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第四章 大資本の激突
真っ向勝負
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「……いったいなんのことでしょうか? 失礼ですが、当店とどのような関係が?」
「先日、私はこの町のとある商人に出資しました。しかし、その資金はすぐにあなた方ドラチナス金庫に奪われてしまったというのです」
店の入口周辺で民衆がざわめく。
それを見た副店主は、慌てて口を開いた。
そのような横暴な行動があったと知られれば、金庫番としての信用が地に落ちてしまうからだ。
「そのような事実があったとは思えませんが、その商人のお名前をお聞きしても?」
「鉱石商を営んでいる、ウィルム・クルセイド殿です」
「っ!」
副店主は驚愕に目を見開く。
そしてすぐに周囲を見回し、入口の扉の前に立つウィルムと目が合った。
睨みつけてくるウィルムに対し、副店主も忌々しげに眉を歪めた。
目線を再び目の前のシーカーへ戻し、厳かに言い放つ。
「なるほど。しかしそれは仕方のないことなのです」
「どういうことでしょう?」
「もしかすると、シーカーさんはご存知ないのかもしれませんが、ウィルムさんは、鉱石素材の取引で詐欺の容疑をかけられたことがあるのです。それが原因による信用低下を背景に、我々は彼への融資を打ち切りました。だというのに、彼は大金を口座へ入金したのです。それが不当な手段で得た金であることを疑うのは、当然のことでしょう?」
「だから、ウィルムさんの口座と共に資金を取り上げたと?」
「左様です」
「それなら、今その疑いは晴れたでしょう? その資金を渡したのは私です。ですから、口座凍結の判断は誤りだっと処理し、口座と金を返却してください」
「それはできません」
副店主は冷徹な表情を崩さず告げた。
終始穏やかな表情を貫いていたシーカーは、わずかに眉をしかめる。
「まさか、私自身に信用がない、私の出資した資金が不当に稼いだものだとでも言うつもりですか?」
「誠に申し訳ございません。それを証明する手段がない以上は……」
「それはおかしいのではないですか?」
「と、申しますと?」
「証拠がなければ動けないというのなら、ウィルムさんへの融資を打ち切ったのも同じはず。彼から聞いていますよ。彼が鉱石素材の取引で詐欺をしていたという証拠など、どこにもないと」
シーカーの言う通りだ。
ドラチナス金庫は事情を聞きもせず、強引に融資を打ち切って返済を求めてきた。
まるで、ウィルムを追いつめることが目的だとでも言うように。
しかし副店主は、表情を変えず淡々と頷く。
「おっしゃる通りです。しかし、ドラチナス領民の多くがウィルムさんの商売に不信感を抱いているのもまた事実。現に取引先もすべて失ったと聞きます。我々と同じく金貸しを生業としているあなたなら分かるでしょう? 信用のない者に融資はできない」
「ふむ、一理ありますね。しかし、なんとも愚かな民衆だ」
「愚か、ですか?」
シーカーの一言に副店主は戸惑う。
野次馬に混じって聞いていたウィルムも冷汗をかいていた。今のは明らかな失言に思えたのだ。
その証拠に、周囲の野次馬たちも青筋を立て、「ふざけんなこの野郎」と野次を飛ばしている。
しかしシーカーは、背後を振り向いて大声で言い放った。
「ならば問います。ここにいるあなた方は、その証拠とやらを出せるのですか!? なぜ、根拠もなしに罪のない者を追いつめることができるのですか!?」
その力強い言葉には、一本の太い芯が通っているように思えた。
問いに答えられる者はおらず、野次の勢いは衰え、やがて静まり返る。
愚かな民衆は、顔を見合わせたり、目を泳がせたりして、自分たちの罪から逃げようとしていた。
俯き考え込む者もいて、その中にはカエデの姿もあった。
シーカーはゆっくりと、野次馬たちへ冷徹で鋭い視線を這わせていった後、再び副店主へ顔を向ける。
「先日、私はこの町のとある商人に出資しました。しかし、その資金はすぐにあなた方ドラチナス金庫に奪われてしまったというのです」
店の入口周辺で民衆がざわめく。
それを見た副店主は、慌てて口を開いた。
そのような横暴な行動があったと知られれば、金庫番としての信用が地に落ちてしまうからだ。
「そのような事実があったとは思えませんが、その商人のお名前をお聞きしても?」
「鉱石商を営んでいる、ウィルム・クルセイド殿です」
「っ!」
副店主は驚愕に目を見開く。
そしてすぐに周囲を見回し、入口の扉の前に立つウィルムと目が合った。
睨みつけてくるウィルムに対し、副店主も忌々しげに眉を歪めた。
目線を再び目の前のシーカーへ戻し、厳かに言い放つ。
「なるほど。しかしそれは仕方のないことなのです」
「どういうことでしょう?」
「もしかすると、シーカーさんはご存知ないのかもしれませんが、ウィルムさんは、鉱石素材の取引で詐欺の容疑をかけられたことがあるのです。それが原因による信用低下を背景に、我々は彼への融資を打ち切りました。だというのに、彼は大金を口座へ入金したのです。それが不当な手段で得た金であることを疑うのは、当然のことでしょう?」
「だから、ウィルムさんの口座と共に資金を取り上げたと?」
「左様です」
「それなら、今その疑いは晴れたでしょう? その資金を渡したのは私です。ですから、口座凍結の判断は誤りだっと処理し、口座と金を返却してください」
「それはできません」
副店主は冷徹な表情を崩さず告げた。
終始穏やかな表情を貫いていたシーカーは、わずかに眉をしかめる。
「まさか、私自身に信用がない、私の出資した資金が不当に稼いだものだとでも言うつもりですか?」
「誠に申し訳ございません。それを証明する手段がない以上は……」
「それはおかしいのではないですか?」
「と、申しますと?」
「証拠がなければ動けないというのなら、ウィルムさんへの融資を打ち切ったのも同じはず。彼から聞いていますよ。彼が鉱石素材の取引で詐欺をしていたという証拠など、どこにもないと」
シーカーの言う通りだ。
ドラチナス金庫は事情を聞きもせず、強引に融資を打ち切って返済を求めてきた。
まるで、ウィルムを追いつめることが目的だとでも言うように。
しかし副店主は、表情を変えず淡々と頷く。
「おっしゃる通りです。しかし、ドラチナス領民の多くがウィルムさんの商売に不信感を抱いているのもまた事実。現に取引先もすべて失ったと聞きます。我々と同じく金貸しを生業としているあなたなら分かるでしょう? 信用のない者に融資はできない」
「ふむ、一理ありますね。しかし、なんとも愚かな民衆だ」
「愚か、ですか?」
シーカーの一言に副店主は戸惑う。
野次馬に混じって聞いていたウィルムも冷汗をかいていた。今のは明らかな失言に思えたのだ。
その証拠に、周囲の野次馬たちも青筋を立て、「ふざけんなこの野郎」と野次を飛ばしている。
しかしシーカーは、背後を振り向いて大声で言い放った。
「ならば問います。ここにいるあなた方は、その証拠とやらを出せるのですか!? なぜ、根拠もなしに罪のない者を追いつめることができるのですか!?」
その力強い言葉には、一本の太い芯が通っているように思えた。
問いに答えられる者はおらず、野次の勢いは衰え、やがて静まり返る。
愚かな民衆は、顔を見合わせたり、目を泳がせたりして、自分たちの罪から逃げようとしていた。
俯き考え込む者もいて、その中にはカエデの姿もあった。
シーカーはゆっくりと、野次馬たちへ冷徹で鋭い視線を這わせていった後、再び副店主へ顔を向ける。
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