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人形師 -ドメイカー-
こうして物語は始まる 04
しおりを挟む突然の爆発にもかかわらず、先生は術式を書き盾を発動。そのおかげで大怪我をすることはなかったが、工房は完全に崩落。床に大穴が空き、地上の崖が姿を現している。
奇跡的に工房の周りに建物はなく、人々への被害は無かったが国にとっての損害は大きい。けれど地上の崖が見えるぐらい爆発したのに、この工房ギリギリまでで収まっている。
と言った感じで解説をしているが、俺は今大ピンチだ。先生に守ってもらったのに足を滑らせ穴に落ちかけている。寸前で先生が手を掴んでくれたから落ちずには済んだ。
「先生、すみません」
「本当ですよ」
「かなりぶっとんだわね」
ルイ、ではなくセキセイが先生の後ろに現れた。音もなく、姿が見えていたわけもなく。
「なっ・・まさか、また偽物?!」
「ばーか、本物だっての」
「確かにその感じは本物だ」
「どこを見て判断した?!」
大ピンチなのにもかかわらず、何故ふざけているのだろうか。先生に怒られて手を離されないか心配だ。
「最小限に爆発を抑えると言っていませんでしたか?」
「いやぁ、ちゃんと術式は書いたんだけどねぇ」
「せ、先生?何を言って」
先生から聞こえた言葉に俺は動揺する。
「あなたはもう必要ありません。ここでさようならです。落ちて死になさい」
「そんな、先生!なんで!」
先生が掴んでいる手、その手の力がだんだん抜けていっていくのがわかる。
「・・・私はあなたのことが」
するりと手が離れていく。
「受け取ったあの日から、あなたのことが嫌いでしたよ」
冷たい目で先生は言う。体が落ちていく。頭の中で先生の言葉がぐるぐると回る。
ずっと嫌いだった?2人から俺を預かったあの日から?嫌いなのに側に置いていた。全ては今日のため?
「――~~っ・・・せん、せー」
先生と家族だったら、何度も夢を見ていた。先生も俺を息子だと思っていてくれたら、そう夢を見ていた。だけど俺だけだった。その感情は俺だけだったんだ。
次第に涙があふれ出し、宙に涙が浮かぶ。見えなくなった先生。遠ざかっていくガラサカ。通り過ぎる地上。近づく崖の下。
ああ、俺はここで死んでしまうのか。
「―――・・・随分と諦めるのがはやいな?」
意識が薄れる中、聞き覚えのある声が聞こえた。
―――――――――――――――――――――――
シアを手放し、落ちる姿を見ないまま彼は立ち上がる。
「そろそろガラサカの使徒が到着する頃合でしょう」
「ねね、人形師?あたしの演技どうだった?」
「わざとバレる演技をしたのは見事ですよ」
「やった!シアに気がついてもらわなきゃ意味がないもの!」
「そうですね。さあ、行きますよ。
私たちの計画はまだ始まったばかりです」
「はーい」
セキセイが用意した術式に入り、別の場所に到着する。彼女は右手を眺め、シアの顔を思い出す。
困惑し、今にも泣きそうな顔。あれはいつだっただろうか、彼が純粋な人間ではないと知ったあの顔と似ていた。懐かしい思い出にクスリと笑う。
「リーダー、おかえりなさい」
「おーそーい!リーダーがこんなに遅いなら、もうちょっとあの人いじりたかったのに!」
「イチカは無駄話が好き。よって我々が巻き込まれる」
姿を現した女神の像。後ろにいたセキセイも彼らの横に並びリーダーに頭を下げる。
「ご苦労様です。第一段階の計画は完了しました。第二の計画を始めます」
「はい、リーダー!」
合図と共に彼らは消える。残された人形師は目を閉じ、祈りを捧げる。それは誰への祈りか。何に対する祈りか。誰も知ることもなく、女神の像に向かい祈りを捧げ続ける。
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