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第三章 騎士伯の称号
41.まさか!そんな……
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部屋に戻ると窮屈だったドレスを脱ぎ捨て、そのままベッドにダイブした。
お兄ちゃんに『お姫様みたい』なんて褒めてもらった淡い水色のドレス、ほっぺが緩みっぱなしで口が閉まらないくらい嬉しかった。
けどやっぱり私には向いていないと思う。貴族の娘として晩餐会で色んな男の人と喋ったりダンスしたりしているより、冒険者としてお兄ちゃんと一緒に魔物狩りをしていた方が何倍も楽しく感じる。
「はぁ、疲れた……お兄ちゃん、今日は帰ってくるのかなぁ」
仰向けにベッドに寝転んだまま枕元に置いてあったシャロさんにもらった短剣シュネージュを取り出し鞘から抜いてみる。
現れたのは曇りなき薄青色のガラスのような剣身。
「貴女はいつ見ても綺麗よね、羨ましいわ」
最近、寝る前にはこうして眺めるのが日課になってきた。だって本当に綺麗なんだもん。
「お風呂入ろっ」
一人でお風呂に入り髪を乾かすと、ネグリジェを着て鏡の前に立った。お兄ちゃんと初めてした時に着ていたネグリジェ、あの時コレを着て部屋に入った私を凄くエッチな目で見ていたのを私は知っている。多分この服を気に入ってくれてると思うの。
一回りして背中やお腹周りのチェック、ちゃんと見せられる身体かどうか自分に問うが数日運動してないけど弛みは大丈夫。
確認が終わると、ほんの少しだけ香水を付けた。あまり付けないけどお兄ちゃんは良い匂いだと言ってくれた物だ。
音を立てないようこっそり開けた扉、覗いた廊下に人影はなかった。
──ちゃーんすっ!
素早くお兄ちゃんの部屋へと滑り込む。ふぅぅっ……こんな格好見つかったら何言われるか分かんないもんね。すぐ隣とはいえ ドキドキ したよ。
布団に潜り今日帰って来るかどうかも分からないお兄ちゃんを待つことにした。
慣れない晩餐会で疲れているのに国王陛下に呼ばれるなんて……それはもうヘロヘロになって帰って来るんだろうなぁ。そしたら私が癒してあげなきゃねっ、だって婚約者だもの。昼間お父様達に邪魔されて出来なかったから私もしたいんだぞ?
「早く帰って来て……レイシュア……」
△▽
目を開ければ窓から差し込む暖かな光、いつのまにか寝てしまっていたらしい。
「お兄ちゃん?」
ベッドにお兄ちゃんの姿がなかったので部屋中探し回ったけど帰ってきた様子もない。
──そうだ、お父様も一緒に行ったんだった。
お母様に聞いてみようと思いベッドから出たところで自分の格好に気が付いた……やばい。これは流石にやば過ぎる。
バスルームから取り出したガウンを羽織ると脱兎の如く自分部屋に駆け込んだ。
これまた運が良かったのか廊下には誰もおらず、何事も無かったかのように着替えを済ませてお母様の所に行くとお父様も一緒に居た。
──あれ?お父様は居るのに、お兄ちゃんは?
「お父様、今帰って来たの?」
「おはようモニカ。今なわけがないだろ?何でそんなこと聞くんだい?」
あれれ?お兄ちゃんは何処で道草食ってるんだろう?知らない女の人の部屋かな?そう思うとチクリと胸に痛みが走る。ううん、大丈夫。私が良いって言ったんだから……いいの。
「お兄ちゃん居なかったんだけど、知らない?」
「おや?昨日は私より先にアレクと帰ったが……アレクの所にでも泊まったのか?」
その時でした。扉がノックされ、今の今、噂をしていたアレクシス王子が入って来たのです。
いつものほんわかとした雰囲気とは違いノックの返事も待たずに入って来たアレクシス王子、慌てているのは明らかでした。
「大変です!レイが拘束されました。罪状は夜間の後宮への侵入です。
今は地下牢に入れられているそうなのでが、すぐに父上のところに来て頂けますか?」
えぇっ!お兄ちゃんが地下牢!?どうしてそんな事に?
