最後のリゾート

ジョン・グレイディー

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第十章

神父への告白

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 彼は自宅マンションの最寄り駅で電車を降り立ち、教会に向かった。

 彼がこれから向かう教会は駅から徒歩5分と近く、彼は既に3回ほど行ったことがあった。

 最初に行ったのは、今のマンションに引越して来た、2年前の4月初めの日曜日であった。

 彼はカトリック教徒ではなかったが、転勤した新転地では、先ず始めに、住居近くのカトリック教会を探すことが常であった。

 なぜならば、彼女の命日に、彼女が信者であったカトリック教会に祈りを捧げに行く必要があったからだ。

 転居最初の日曜日、彼は予めネットで調べ目星を付けていた教会のミサを見学しに行った。

 その教会は、イエズス会に属し、建物は小さく、1階はパンフレットなどが置かれた机が1つだけある狭い玄関間であり、2階に祭壇の部屋があった。

 祭壇部屋の広さは、4人かけの机が中央の通路を挟み、両脇に縦5列で並べられていた。

 その日は大勢の信者がミサに来ており、机に座れない人が部屋後ろの空間に溢れかえっていた。

 ミサに来ている人は、ラテン系の外国人が大半を占め、説教をしてる神父も外国人であった。

 彼は祭壇部屋の中には入らず、ドア越しに中の様子を見ていた。

 ミサが終わり、多くの信者が部屋から出て行った。

 告解を行う人は、机に座り順番を待っていた。

 彼はやっとできた部屋後ろの空間に移動し、祭壇に飾られた十字架を見つめ、

 そして両側の壁に飾られている十字架の道行の14場面を見終わると、

 祭壇部屋を出て、1階に降りて行き、パンフレットを取ろうとした。

 すると、机の後ろに信者らしき受付人の女性が座っていた。

 その受付人は、やはり外国人であった。

 そして、机の上には、パンフレットの他に綺麗なステンドグラスを彩った栞が販売されていた。

 彼はパンフレットを一冊取り、受付人に栞を1枚欲しいと言い、料金を聞き、お金を手渡した。

 彼が礼を言い、帰ろうとすると、受付人は、彼を呼び止め、机の下の箱からカトリック祈祷書のポケット判を差し出した。

 彼はそれを受け取り、代金は幾らかと聞き、お金を払おうとしたが、受付人は、笑みを浮かべ、片言の日本語で、要らない、と言った。
 
 彼は受付人に、再度、礼を言い教会を出て、教会屋根に聳え立つ立派な十字架を眺めた。

 今、彼はその十字架を見ながら教会に向かっていた。

 教会に着くと、玄関は無防備に開いていた。

 1階には、あの受付人がパンフレットと栞を置いた机の後ろに座っていた。

 彼と目が合うと受付人は立ち上がり笑みを浮かべた。

 彼は受付人に神父に会いたいと言った。

 受付人は首を傾げ、神父様は2階と言い、階段を指さした。

 彼は受付人に礼を言い2階に上がって行った。

 受付人は彼を止めようともせず、また、何事もなかったかのように椅子に座り直した。

 彼が祭壇部屋に入ると、神父は祭壇台で何かに目を通していた。

 彼はゆっくりと中央の通路を歩きながら、神父と目が合うのを待った。

 神父は彼の存在に気づき、顔を上げ、柔かな笑顔を見せた。

 彼も一礼をし、祭壇台の前まで歩いて行った。

 神父は彼に、何か御用ですかと、片言の日本語で尋ねた。

 彼は神父に向かって、告解をしたいです。と言った。

 神父は驚きもせず、慣れた様子で、貴方は洗礼、受けてますか?と彼に問うた。

 彼は、洗礼は受けていませんと、神父に答えた。

 神父は彼に、洗礼を受けなければ告解はできません。と優しく諭した。

 彼は神父に、洗礼は今からできますか?と尋ねた。

 神父は、洗礼は直ぐにはできません。
 聖書を勉強してもらい、それから洗礼式を行います。聖書の勉強は1年ぐらいかかります。
 といった内容を彼に説明した。

 彼は神父に言った。

 私には時間がありません。と

 神父は何も言わず、彼の瞳をじっと見つめていた。

 そして、神父は彼に言った。

 貴方は罪を犯したのですか?と

 彼は、はい。とだけ答えた。

 神父は下を向き、何かを考えているみたいであった。

 それから、神父はやっと顔を上げ、彼を見て、こう言った。

 貴方の罪は大罪ですか?と

 彼は言った。

 はい。大罪です。大切な人を死なせました。と

 神父は言った。

 分かりました。こちらにどうぞ。と言い、彼を告解部屋に導いた。

 告解部屋は狭く、丸椅子が一つ置かれていた。

 彼が丸椅子に座ると、1つだけあった小窓のカーテンがジャーと言う音を立て閉められた。

 神父の声がカーテン越しに聞こえてきた。

 貴方は神を信じ、神に祈りなさい。神は必ず貴方の犯した罪を御許しになさいます。と言い、
 
 彼に、それでは罪を告白してくださいと言った。

 彼はゆっくりと告白を始め出した。
    まるで物語を語るように。

 彼と彼女が付き合い始めてから1年が経とうとした夏の土曜日、あの出来事が起こった。

 彼と彼女との付き合い方は、遠距離恋愛であったため、正月休みなどで地元に居る時を除き、月1回程度のペースで逢っていた。

 ほとんどが、彼が彼女のアパートに行くことが多く、交通手段は新幹線であれば30分程度で行けたが、貧乏学生であった彼には月1回が限度であった。

 そのような形でお互いの愛を確かめ合っていたが、その年の春、彼が自動車を手に入れた。

 車は三菱ミラージュで、中古車ではあったが、彼が憧れていたカーステレオだけは、立派なものが備え付けられていた。

 それからの2人のデートは一新し、月2回のペースとなった。

 デートのパターンは、土曜日、彼が高速道路を片道2時間半かけて、彼女のアパートに迎えに行き、彼女を車に乗せ、
 いろいろ寄り道しながら彼のアパートに行くといったものであった。

