6 / 14
人形師 -ドメイカー-
こうして物語は始まる 02
しおりを挟む
赤い雨は暫くして止んだ。先程までの賑やかさはなくガラサカが眠りについたかのように静か。不穏に思いながらも工房にたどり着き建物に入ると、敵意を感じ素早く後ろに下がる。
「ガラサカの使徒!武器をおさめください」
「人形師様!これは失礼しました!」
そこにいたのはセキセイで、後ろを見ればガラサカの使徒が全員、いやガヴェル隊長だけいないか。大怪我をしている様子はないけれど、目の前にいるセキセイも含め、どこかしら負傷しているのが見える。
「女神の像によるものですか?」
「私の個人的発言ですが、恐らく。民間人から報告を受け、現場に駆け寄ったところ見慣れぬ黒ローブを被った人間が8人、広場にて発見しました。
その場で戦闘になりましたが、民間人を救助し撤退するのがやっとでした」
セキセイは拳を握り、悔しそうな表情のまま先生に起きた出来事を報告する。
「なるほど・・・。クロッカさん、あなたが女神の像から伝言を預かったと聞いています。
それに間違いはないでしょうか?」
「ああ。確かに奴らは赤い月と言っていました。
だが、今回襲いかかってきた奴らとは違い、黄色いローブを被っていたのだが、どちらかが偽物の可能性はある。しかし、」
「どちらも本物で、伝言が嘘?」
クロッカさんの言葉を遮り言うと、クロッカさんは無言で頷く。
「とにかく、先に治療を優先しましょう。一番怪我が酷い方はどなたですか?」
「私です」
そう言って手を上げたのはルイさんだ。足に包帯を巻いているが滲んできているのが見てわかる。先生が近づき、包帯の上から術式を書いていく。
「お手数おかけします、人形師様」
「医療の知識は有りますからね、お気になさらず」
その会話に俺は違和感を覚えた。ルイさんは確かおっとりとした喋り方ではなかっただろうか。
先生は特に気にはしていないようだけど・・・。
「エデンも大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だ」
「そっか、良かった。・・・ガヴェルさんは?」
「ああ、ガヴェル隊長は奴らを引きつけてくれてる。俺たちも怪我が癒えたらすぐに向かう」
「っ・・・先生!」
気のせいなんかじゃない。違和感を覚えてエデンに話しかけたのが良かった。
エデンはガヴェル隊長のことをいつも"たいちょー"と呼んでる。それに彼の喋り方は"~すよ"と言った感じに特徴のある喋り方だ。
昼間のそれも少ない時間の中で話したルイさんよりも、長い間世話になったエデンの方が記憶は確かだ。確実にこいつはエデンじゃないし、ルイさんもルイさんじゃない。第一、セキセイは自分自身を"あたし"と言うじゃないか。
「この人たち、ガラサカの使徒じゃない!偽物だ!」
「おいおい、シア?偽物だなんて、酷い奴だな?」
偽エデンは俺の腕を掴み奇妙な笑みを浮かべる。先生の方を見れば偽ルイから離れ、攻撃が当たらない位置まで下がっている。
「人形師様?まだ怪我は治ってませんよ?」
「あいにくと、シアはあなたより鼻が良いもので」
「悲しいですね」
偽ルイはそう言って肩を震わせながら顔隠す。次第に泣き声が聞こえたかと思うとガシャンッと何かが倒れた音と同時に俺の腕を掴む手が離れた。
偽エデンに目を向けると、そこにいたはずの人物はバラバラに崩れており、接合部分が見えることから偽エデンは人形であることがわかる。
偽ルイ以外のメンバーは人形だったのか・・・。
「ほんと、悲しくて魔力を切っちゃったなぁ。
でもでも!人形師は気がついたけどそこのガキは気が付かなかった!
やっぱり私って人形を操る天才なんだわ!」
「本物のガラサカの使徒は外ですね?」
「ええ、そうよ。今頃この国のために死にそうになっているんじゃないかしら?」
ルイさんの顔をしたまま、彼女は笑う。
「目的は人形の破壊でしょうか」
「あなた、本当凄いわね!なんのヒントも無しにそこまで当てられるなんて!さすが人形師!
ああでも、人形を作れても操れないのなら人形師という肩書きも可哀想だわ!」
「お褒めいただき光栄です」
「褒めてない!」
せ、先生・・・、一応その人敵だから!空気和ませてる場合じゃないから!
