優しい夜のうた

第13章 見失った未来

友達になりたかった

そこに、渡部雪子と坂井理がノックして現れると、滋たちも現れた二人を見て、

「よぉ。どうなった？」

と滋が尋ねると、坂井は雪子と顔を見合わせて眉根をひそめて、再び滋を見つめた。

「美夜ちゃんが、立証してくれるって。だから、萌梨ちゃんは正当防衛が認められる。美夜ちゃんは、必要ならばビデオを使ってほしいって。しっかりしてるし、何よりも萌梨ちゃんを救おうとしてる。そのお陰で、梶原の罪状は増していく一方だ。会社の倒産も時間の問題だろう」

坂井はそう言って、強気な笑みを浮かべると、今度は範子が渡部雪子を見た。

「…で、あの子は、どうなったの？意識は？面会謝絶は取れたんだろう？」

範子は溜め息混じりに訊ねると、雪子は肩をすくめた。

「…手術は成功してるし、傷口や内臓の損傷に問題はないんだけど……精神的な問題かもって、先生が言ってた」

すると、滋は唇を噛み締めながら、

「…大丈夫…！萌梨は、目を覚ますよ。俺、信じてる。祐さんと幸せになるんだ。じゃなきゃ…かわいそうだろ…！」

と嘆くように言うと、雪子は頷いて滋を見つめた。

「今は、未来を見失ってるだけよね。私も、梶原さんが目を覚ますのを待ってる。目を覚ましたら、言いたいことがあるのよ」

「なんだよ。言いたいことって」

と滋が雪子を見つめて尋ねると、雪子は微笑んだ。

「内緒！」


言いたいことは、山ほどあるけど、今言いたいのは……。

友達になりたいってこと。

ううん。私はずっと友達だと思ってきた。だから、これからも友達だってことを、ちゃんと伝えたいの。


だから、萌梨。


必ず、返ってきて………。