 その土曜日も彼は予定どおりアパートを昼過ぎに出発し、彼女のアパートに午後3時頃到着した。

 一時の間、彼女のアパートで休憩して、午後5時頃、そこを出発した。

 高速道路に乗り、途中、山間のリゾート地を目指し、最寄りのインターて降り、風光明媚な国道を北上して行った。

 夕食は、いつもの蕎麦屋に立ち寄り、名物の瓦そばを2人で箸を交えながら楽しく食べていた。

 彼女も彼と付き合い始め、今までの体調不良が嘘のように回復し、無事に進級できていた。

 蕎麦を食べながら、彼女はこう言った。

 私、欲しいものがあるのと

 彼は箸を止め、何が欲しいの?と彼女に聞いた。

 彼女は、こう言った。

 今から行くリゾート地に「梟」をモチーフにした雑貨屋がある。
 そこで、2人一緒のマグカップを買いたいと言う。

 彼女は、これからも彼と幸せに付き合って行きたいから、
 福を呼ぶ「梟」が絶対に幸せを呼ぶと彼に力説した。

 彼はそんな彼女がとても愛おしく感じ、

 良いよ!行こう!買ってあげるね。
 と優しく答えた。

 彼女はとても喜び、急いで行かなきゃと、慌てて、残りの蕎麦を食べ出した。

 2人が蕎麦屋を出たのが既に午後7時を回っていた。

 ここからその雑貨屋まで1時間はかかりそうなので、
 彼は彼女に、
 その店、何時まで開いてるの?と聞いた。

 彼女は、心配御無用とばかりに、
 私、調べたんだ!土曜日はね、午後9時まで営業してるのだ!
 と胸を張った。

 彼は、それならゆっくり行くか!と言い、
 上げ出した車のスピードを落として、カーデッキにカセットテープを押し込んだ。

 カーステレオからイーグルスのホテル・カルホルニュアが流れてきた。

 彼女は、いい曲だよねぇ~と言った。

 彼は彼女に、
 この曲、刹那感があるけど、歌詞的には病んでるアメリカ、妄想と現実の違いを歌ったサイコパス的な内容なんだ!
 とうんちくを語り出した。

 すると、彼女は、英語、わかるの?と言った。

 彼は、いや~、和訳を覚えたんだよ。と言った。

 彼女は、だよねぇ~、英語苦手だもんね~と彼を冷やかした。

 彼は苦笑いを浮かべた。

 午後8時過ぎにその「梟」の雑貨屋に到着した。

 彼女は急いで車を降りて、店に向かって走って行った。

 彼は車の鍵を閉め、ゆっくり歩いて雑貨屋に入って行った。

 小さな店ではあったが、ペンダント、ワッペン、ハンカチ、小物入れなど、全て、可愛い「梟」がモチーフとなっていた。

 彼女はお目当てのマグカップの置かれたコーナーに居た。

 彼が彼女の側に行った時、既に彼女は同じマグカップを2つ持っていた。

 そして、近づいて来る彼に向かって、

 これ良いでしょう!これ買って!と叫んだ。

 彼は、決めるの早いなぁ~と彼女に言うと

 彼女は、
 もうね~、決めていたの!ネットで調べてね!
