優しい夜のうた

第10章 壊れた夢

四角関係？

「あのね、お姉ちゃん。美夜は、お父さんのこと、好きなの。許してあげてよ」

と無邪気な笑顔で美夜が言い出すと、私は驚いて美夜を見つめた。

「美夜…！だってあの人に叩かれたりしたでしょ？ほんとに美夜を好きだったら、そんなことしないのよ！」

「美夜がいけないの。美夜が悪い子だから、ぶたれたのよ。お父さん、悪くないんだよ」

美夜はそう言いながら、泣きそうに瞳を潤ませて言うと、私はたまらずに美夜を抱きしめた。

違うよ。美夜、違うの。美夜は、悪くないんだよ。




＊

圭太くんと美夜を学校に送ると、私は小さくため息をついて振り向いた。すると、そこには祐が立っていて、優しく微笑んでいる。私は祐に歩み寄り、祐はそんな私の手を繋いでくれて、私達は肩を寄り添いながら歩いていった。

二人でやってきたのは、滋先輩が入院している病院。私は胸を痛めて勇気がしぼんでしまうけれど、ちゃんと、謝りたかったし、お礼も言いたかった。

病室のドアをノックすると、

「はい？」

と若い女性の声が聞こえて、私と祐は顔を見合わせると、ゆっくりとドアを開けた。すると、そこには仏頂面の滋先輩と、見舞いに来たらしい元カノ（？）の玲さんがいた。すると、滋先輩は驚いて私達を見て、玲さんと祐も驚いてお互いの顔を見合わせた。

「玲…！お前、こんなとこで何やってるんだ…！？」

と祐が言いながら玲さんに歩み寄ると、玲さんもそんな祐に飛び付いて、

「生きてたのね！良かった、祐！」

と言いながら笑っている。すると、滋先輩は深いため息をつくと、

「いいとこに来たよ。玲、どっか連れてって。うざい」

と相変わらず彼女には冷たい。すると、祐は肩をすくめて玲さんの腕を掴んだ。

「お前、今度は何を企んでるんだ？」

祐の言葉に、私は驚いて玲さんを見つめると、玲さんはニヤッと笑いながら私を見た。