「ごっほん!・・まあ今なら?私たちの仲間になるなら見逃してあげるけど?」
「そうですか」
完全に俺の存在を忘れているような気がする。先生に目線を向けると目が合い、ニコリと微笑まれた。
「もちろんお断りします」
「そう言うと思った!ま、準備は既に完了しているわ。
さよなら、人形師様」
彼女はそう言って指をパチンッと鳴らし、姿を消した。放っていかれた人形は次第に膨らんでいく。先生が俺の名前を呼んだのと同時に工房は光に包まれた。
「ガラサカの使徒!武器をおさめください」
「人形師様!これは失礼しました!」
そこにいたのはセキセイで、後ろを見ればガラサカの使徒が全員、いやガヴェル隊長だけいないか。大怪我をしている様子はないけれど、目の前にいるセキセイも含め、どこかしら負傷しているのが見える。
「女神の像によるものですか?」
「私の個人的発言ですが、恐らく。民間人から報告を受け、現場に駆け寄ったところ見慣れぬ黒ローブを被った人間が8人、広場にて発見しました。
その場で戦闘になりましたが、民間人を救助し撤退するのがやっとでした」
セキセイは拳を握り、悔しそうな表情のまま先生に起きた出来事を報告する。
「なるほど・・・。クロッカさん、あなたが女神の像から伝言を預かったと聞いています。
それに間違いはないでしょうか?」
「ああ。確かに奴らは赤い月と言っていました。
だが、今回襲いかかってきた奴らとは違い、黄色いローブを被っていたのだが、どちらかが偽物の可能性はある。しかし、」
「どちらも本物で、伝言が嘘?」
クロッカさんの言葉を遮り言うと、クロッカさんは無言で頷く。
「とにかく、先に治療を優先しましょう。一番怪我が酷い方はどなたですか?」
「私です」
そう言って手を上げたのはルイさんだ。足に包帯を巻いているが滲んできているのが見てわかる。先生が近づき、包帯の上から術式を書いていく。
「お手数おかけします、人形師様」
「医療の知識は有りますからね、お気になさらず」
その会話に俺は違和感を覚えた。ルイさんは確かおっとりとした喋り方ではなかっただろうか。
先生は特に気にはしていないようだけど・・・。
「エデンも大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だ」
「そっか、良かった。・・・ガヴェルさんは?」
「ああ、ガヴェル隊長は奴らを引きつけてくれてる。俺たちも怪我が癒えたらすぐに向かう」
「っ・・・先生!」
気のせいなんかじゃない。違和感を覚えてエデンに話しかけたのが良かった。
エデンはガヴェル隊長のことをいつも"たいちょー"と呼んでる。それに彼の喋り方は"~すよ"と言った感じに特徴のある喋り方だ。
昼間のそれも少ない時間の中で話したルイさんよりも、長い間世話になったエデンの方が記憶は確かだ。確実にこいつはエデンじゃないし、ルイさんもルイさんじゃない。第一、セキセイは自分自身を"あたし"と言うじゃないか。
「この人たち、ガラサカの使徒じゃない!偽物だ!」
「おいおい、シア?偽物だなんて、酷い奴だな?」
偽エデンは俺の腕を掴み奇妙な笑みを浮かべる。先生の方を見れば偽ルイから離れ、攻撃が当たらない位置まで下がっている。
「人形師様?まだ怪我は治ってませんよ?」
「あいにくと、シアはあなたより鼻が良いもので」
「悲しいですね」
偽ルイはそう言って肩を震わせながら顔隠す。次第に泣き声が聞こえたかと思うとガシャンッと何かが倒れた音と同時に俺の腕を掴む手が離れた。
偽エデンに目を向けると、そこにいたはずの人物はバラバラに崩れており、接合部分が見えることから偽エデンは人形であることがわかる。
偽ルイ以外のメンバーは人形だったのか・・・。
「ほんと、悲しくて魔力を切っちゃったなぁ。
でもでも!人形師は気がついたけどそこのガキは気が付かなかった!
やっぱり私って人形を操る天才なんだわ!」
「本物のガラサカの使徒は外ですね?」
「ええ、そうよ。今頃この国のために死にそうになっているんじゃないかしら?」
ルイさんの顔をしたまま、彼女は笑う。
「目的は人形の破壊でしょうか」
「あなた、本当凄いわね!なんのヒントも無しにそこまで当てられるなんて!さすが人形師!
ああでも、人形を作れても操れないのなら人形師という肩書きも可哀想だわ!」
「お褒めいただき光栄です」
「褒めてない!」
せ、先生・・・、一応その人敵だから!空気和ませてる場合じゃないから!
「ごっほん!・・まあ今なら?私たちの仲間になるなら見逃してあげるけど?」
「そうですか」
完全に俺の存在を忘れているような気がする。先生に目線を向けると目が合い、ニコリと微笑まれた。
「もちろんお断りします」
「そう言うと思った!ま、準備は既に完了しているわ。
さよなら、人形師様」
彼女はそう言って指をパチンッと鳴らし、姿を消した。放っていかれた人形は次第に膨らんでいく。先生が俺の名前を呼んだのと同時に工房は光に包まれた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
0
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる