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1 出会い
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「は、初めまして。僕はクリストフェル・ラグナータといいます」
おずおずと王子が手を差し出す。メイベルはニッコリと笑った。
幼い少年少女の初顔合わせ。その舞台となった庭園はみずみずしい若葉の香りに満ちていた。
メイベルの後れ毛が風に揺られ、王子の巻き毛にも同じ薫風が届く。
「こんにちは、王子様。わたくしはメイベル・プレナ。あなた様の可愛い婚約者ですわ!」
メイベルのふくふくとした手ががっしりと王子の手を両手で包む。ぶんぶんと勢いよく上下に揺すられ、王子はその勢いでよろける。
「まあ! なんてか弱くていらっしゃるの! わたくしが守って差し上げなくてはね!」
淑やかに取り繕うことなく、大口を開け、不遜な口ぶりでコロコロと笑う令嬢。
王子はぽうっと見惚れた。こんなにハッキリと物を言う令嬢は初めてだった。
だって王子は知っていた。自分が王子になんて相応しくないくらい、うじうじと優柔不断で弱虫なこと。
けれど周りの者はみな、「殿下は思慮深くていらっしゃる」とか、「広く民意に耳を傾けようとなされる寛大さ。まさしく天下人の器」だなんて幼い王子を持て囃す。
それらは果たして本心なのか。
いずれにしても、王子にとっては居心地の悪いものだ。
おべっかならば気が抜けぬし、心酔されているのならば、その者は事実を捻じ曲げ何も見えていない。
「僕を守ってくれるの? 君が?」
疑い深く、用心して眉をひそめながらも、王子の胸は期待に高鳴った。
メイベルは力強く上下させていた手を止める。メイベルによって握りしめられたままの手。ぎゅっと力が籠められ、王子はビクリと肩を揺らす。
「ええ! だってわたくしは、素敵レディ王国ナンバーワン(当社比)ですもの。わたくしが王子様の婚約者となったのです。必ずや、お幸せにしてさしあげますわ!」
「カッコトウシャヒ? カッコトジル?」
自信に満ち満ちた少女の繰り出す、呪文のような文句。初めて聞く言葉だ。
王子は首を傾げた。
「ええ! わたくしが史上最高傑作の、素晴らしい令嬢だというとことですわ、王子様」
なるほど、それならわかる。王子は頷いた。
雲間から差し込む白く眩しい陽光にも増して、メイベルは小さな白い歯をキラキラと輝かせていた。
おずおずと王子が手を差し出す。メイベルはニッコリと笑った。
幼い少年少女の初顔合わせ。その舞台となった庭園はみずみずしい若葉の香りに満ちていた。
メイベルの後れ毛が風に揺られ、王子の巻き毛にも同じ薫風が届く。
「こんにちは、王子様。わたくしはメイベル・プレナ。あなた様の可愛い婚約者ですわ!」
メイベルのふくふくとした手ががっしりと王子の手を両手で包む。ぶんぶんと勢いよく上下に揺すられ、王子はその勢いでよろける。
「まあ! なんてか弱くていらっしゃるの! わたくしが守って差し上げなくてはね!」
淑やかに取り繕うことなく、大口を開け、不遜な口ぶりでコロコロと笑う令嬢。
王子はぽうっと見惚れた。こんなにハッキリと物を言う令嬢は初めてだった。
だって王子は知っていた。自分が王子になんて相応しくないくらい、うじうじと優柔不断で弱虫なこと。
けれど周りの者はみな、「殿下は思慮深くていらっしゃる」とか、「広く民意に耳を傾けようとなされる寛大さ。まさしく天下人の器」だなんて幼い王子を持て囃す。
それらは果たして本心なのか。
いずれにしても、王子にとっては居心地の悪いものだ。
おべっかならば気が抜けぬし、心酔されているのならば、その者は事実を捻じ曲げ何も見えていない。
「僕を守ってくれるの? 君が?」
疑い深く、用心して眉をひそめながらも、王子の胸は期待に高鳴った。
メイベルは力強く上下させていた手を止める。メイベルによって握りしめられたままの手。ぎゅっと力が籠められ、王子はビクリと肩を揺らす。
「ええ! だってわたくしは、素敵レディ王国ナンバーワン(当社比)ですもの。わたくしが王子様の婚約者となったのです。必ずや、お幸せにしてさしあげますわ!」
「カッコトウシャヒ? カッコトジル?」
自信に満ち満ちた少女の繰り出す、呪文のような文句。初めて聞く言葉だ。
王子は首を傾げた。
「ええ! わたくしが史上最高傑作の、素晴らしい令嬢だというとことですわ、王子様」
なるほど、それならわかる。王子は頷いた。
雲間から差し込む白く眩しい陽光にも増して、メイベルは小さな白い歯をキラキラと輝かせていた。
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