人形師とドラゴン

灰澤

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人形師 -ドメイカー-

繰り返される日常の1日 02

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 移された場所は蒼の部屋。ガラサカの使徒たちが利用している建物の一つだ。ここで様々な人物へ依頼をし契約していると話を聞いたことがある。

「すぐに隊長が参りますので、腰をおろしてお待ちください」

 猫のように先程のチビ―――エルを持ちながら部屋から退出していく。

「ガヴェル隊長自ら依頼を伝えるだなんて、緊急の依頼ですかね?」

「それか、第三者に聞かれてはいけない依頼でしょうね」

 憶測で会話をしていると、扉をノックする音が聞こえた。

「またせたのう、 人形師ドメイカーよ」

「お気になさらず」

「ウチの片割れが面倒をかけたようじゃの」

「つもる話は座ってしましょう」

「おお、そうじゃな」

 入ってきたのは厳つい顔をしたおっさん。彼の名はガヴェル・シークリア。ガラサカの使徒をまとめる隊長でもある。
 頼れる存在なのは確かなんだけど、子供っぽいとこもあって会うたびに悪戯を仕掛けてくる。

「しかし、シア坊か?前に見たときはこんなに小さかったのにのう。お前さんよりデカくなったんじゃないか?」

「おかげで首が疲れますよ」

「ガハハハハ!高い靴でも履いておけば良いじゃろ」

「この靴で充分です」

 出されたお茶を飲みながら先生たちは話す。
 てかガヴェル隊長、1年前に顔合わせてんだよな。完全に忘れてるだろうし、そもそも豆粒サイズのときっていつだよ。

「しかし、あの双子には困ったのう」

「あなたはあの二人に甘過ぎますよ。もう少し厳しくしなければ」

「腕は立つんじゃがなぁ・・・減給では効かんかのう」

「玩具になさい」

「おお、それがええのう」

 先生とガヴェル隊長はかなり仲が良い。いつから知り合いなのかはわからないけど、付き合いが長く、よく依頼をしてくれる。いわゆるお得意様でもある人物だ。

「っと、今回呼び出したのはこの件じゃ」

 渡されたデータを複製して俺と先生に渡す。

「 女神の像ゴッスタですか。
最近噂されている組織ですね。ガラサカが平和組織ならば、 女神の像ゴッスタは戦争組織」

「ああ。と言っても目立つような行動は少ない奴らじゃったんだが・・・、つい先日うちのモンが被害にあった」

「ガラサカの使徒が、ですか?安否は」

「1ヶ月安静すれば治る怪我じゃ。
伝言を預けるために生かしたようじゃな。

『我らは 女神の像ゴッスタ
赤い月が世界を照らす時、空から赤い雫が降り注ぐ。覚悟しておけ』

とな。
ガラサカに戦争を仕掛けるようじゃ」

  女神の像ゴッスタと名乗る組織は両国から追い出された人間で作られた。ガラサカと違う部分は両国への平和ではなく、戦争。いずれ両国へ戦争を仕掛けると話が出ている。
 ガラサカに対しても敵対している。だから戦争を仕掛けてきたというわけか。

「赤い月・・・月に一度訪れる満月の日ですね」

「そしてその満月の日は今から3日後じゃ」

「なるほど、わかりました。数は?」
 
「2日で用意できる数、3日掛けてできる戦力を10体」

「同時進行になりますので、2日でできるのは1000体程度かと」

「充分じゃ。素材はこちらで用意が出来る。足りない物があれば部下に調達させよう。
さっそくじゃが、顔を出してくれるか?」

「ええ」

 ガヴェル隊長に案内され、工房と書かれた建物に着く。中に入ると多くの人形が並んでいる。どれも似たような見た目で、近くにいる人形に目を通せば見覚えのあるマークを見つけた。

「これ、先生が作った人形ですか?」

「そうですよ。と言っても3年前でしょうか」

「お前さんの人形は日々進化しとるからのう。このマークを見ないことにはお前さんの作品とは気がつかなんだ」

 定期的に検査をしているのか、どこか壊れた様子もない。年月が過ぎても新品のように使える・・・先生に依頼が殺到する理由の1つだ。

「素材はこの先じゃ」

「ほう、これは・・・かなりの量ですね」

「お前さんには世話になっとるからの。
至急取り寄せたもんじゃ。管理はそこのデータにあるから足りないもんは送ってくれ」

「わかりました。シア、作業に掛かりますよ」

「はい!」

 机の上にデータを表示させ、必要な物、不必要な物を分けていく。ガヴェル隊長は仕事を開始した先生に一礼をし工房から出ていく姿が横目で見えた。

「先ずは戦弐型人形グランアタッカーから取り掛かりましょう。シア、式を施しますので――――」

 俺は先生に指示された素材を集め、持ってきた瓶へと入れていく。間違えた素材を持って行くと怒られるのでふざけることはできない。先生って仕事のこととなると怖いんだよなぁ・・・。

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