何かの間違いかと思いたい一心でお父様とアレクシス王子に付いて国王陛下の待つ執務室へと急いだ。
「おはようっ。みんなで慌ててどうしたのですか?」
「サラッ!お兄ちゃんが!お兄ちゃんが捕まったって!どうしようっ……私どうしたらいいの?」
驚くサラの手を説明もないままアレクシス王子が引き、国王陛下の部屋へと駆け込めばメイド長達が勢揃いしていた。
「来たな。さて、話は聞いていると思うがハーキース卿が何者かの陰謀に嵌り拘束されている。罪状は夜間の後宮への侵入だ。この罪は厳罰と昔からの決まりだ。
それでだ、私は友人の一人として彼の無実を証明したい。しかし問題は彼が後宮に入ったというのが事実だということだ。つまり無罪放免はほぼ不可能。
彼の釈明ではメイドに案内されたのだと告げたらしい、この中で何か情報のある者はいるかね?」
厳罰って、なに?無罪放免は無理?じゃあお兄ちゃんはどうなるの?
「そ、んな……お父様、後宮に入っただけでそんな罪になるの?ただ入っただけじゃない!?少し喋ってすぐ帰って行ったわ!厳罰って、彼はどうなるの?お兄様、彼は助けられないの!?」
事実を聞かされ私と同じでパニック気味になっているサラ、お兄ちゃんを心配してくれて少しだけ胸の支えが和らいだ気がする。
「落ち着きなさい、我々が焦っても始まらない。後宮とは我等王族の住居となっておる。そこに夜間立ち入るということは良からぬ考えがあるとみなされるのだよ。
昨夜レイシュアと後宮のバルコニーで話したそうだね?もしその相手がレイシュアではなく、例の男爵の長男だとしたらどうだ?お前が無事でいられた保証はないだろう?
そういった事の無いように決まり事があるんだよ。それを知らなかったとはいえ禁忌を破ってしまった、これは紛れもない事実なのだ。
それと厳罰と濁したが、ほぼ確定で死罪となる。それだけは断じて阻止せねばなるまい」
──死罪
音を立てて引いて行く血の気、身体から力が抜け落ち目の前が真っ暗になる。
お兄ちゃん……死んじゃうの?居なくなっちゃうの?やっと想いを告げて、結婚の許しも得たのに?そんなの嫌よ!お兄ちゃんの居ない世界でなんて生きていけない!!!
「モニカ嬢!」
遠くでアレクシス王子の声が聞こえた気がした。あぁ……私、立っていられなくなったんだ。
「大丈夫ですか?さぁここに座って。気を確かに持ってください。
レイは私の友人だ。サルグレッド第一王子の名にかけて彼を助けると約束します。父上も御慈力くださる、だからご安心を」
アレクシス王子が支えてくれたみたい……ありがとう、優しいね。
お兄ちゃんに『お姫様みたい』なんて褒めてもらった淡い水色のドレス、ほっぺが緩みっぱなしで口が閉まらないくらい嬉しかった。
けどやっぱり私には向いていないと思う。貴族の娘として晩餐会で色んな男の人と喋ったりダンスしたりしているより、冒険者としてお兄ちゃんと一緒に魔物狩りをしていた方が何倍も楽しく感じる。
「はぁ、疲れた……お兄ちゃん、今日は帰ってくるのかなぁ」
仰向けにベッドに寝転んだまま枕元に置いてあったシャロさんにもらった短剣シュネージュを取り出し鞘から抜いてみる。
現れたのは曇りなき薄青色のガラスのような剣身。
「貴女はいつ見ても綺麗よね、羨ましいわ」
最近、寝る前にはこうして眺めるのが日課になってきた。だって本当に綺麗なんだもん。
「お風呂入ろっ」
一人でお風呂に入り髪を乾かすと、ネグリジェを着て鏡の前に立った。お兄ちゃんと初めてした時に着ていたネグリジェ、あの時コレを着て部屋に入った私を凄くエッチな目で見ていたのを私は知っている。多分この服を気に入ってくれてると思うの。
一回りして背中やお腹周りのチェック、ちゃんと見せられる身体かどうか自分に問うが数日運動してないけど弛みは大丈夫。
確認が終わると、ほんの少しだけ香水を付けた。あまり付けないけどお兄ちゃんは良い匂いだと言ってくれた物だ。
音を立てないようこっそり開けた扉、覗いた廊下に人影はなかった。
──ちゃーんすっ!
素早くお兄ちゃんの部屋へと滑り込む。ふぅぅっ……こんな格好見つかったら何言われるか分かんないもんね。すぐ隣とはいえ ドキドキ したよ。
布団に潜り今日帰って来るかどうかも分からないお兄ちゃんを待つことにした。
慣れない晩餐会で疲れているのに国王陛下に呼ばれるなんて……それはもうヘロヘロになって帰って来るんだろうなぁ。そしたら私が癒してあげなきゃねっ、だって婚約者だもの。昼間お父様達に邪魔されて出来なかったから私もしたいんだぞ?
