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第一章 隠れの里
ダンジョンの入口? 02
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どれぐらいの距離を歩いただろうか。魔物が現れる様子もなく真っ直ぐな道が続く。
「・・・ん?あれは・・・アリシア!光だ!」
「待て。・・・この音は火が燃えている音だな、外ではない可能性が高い。慎重に行こう」
同じように聞き耳を立ててみたが燃えている音は聞こえない。しかし、アリシアが言うのだから気をつけて進んだ方がいいだろう。敵は魔物だけではないのだから。
「―――・・扉?」
「これはまたデカイな」
「でも、他に道はないね」
大きな両開きの扉の横に松明が立てられ燃えている。俺が見た明かりはコレで、アリシアが聞いたのはコレだろう。
「これ、ダンジョンの入口かな」
「いや・・・入口は2層目にある。
それにここの空間は一方通行で、元の道に戻っても行き止まりだ。ダンジョンに繋がっていれば良いが・・・」
扉に隙間があるのか、風の音が響く。
「行かないことには始まらないな。準備は良いか?」
「任せて。記憶が無くても戦えるってとこ見せてあげる」
「頼もしいな。私の指導は必要なさそうだ」
それはして欲しいかな、笑いながら言って扉に手を当てる。ズッシリと構えた扉を力よく押すと錆びたような音を立てながら開いていく。
「青いー・・・光?」
「これは、まさか、そんなはずは!」
壁一面に模様が入り青い光が通っている。なんとも幻想的な光景だが、アリシアは顔を青くして叫ぶ。
「迷いの森の遺跡だ。なぜ、裏側の森の遺跡に?」
「迷いの森?裏側?」
「見たことがないか。この星はガラサカができたことにより地が割れ、2つに分かれていると言われているが、全てがそうではない。
ガラサカが見えるあの場所の裏側には、広い森があってな」
真っ直ぐに続く道をゆっくり歩きながらアリシアの話を聞く。
「その森を越えれば片方の国へいける」
「なら、ガラサカを経由しなくてもいいじゃないか」
「それだけならば、な。あの森に入ると霧が現れ前を塞いでくる。気がつけば古代遺跡についてるがその奥に行っても入ってきた森の入り口に戻る。
だから迷いの森と言われているんだ」
「へぇ・・・って、じゃあ俺たちはいま裏側に来てるってこと?」
「そんなことは無いはずだが・・・。とにかく、もう少し奥に行かなければわからないな。
どのような魔物がいてもおかしくはない、警戒を怠るなよ」
「うん」
分かれ道が何度かあったが、どれも行き止まりで1人でも倒せるような魔物や、素材が落ちているだけで特にこれといった発見は無いまま奥へと進む。歩いている道中、アリシアは1つの考えを話す。
「遺跡は人の手によって作られたモノだが、ダンジョンは自然によって作られたモノだ。
ならば自然にできたダンジョンの後にこの遺跡が作られた。
そう考えるのが自然だが、何故先がない所にあの大きな扉を作ったのだろうか」
「うーん、よくある話っていうなら、あそこは実は1つの部屋で、倉庫的な役割をしていたとか?
それか魔物から身を守るための休憩所とか」
「1つの考えだな。憶測でしかないが、一番答えに近そうだ」
「でも、アリシアは遺跡の奥の方まで入ってこなかったの?」
再び分かれ道が現れ、小石を右側へと投げる。反響音が低いということは行き止まりだろう。素材を集めることに問題はないので、行き止まりの方へと向かう。
「この遺跡の中に入ると、同じような壁の作りになっている。
だが、中に入っても円形の部屋があるだけで次に進む壁が無いんだ」
「え、遺跡の入口なのに?」
「ああ。仕掛けがあるはずだが、いろんなことを試しても意味がなくてな。
それに建物を破壊してもすぐに元通りになるんだ」
「遺跡が生きてるみたいだ」
「研究員共が目を輝かせているからな。
私たちがその遺跡の中に入った、なんて言えば嫉妬の嵐だろう」
「それは嫌だなぁ」
宝箱が2つあり片方は魔物の素材、もう片方はスカだった。来た道を引き返し、迷わないように置いた棒を回収してもう一つの道へ進む。
どれぐらい歩いただろうか。分かれ道もなく進んだ辺りで頬を風が撫でた。
「あれは・・・また大きな扉か」
「風が来たってことは外かな?」
「念の為明かりは消しておこう」
火の明かりが消えると、遺跡内で青々と光る明りが強く出る。それを後ろに控え大きな扉を2人で開く。
「こいつは―――・・・!」
前を見て開いた口が閉じない。大きな広場になっているはずの部屋が、小さく感じるほどの大きな黒きドラゴンがそこにいた。
「雪山にしかいないと言われているドラゴンが何故ここに・・・!」
「ど、どうする?」
「一度下がろう。眠っているようだから焦らず、ゆっくりだ」
アリシアの指示通りに一歩下がったその時、息を吐く音が聞こえ、
「私の眠りを妨げるのは外の子か」
大きな頭を上げながら声を出したドラゴンは俺たちを上から見下ろした。
「喋った・・・?!」
「龍が言の音を出すのが不思議か?
