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第五章 生贄の反逆
余韻
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それからしばらく、フレアダイト鉱石は飛ぶように売れた。
噂を聞いた商人たちが次から次へと押しかけて来て、大量に仕入れた鉱石も日が暮れ始める頃には完売していた。
ルークが広場を去った後、ウィルムも売り手として加わったが、彼への嫌悪から客足が遠のくということもなく、おかげでエルダもフェアもヘトヘトだ。
もしかすると、エルフの美人姉妹がいたおかげなのかもしれない。
ウィルムは、ベンチにぐったりと座り込み休憩している二人へ深く頭を下げた。
「今日は本当にありがとうございました! 急な依頼にも関わらず大量のフレアダイト鉱石を仕入れてくれて、それだけでなく販売まで手伝って頂いて」
「いいのよ、ウィルム君。困ったときはお互い様だから。それに、君のカッコいい姿も見れて良かったわ」
エルダは頬に手を当て、うっとりと微笑む。
そう言われると、ウィルムはなんだか気恥ずかしくなって目を泳がせた。
横に座るフェアも、満面の笑みでうんうんと頷いており、彼女の頭をエルダが優しく撫でる。
「フェアも、『ウィルムさんを助けないと!』って張り切っていたものね」
「え? ちょっ、ちょっと!? お姉ちゃんは余計なこと言わないで!」
フェアは頬を赤くして咳払いすると、立ち上がりウィルムに目を合わせた。
「このくらいお安いご用です。ウィルムさんが頑張ってるのに、協力しないわけないじゃないですか。もっと頼ってくれてもいいんですよ?」
そう言ってフェアは上目づかいでウィルムを見上げ、いたずらっぽく微笑む。
ウィルムにとっては、この上なく頼もしく感じ、同時に愛しさが込み上げてきた。
「ありがとうフェア、本当に助かったよ」
「えへへぇ」
フェアは赤くなった頬に手を当てて幸せそうにはにかむ。
美人エルフ姉妹に癒され、達成感に浸っていると、ウィルムの視界に見慣れた後ろ姿が映った。
長い黒髪をポニーテールにし、背筋を伸ばして堂々と歩く後ろ姿。
カエデだ。
ウィルムは反射的に走り出し、カエデの元へ慌てて駆け寄った。
「カエデ!」
「っ!」
カエデはビクッと肩を震わせ固まった。
彼女はちょうど路地に差し掛かったところで、建物の下で影になっているため、今の時間帯ではよく見えない。
しかし誰かに見られる可能性も下がるため、今は好都合だ。
カエデは後ろを振り向かずに言った。
「ウィルム……ありがとう」
「それはこっちのセリフだよ。力を貸してくれてありがとう。それと、リサさんのことは、ごめん」
ウィルムは悲しげに声のトーンを下げ謝る。
これで、アビスとなってしまったカエデの親友を殺すことになるからだ。
たとえ正しい選択であっても、簡単に割り切れる問題ではない。
「……私にはなにも言う資格はないわ。でも、あなたを信じる」
「そうか……ありがとう」
ウィルムの礼を聞いて、カエデはそのまま立ち去って行った。
一抹の寂しさを覚えるが、これは復讐の道。
生贄となった仲間たちの仇を討つためには、あらゆる犠牲と痛みを乗り越えなければならない。
そしていつかは、カエデ自身も犠牲になるかもしれないのだ。
ウィルムは胸に闘気を宿し、無意識に拳を握りしめていた。
その後、エルダたちの元へ戻ると、フェアから「さっき話していたお姉さんは誰ですか!?」と切迫した表情で問い詰められた。
去り際の後ろ姿くらいしか見えなかったはずなのにと、ウィルムは彼女の勘の鋭さに驚く。
エルダは困ったように苦笑し、「恋する乙女は……」となにやら呟いていたがウィルムにはよく聞こえなかった。
頬を膨らませてジト目を向けてくるフェアに、ウィルムはタジタジしながら事情を説明するも、あまり納得してくれない。
なぜだか不倫のバレた夫の気分だ。
しかし日も暮れてきているため、エルダに早くイノセントへ戻るよう促した。
ここにいては、怒り狂ったギルド幹部に狙われる可能性があるからだ。
