サクリファイスリベリオン ~冤罪で追いつめられた元凄腕ハンターは、ギルドの陰謀を暴き人脈を駆使して復讐する~

高美濃 四間

文字の大きさ
38 / 66
第五章 生贄の反逆

不気味な咆哮

しおりを挟む
 ルークは協力者を求めていた。
 彼はギルドのやり方に対して強い疑念を抱いていたものの、熱心なギルド支持者である領主補佐官カドルの厳しい反発によって、大きくは動けなかったのだ。
 ルークの前任者はギルドの権力増大に危機感を抱いていたが、カドルの策略によって失脚した。
 脅威を感じた領主アンフィスは、若く正義感に燃え実力的にも頭一つ抜けていたルークを補佐官に任命し、現状の打破に期待しているのだという。
 
 ある日の深夜、本来なら寝ているはずのウィルムは来訪者と向き合っていた。
 テーブルを挟んで向かいのソファに座っているのは、フード付きの焦げ茶色のロングコートを羽織った騎士の男。
 コートから伸びた腕には、魔物の毛皮で編みこまれた籠手が装着されている。ガタイの良い短髪の大男だが、穏やかな表情を浮かべ、丁寧な口調で話す様子は騎士には見えない。
 だからこそ彼が来たのだろう。
 一般人を装ったこの男は、表立って動けないルークの腹心だ。

「ギルドはまだ資金援助を求めているんですか?」

「はい、相変わらずです。それだけでなく、カドル補佐官の圧力が強まっているようで、ルーク様もいつまで時間を稼げるか分からないとおっしゃっています」

「そうですか……」

 ウィルムはため息を吐く。
 現状は芳しくないようだ。
 いくら領主補佐官の一人を味方につけたからといって、そう簡単にギルドを倒せるわけではない。期待していた分、落胆はあった。
 とはいえ話を聞いていると、カドルという男は領主補佐官という立場にありながら、ギルドにくみし過ぎている。
 それは、ギルドの存在がドラチナスの経済を支える上で、最重要だと認識しているからか、それとも……

「カドル補佐官がギルドと裏で繋がっていると、ルーク様はお考えです」

 騎士はウィルムの考えを察したのか、先回りして告げる。
 
「やはりですか」

 ウィルムは頷き、難しい顔で俯いた。
 そうなると、ギルドを打倒するのはさらに困難と言える。
 しかしそこまで資金繰りに苦慮しているというのなら、そこが弱点になるのではないかとも考えられる。
 ウィルムも商人の立場からすれば、ギルド側の気持ちが分からなくもない。
 もし資金調達が必要なら、他地域の金融業者に借りるという手もある。しかしそうすると、金利も高くつく上に、下手すればギルドの支配が揺らぎかねない。
 結局は、留保されている領内財源から無償で支援を受けるほうが後々の財務に大きく影響が出るのだ。
 ウィルムはふと顔を上げる。

「このまま資金調達が受けられなければ、ギルドは勝手に潰れるのでは?」

「それは分かりませんが、ルーク様の望むところではありません。ギルドが資金難によって破産するということは、ドラチナスの市場を巻き込み経済恐慌を引き起こすでしょう。そうなれば、多くの市民が不幸に見舞われることになる」

 ウィルムは頬を歪ませて頭を抱えた。
 前途多難とはこのことか。
 だからこそ、ルークも極秘裏に練っている改革の実現性を上げる必要があるのだ。
 そのためには、ギルドが腐りきっている現状が……ドラチナスの害となっている決定的な証拠が必要だった。
 そしてそれこそ、ウィルムの成すべきこと。

「そう言えば、例の研究施設のことですが……」

「なにか分かりましたか!?」

 ウィルムは思わず身を乗り出す。
 彼がルークへ依頼していたのは、アビスを研究しているフローラの施設がどこかにあるのではないかという調査だった。
 ルーク自身も半信半疑ではあるが、調査には協力してくれている。
 しかしウィルムの期待とは裏腹に、騎士は残念そうに肩を落とした。

「詳しいことはなにも」

「そう、ですか……」

「ただ、奇妙な話を聞きました」

「奇妙な話?」

「なんでも、グレイヴ商会長の屋敷の近くで不気味な咆哮を聞いた者がいるのです」

「えっ!?」

「その者は怖くなってすぐに離れたそうですが、もしかすると――」

 ウィルムは目を見開き拳を握る。
 一筋の希望を見つけた気がした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】全60話 完結しました。読者の皆様ありがとうございます! 世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。 「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。 ・神話級ドラゴン  ⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺) ・深淵の邪神  ⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決) ・次元の裂け目  ⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い) 「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」 本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……? 「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー! 【免責事項】 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。

追放即死と思ったら転生して最強薬師、元家族に天罰を

タマ マコト
ファンタジー
名門薬師一族に生まれたエリシアは、才能なしと蔑まれ、家名を守るために追放される。 だがそれは建前で、彼女の異質な才能を恐れた家族による処刑だった。 雨の夜、毒を盛られ十七歳で命を落とした彼女は、同じ世界の片隅で赤子として転生する。 血の繋がらない治療師たちに拾われ、前世の記憶と復讐心を胸に抱いたまま、 “最強薬師”としての二度目の人生が静かに始まる。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

処理中です...