外の子は相変わらず馬鹿のようだな」
くぁ、と大きな口を開き、息を吐く。鋭い牙が俺たちに恐怖を増幅させる。どうやって逃げる?先に走るのが速いか、ドラゴンが攻撃を仕掛けるのが先か。
「クロムさま!!なにごとですっぬあっ?!」
上空から聞こえた女の子の声、と同時に間抜け声が聞こえ目の前のドラゴンは呆れたように息を吐き尻尾をヒョイッと上げる。
ゆっくりと尻尾を下ろすとそこには声の主らしき女の子がぶら下がっていた。
「ミナサカ。ゆっくり部屋に入れと何度もユキサカに言われているであろう」
「クロムさま、ごめんなさい・・・。って侵入者ですか?!」
「待ってくれ。私たちは怪しい者ではない」
「黙りなさい白いの!」
「しろっ・・・失礼した、先に名乗るのが礼儀であったな。私はアリシア・クレイス。しがない傭兵をしている。
横にいる者はシア。記憶を失って倒れているとこを私が保護した。上に上がろうとしたのだが道に迷ってしまってな」
アリシアに紹介されて俺はつられて頭を下げる。
「けして、この遺跡を荒らそうとして来たのではないのだ」
「述べたところでこちらを手懐けようという魂胆ですか?!ミナはけして騙されません!
クロムさま!真実かどうか過去視をしてやりましょう!」
「・・・仕方がないな」
「待ってくれ!」
「ええい!しつこいやつです!
そこの黒いのみたく大人しくできないのであればこうしてやるです!・・・【荊縄】!」
ミナサカと呼ばれる少女はチョークを取り出すとアリシアに向かって術式を放つ。足元から荊が生えアリシアの脚に絡まっていき、身動きが取れない状態になってしまった。大きな薔薇がアリシアの頭上で咲いている。
「アリシア!」
「一時的な行動制限です。動くと棘が刺さりますよ。
クロムさまの過去視はその名の如く、あなたがたの過去を視ます!」
クロムと呼ばれるドラゴンが俺たちに視線を合わせる。白い瞳から目が離せない。駄目だ、離さないと。このままじゃ思い出してしまう。
「・・・ん?あれは・・・アリシア!光だ!」
「待て。・・・この音は火が燃えている音だな、外ではない可能性が高い。慎重に行こう」
同じように聞き耳を立ててみたが燃えている音は聞こえない。しかし、アリシアが言うのだから気をつけて進んだ方がいいだろう。敵は魔物だけではないのだから。
「―――・・扉?」
「これはまたデカイな」
「でも、他に道はないね」
大きな両開きの扉の横に松明が立てられ燃えている。俺が見た明かりはコレで、アリシアが聞いたのはコレだろう。
「これ、ダンジョンの入口かな」
「いや・・・入口は2層目にある。
それにここの空間は一方通行で、元の道に戻っても行き止まりだ。ダンジョンに繋がっていれば良いが・・・」
扉に隙間があるのか、風の音が響く。
「行かないことには始まらないな。準備は良いか?」
「任せて。記憶が無くても戦えるってとこ見せてあげる」
「頼もしいな。私の指導は必要なさそうだ」
それはして欲しいかな、笑いながら言って扉に手を当てる。ズッシリと構えた扉を力よく押すと錆びたような音を立てながら開いていく。
「青いー・・・光?」
「これは、まさか、そんなはずは!」
壁一面に模様が入り青い光が通っている。なんとも幻想的な光景だが、アリシアは顔を青くして叫ぶ。
「迷いの森の遺跡だ。なぜ、裏側の森の遺跡に?」
「迷いの森?裏側?」
「見たことがないか。この星はガラサカができたことにより地が割れ、2つに分かれていると言われているが、全てがそうではない。
ガラサカが見えるあの場所の裏側には、広い森があってな」
真っ直ぐに続く道をゆっくり歩きながらアリシアの話を聞く。
「その森を越えれば片方の国へいける」
「なら、ガラサカを経由しなくてもいいじゃないか」
「それだけならば、な。あの森に入ると霧が現れ前を塞いでくる。気がつけば古代遺跡についてるがその奥に行っても入ってきた森の入り口に戻る。
だから迷いの森と言われているんだ」
「へぇ・・・って、じゃあ俺たちはいま裏側に来てるってこと?」
「そんなことは無いはずだが・・・。とにかく、もう少し奥に行かなければわからないな。
どのような魔物がいてもおかしくはない、警戒を怠るなよ」
「うん」
分かれ道が何度かあったが、どれも行き止まりで1人でも倒せるような魔物や、素材が落ちているだけで特にこれといった発見は無いまま奥へと進む。歩いている道中、アリシアは1つの考えを話す。
「遺跡は人の手によって作られたモノだが、ダンジョンは自然によって作られたモノだ。
ならば自然にできたダンジョンの後にこの遺跡が作られた。
そう考えるのが自然だが、何故先がない所にあの大きな扉を作ったのだろうか」
「うーん、よくある話っていうなら、あそこは実は1つの部屋で、倉庫的な役割をしていたとか?
