解を解こうと声を発する。
 しかしそれは周囲の声にかき消された。

「どうりで安いと思ったんだよなぁ」

「あぁ、今考えると怪しいね」

「ヴァルファームで仕入れてるってのは嘘で、本当は裏ルートで不当に仕入れてるんじゃないの?」

 ざわざわと勝手な憶測が周囲へ伝搬していく。
 まるで大きな意志が介在しているのかのようで、ウィルムにはもう止められない。
 彼が頬を引きつらせ、立ち尽くしていると、目の前の獣人が歩き出す。

「もう二度と、俺の前に姿を見せるな――」

 そう言って、茫然と立ち尽くすウィルムの横を通る。
 その際、肩を強くぶつけてきて、ウィルムは情けなく尻餅をついた。
 そんな姿を見て溜飲を下げたのか、野次馬たちは見下すような冷たい目で一瞥して散っていく。
 ウィルムは拳を強く握り、顔を悲痛に歪め呟いた。

「これが罰なのか……仲間を見捨てて醜くも生きようとした僕への――」
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