 と大きな目をキラキラさせながらマグカップを眺めた。

 彼はそのマグカップを受け取り、会計を済ませ、包みを彼女に渡した。

 そして2人は、もう用件はないかのように、さっさと店を出て、車に乗り込んだ。

 この雑貨屋を出たのが午後8時30分くらいであった。

 ここから彼のアパートまでは2時間ぐらいであった。

 だが、2人はいつも、リゾート地の隣にあるダム湖に寄り道し、

 湖を見ながら休憩してから、彼のアパートに向かうのが慣わしとなっていた。

 車内では、彼女がマグカップの包みを胸に押し付けるよう大事に持っていた。

 彼は彼女に、
 そんなに持たなくても大丈夫だよ!シートベルトが緩むぞ!と言ったが、

 彼女は、
 駄目なの。これはね、貴方のアパート用にするの。
 
 私がこれからも元気に貴方のアパートに行けるように「福」を呼ぶのだ!と戯けて、
 彼の言うことを聞かなかった。

 そんな感じで、9時半頃、いつものダム湖を一周する県道に出た。

 カーステレオからは、カセットテープに登録した最後の曲

 イーグルスのThe Last Resort が流れていた。

 また、彼がうんちくを話し出し、先と同じように彼女は彼を冷やかしていた。

 その県道は、
 山道の一方通行の一車線ではあるが、
 直近にダム湖が見え、月夜は水面に月が綺麗に映ることから、
 若いカップルのデートコースとして人気があった。

 そのダム湖から彼のアパートまでは、峠を越え、一山越えての1時間ぐらいであったが、

 その峠は、九州の走り屋のメッカとし有名であり、
 土曜日の夜は、九州各県から走り屋が飛ばしに来ていた。
 中には暴走族も加わり、自動車事故が多発していた。

 彼は、ダム湖からの帰りは、その峠を避けて、有料のトンネルを通ることとしていた。

 大事な彼女を乗せていることはもちろんのこと、

 彼は高校1年生の時、野球部のバッティング練習中に、顔面にデッドボールを喰らい、左眼が弱視となったこともあり、
 あまり夜の運転は得意ではなかったのだ。

 ダム湖の真上に月が輝いていた。

 彼の車はゆっくりと県道を北上し、舟屋の桟橋を目指していた。

 いつもその桟橋に2人で座り、月夜を見るのがとてもロマンチックであった。

 彼の車は舟屋を通り過ぎて、50メートル先の駐車スペースに向かう坂道を登っていた。

 その時、いきなり2つのヘッドライトが見え、彼の車に迫ってきた。

 その車は逆走していた。そして、かなりのスピードを出していた。

 彼はハッとし、急いでハンドルを左に切った!

 逆走車の右フロントが彼の車の右側ドアに激突した。

 その衝撃で彼はハンドルを取られた。

 彼女が叫んだ!

 電柱にぶつかる!と

 彼は右にハンドルを切った。

 車は左のドアミラーを電柱にぶつけながら、目の前に現れた白いガードレールに突っ込んだ!