それか魔物から身を守るための休憩所とか」
「1つの考えだな。憶測でしかないが、一番答えに近そうだ」
「でも、アリシアは遺跡の奥の方まで入ってこなかったの?」
再び分かれ道が現れ、小石を右側へと投げる。反響音が低いということは行き止まりだろう。素材を集めることに問題はないので、行き止まりの方へと向かう。
「この遺跡の中に入ると、同じような壁の作りになっている。
だが、中に入っても円形の部屋があるだけで次に進む壁が無いんだ」
「え、遺跡の入口なのに?」
「ああ。仕掛けがあるはずだが、いろんなことを試しても意味がなくてな。
それに建物を破壊してもすぐに元通りになるんだ」
「遺跡が生きてるみたいだ」
「研究員共が目を輝かせているからな。
私たちがその遺跡の中に入った、なんて言えば嫉妬の嵐だろう」
「それは嫌だなぁ」
宝箱が2つあり片方は魔物の素材、もう片方はスカだった。来た道を引き返し、迷わないように置いた棒を回収してもう一つの道へ進む。
どれぐらい歩いただろうか。分かれ道もなく進んだ辺りで頬を風が撫でた。
「あれは・・・また大きな扉か」
「風が来たってことは外かな?」
「念の為明かりは消しておこう」
火の明かりが消えると、遺跡内で青々と光る明りが強く出る。それを後ろに控え大きな扉を2人で開く。
「こいつは―――・・・!」
前を見て開いた口が閉じない。大きな広場になっているはずの部屋が、小さく感じるほどの大きな黒きドラゴンがそこにいた。
「雪山にしかいないと言われているドラゴンが何故ここに・・・!」
「ど、どうする?」
「一度下がろう。眠っているようだから焦らず、ゆっくりだ」
アリシアの指示通りに一歩下がったその時、息を吐く音が聞こえ、
「私の眠りを妨げるのは外の子か」
大きな頭を上げながら声を出したドラゴンは俺たちを上から見下ろした。
「喋った・・・?!」
「龍が言の音を出すのが不思議か?
外の子は相変わらず馬鹿のようだな」
くぁ、と大きな口を開き、息を吐く。鋭い牙が俺たちに恐怖を増幅させる。どうやって逃げる?先に走るのが速いか、ドラゴンが攻撃を仕掛けるのが先か。
「クロムさま!!なにごとですっぬあっ?!」
上空から聞こえた女の子の声、と同時に間抜け声が聞こえ目の前のドラゴンは呆れたように息を吐き尻尾をヒョイッと上げる。
ゆっくりと尻尾を下ろすとそこには声の主らしき女の子がぶら下がっていた。
「ミナサカ。ゆっくり部屋に入れと何度もユキサカに言われているであろう」
「クロムさま、ごめんなさい・・・。って侵入者ですか?!」
「待ってくれ。私たちは怪しい者ではない」
「黙りなさい白いの!」
「しろっ・・・失礼した、先に名乗るのが礼儀であったな。私はアリシア・クレイス。しがない傭兵をしている。
横にいる者はシア。記憶を失って倒れているとこを私が保護した。上に上がろうとしたのだが道に迷ってしまってな」
アリシアに紹介されて俺はつられて頭を下げる。
「けして、この遺跡を荒らそうとして来たのではないのだ」
「述べたところでこちらを手懐けようという魂胆ですか?!ミナはけして騙されません!
クロムさま!真実かどうか過去視をしてやりましょう!」
「・・・仕方がないな」
「待ってくれ!」
「ええい!しつこいやつです!
そこの黒いのみたく大人しくできないのであればこうしてやるです!・・・【荊縄】!」
ミナサカと呼ばれる少女はチョークを取り出すとアリシアに向かって術式を放つ。足元から荊が生えアリシアの脚に絡まっていき、身動きが取れない状態になってしまった。大きな薔薇がアリシアの頭上で咲いている。
「アリシア!」
「一時的な行動制限です。動くと棘が刺さりますよ。
クロムさまの過去視はその名の如く、あなたがたの過去を視ます!」
クロムと呼ばれるドラゴンが俺たちに視線を合わせる。白い瞳から目が離せない。駄目だ、離さないと。このままじゃ思い出してしまう。
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