「早く帰って来て……レイシュア……」
△▽
目を開ければ窓から差し込む暖かな光、いつのまにか寝てしまっていたらしい。
「お兄ちゃん?」
ベッドにお兄ちゃんの姿がなかったので部屋中探し回ったけど帰ってきた様子もない。
──そうだ、お父様も一緒に行ったんだった。
お母様に聞いてみようと思いベッドから出たところで自分の格好に気が付いた……やばい。これは流石にやば過ぎる。
バスルームから取り出したガウンを羽織ると脱兎の如く自分部屋に駆け込んだ。
これまた運が良かったのか廊下には誰もおらず、何事も無かったかのように着替えを済ませてお母様の所に行くとお父様も一緒に居た。
──あれ?お父様は居るのに、お兄ちゃんは?
「お父様、今帰って来たの?」
「おはようモニカ。今なわけがないだろ?何でそんなこと聞くんだい?」
あれれ?お兄ちゃんは何処で道草食ってるんだろう?知らない女の人の部屋かな?そう思うとチクリと胸に痛みが走る。ううん、大丈夫。私が良いって言ったんだから……いいの。
「お兄ちゃん居なかったんだけど、知らない?」
「おや?昨日は私より先にアレクと帰ったが……アレクの所にでも泊まったのか?」
その時でした。扉がノックされ、今の今、噂をしていたアレクシス王子が入って来たのです。
いつものほんわかとした雰囲気とは違いノックの返事も待たずに入って来たアレクシス王子、慌てているのは明らかでした。
「大変です!レイが拘束されました。罪状は夜間の後宮への侵入です。
今は地下牢に入れられているそうなのでが、すぐに父上のところに来て頂けますか?」
えぇっ!お兄ちゃんが地下牢!?どうしてそんな事に?
何かの間違いかと思いたい一心でお父様とアレクシス王子に付いて国王陛下の待つ執務室へと急いだ。
「おはようっ。みんなで慌ててどうしたのですか?」
「サラッ!お兄ちゃんが!お兄ちゃんが捕まったって!どうしようっ……私どうしたらいいの?」
驚くサラの手を説明もないままアレクシス王子が引き、国王陛下の部屋へと駆け込めばメイド長達が勢揃いしていた。
「来たな。さて、話は聞いていると思うがハーキース卿が何者かの陰謀に嵌り拘束されている。罪状は夜間の後宮への侵入だ。この罪は厳罰と昔からの決まりだ。
それでだ、私は友人の一人として彼の無実を証明したい。しかし問題は彼が後宮に入ったというのが事実だということだ。つまり無罪放免はほぼ不可能。
彼の釈明ではメイドに案内されたのだと告げたらしい、この中で何か情報のある者はいるかね?」
厳罰って、なに?無罪放免は無理?じゃあお兄ちゃんはどうなるの?
「そ、んな……お父様、後宮に入っただけでそんな罪になるの?ただ入っただけじゃない!?少し喋ってすぐ帰って行ったわ!厳罰って、彼はどうなるの?お兄様、彼は助けられないの!?」
事実を聞かされ私と同じでパニック気味になっているサラ、お兄ちゃんを心配してくれて少しだけ胸の支えが和らいだ気がする。
「落ち着きなさい、我々が焦っても始まらない。後宮とは我等王族の住居となっておる。そこに夜間立ち入るということは良からぬ考えがあるとみなされるのだよ。
昨夜レイシュアと後宮のバルコニーで話したそうだね?もしその相手がレイシュアではなく、例の男爵の長男だとしたらどうだ?お前が無事でいられた保証はないだろう?
そういった事の無いように決まり事があるんだよ。それを知らなかったとはいえ禁忌を破ってしまった、これは紛れもない事実なのだ。
それと厳罰と濁したが、ほぼ確定で死罪となる。それだけは断じて阻止せねばなるまい」
──死罪
音を立てて引いて行く血の気、身体から力が抜け落ち目の前が真っ暗になる。
お兄ちゃん……死んじゃうの?居なくなっちゃうの?やっと想いを告げて、結婚の許しも得たのに?そんなの嫌よ!お兄ちゃんの居ない世界でなんて生きていけない!!!
「モニカ嬢!」
遠くでアレクシス王子の声が聞こえた気がした。あぁ……私、立っていられなくなったんだ。
「大丈夫ですか?さぁここに座って。気を確かに持ってください。
レイは私の友人だ。サルグレッド第一王子の名にかけて彼を助けると約束します。父上も御慈力くださる、だからご安心を」
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