 彼の体は強ばり、言葉も出なかった。

 車がガードレールに激突した瞬間、フロントガラスが粉々に破れ、彼女は悲鳴を上げた。

 車は更に竹を薙ぎ倒し、2人の頭を天井にぶつけながら、二転三転と転がり落ち、止まった。

 次の瞬間、彼は足の裏が冷たくなるのを感じた。

 あっと言う間であった。

 2人の体はみるみると水に覆われ、車ごと沈んで行った。

 彼は瞬時に悟った。

 ここは湖の中だ!と

 瞬く間に車は2人を乗せたまま、エレベーターのように垂直に沈んで行く。

 急に車が止まった。

 彼は彼女を見た!

 彼女も彼を見ていた。

 彼は彼女にフロントの窓から出るよう手で合図した。

 彼はシートベルトを外し、彼女の右手を掴んだ。

 彼女もシートベルトを外し、彼の左手を握りしめた。

 彼は彼女の手を強く握り、フロントの窓から右手で水を掻き、飛び出した。

 彼女の体もフロントから抜け出した、その時、彼女の動きが止まった。

 彼女のサマーセーターに何かが引っ掛かった。

 彼はサマーセーターを脱がそうとした。

 しかし、水を吸い込んだセーターは彼女の体にゴムのように引っ付き、脱がすことができなかった。

 彼は脱がすことを諦め、彼女の手を強く握り、力ずくに彼女を引っ張った。

 その時、彼女の手が彼の手から外れた。

 彼女はまた吸い込まれるように車の中に引き込まれた。

 彼は踠いている彼女の元に戻り、もう一度、彼女の手を掴もうと腕を伸ばした。

 しかし、彼女は懸命にセーターに引っ掛かった箇所を外そうとし彼の腕に気づかない。

 この時、既に彼も彼女も息が限界に近づいていた。

 彼は車のボンネットを強く叩いた!

 彼女は彼に気づいた。

 そして、彼は彼女に向かって叫ぶように指で合図した。

 俺の腕を掴め!と

 彼の体は最早、浮力により車の中までは潜ることができなかった。

 彼女は懸命に彼の腕を掴もうとしたが届かなかった。

 彼は彼女に左足を突き出した。

 そして、また叫ぶように指で合図した。

 俺の足を掴め!と

 彼女は、懸命に彼の左足を掴んだ。

 彼は最後の力を振り絞り、上を目指し、右足と右手で水を懸命に掻いた。

 彼女の体がフロントの窓から抜け出し、セーターが破れかけた、

 その瞬間、車がガタンと右に傾き、その下の真っ黒な闇の中に崩れ落ちた。

 彼らの車は、ダム湖の水中棚で止まっていたが、2人が脱出する動力により棚からズレ落ちたのだ。

 彼は下を見た。

 彼女の手は彼の左足首をしっかり掴んでいた。

 彼はそれを確認して上を向き、一生懸命、水を掻いた。

 その時、彼の左足首に物凄い引力がかかった。

 車が湖の底を本格的に目指し出したのだ!

 その瞬間、ほんの一瞬、彼は引力に反動してしまい、左足を上げるように曲げようとした。

 その時、彼女の手が彼の左足首から外れた。

 彼の体は、バネの反動のように、すっと上方向に跳ね上がった。

 彼は下を見た!

 月光が僅かに差し込んだ水中の中、はっきりと沈んで行く彼女の顔が見えた。

 彼女は何かを彼に叫びながら、湖の底に消えていった。

 そこから、水面に浮上するまでの間、彼の記憶はない。

 意識が戻った時は、舟屋の桟橋に寝かされ、パトカーと救急車の赤色警光灯の点滅が朧げに見えた。

 そして、彼は我にかえり、あの光景が眼前に現れた。

 沈んで行く、彼女の顔が

 彼は茫然とした。

 そして思った。

 あの時、あの瞬間、俺の左足が彼女を蹴った。

 「俺が彼女を死なせた。」と

 彼の脳裏には、その言葉のみが、木霊のように鳴り響いた。
 
 

 
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