エルダは売り上げの一部をウィルムへ渡すと、「うぅ~」と涙目になっているフェアと日雇いのエルフを連れ、すぐにドラチナスを去るのだった。
噂を聞いた商人たちが次から次へと押しかけて来て、大量に仕入れた鉱石も日が暮れ始める頃には完売していた。
ルークが広場を去った後、ウィルムも売り手として加わったが、彼への嫌悪から客足が遠のくということもなく、おかげでエルダもフェアもヘトヘトだ。
もしかすると、エルフの美人姉妹がいたおかげなのかもしれない。
ウィルムは、ベンチにぐったりと座り込み休憩している二人へ深く頭を下げた。
「今日は本当にありがとうございました! 急な依頼にも関わらず大量のフレアダイト鉱石を仕入れてくれて、それだけでなく販売まで手伝って頂いて」
「いいのよ、ウィルム君。困ったときはお互い様だから。それに、君のカッコいい姿も見れて良かったわ」
エルダは頬に手を当て、うっとりと微笑む。
そう言われると、ウィルムはなんだか気恥ずかしくなって目を泳がせた。
横に座るフェアも、満面の笑みでうんうんと頷いており、彼女の頭をエルダが優しく撫でる。
「フェアも、『ウィルムさんを助けないと!』って張り切っていたものね」
「え? ちょっ、ちょっと!? お姉ちゃんは余計なこと言わないで!」
フェアは頬を赤くして咳払いすると、立ち上がりウィルムに目を合わせた。
「このくらいお安いご用です。ウィルムさんが頑張ってるのに、協力しないわけないじゃないですか。もっと頼ってくれてもいいんですよ?」
そう言ってフェアは上目づかいでウィルムを見上げ、いたずらっぽく微笑む。
ウィルムにとっては、この上なく頼もしく感じ、同時に愛しさが込み上げてきた。
「ありがとうフェア、本当に助かったよ」
「えへへぇ」
フェアは赤くなった頬に手を当てて幸せそうにはにかむ。
美人エルフ姉妹に癒され、達成感に浸っていると、ウィルムの視界に見慣れた後ろ姿が映った。
長い黒髪をポニーテールにし、背筋を伸ばして堂々と歩く後ろ姿。
カエデだ。
ウィルムは反射的に走り出し、カエデの元へ慌てて駆け寄った。
「カエデ!」
「っ!」
カエデはビクッと肩を震わせ固まった。
彼女はちょうど路地に差し掛かったところで、建物の下で影になっているため、今の時間帯ではよく見えない。
しかし誰かに見られる可能性も下がるため、今は好都合だ。
カエデは後ろを振り向かずに言った。
「ウィルム……ありがとう」
「それはこっちのセリフだよ。力を貸してくれてありがとう。それと、リサさんのことは、ごめん」
ウィルムは悲しげに声のトーンを下げ謝る。
これで、アビスとなってしまったカエデの親友を殺すことになるからだ。
たとえ正しい選択であっても、簡単に割り切れる問題ではない。
「……私にはなにも言う資格はないわ。でも、あなたを信じる」
「そうか……ありがとう」
ウィルムの礼を聞いて、カエデはそのまま立ち去って行った。
一抹の寂しさを覚えるが、これは復讐の道。
生贄となった仲間たちの仇を討つためには、あらゆる犠牲と痛みを乗り越えなければならない。
そしていつかは、カエデ自身も犠牲になるかもしれないのだ。
ウィルムは胸に闘気を宿し、無意識に拳を握りしめていた。
その後、エルダたちの元へ戻ると、フェアから「さっき話していたお姉さんは誰ですか!?」と切迫した表情で問い詰められた。
去り際の後ろ姿くらいしか見えなかったはずなのにと、ウィルムは彼女の勘の鋭さに驚く。
エルダは困ったように苦笑し、「恋する乙女は……」となにやら呟いていたがウィルムにはよく聞こえなかった。
頬を膨らませてジト目を向けてくるフェアに、ウィルムはタジタジしながら事情を説明するも、あまり納得してくれない。
なぜだか不倫のバレた夫の気分だ。
しかし日も暮れてきているため、エルダに早くイノセントへ戻るよう促した。
ここにいては、怒り狂ったギルド幹部に狙われる可能性があるからだ。
エルダは売り上げの一部をウィルムへ渡すと、「うぅ~」と涙目になっているフェアと日雇いのエルフを連れ、すぐにドラチナスを去るのだった。
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