20 / 39
第19話「邂逅」
しおりを挟む
さっきから何を言っているか、だと……?
ボケた回答をする受付嬢のメリッサに苛立ちを感じるロード。
当のメリッサはといえば、
ポカーンとした顔。
(ち……。使えねぇ、受付だな!)
だが仕方ないことかもしれない。と思いなおすロード。
きっと、事の大きさに衝撃を受けているのだろう、と。
──……だから、新人の受付嬢は困るのだ。
もっと、こう大モノをだね──……!
「はぁ…………。おーい、何を言っているかだと? おいおいおーい、しっかりしてくれよお嬢さん! グリフォンだよ! グリフォン! それが二体も街の北方に現れたんだ! どういうことかわかるだろう?!」
「は、はい。まぁ、聞いておりますが……。あ、あのー……?」
熱く語るロードの言葉を遮る様に、メリッサが口をはさむ。
「…………さっきからなんだ! おい、このギルドにはまともな職員は──」
何なんだ、このボケた受付嬢は!!
ロードが顔を不機嫌にゆがめるのだが……。
「……えっと、『かけがいのない仲間を失った』とおっしゃりましたが、どなたかお亡くなりになったんですか? 見たところ、全員おられるようですが──」
全員?
「何を言っているんだ! ここで加入した冒険者がいただろう! レイル。レイル・アドバンスのことだ!」
そう、全員なものか。
大事な大事な、大事な囮のレイルがいない────。
「え、えぇ?! れ、れれれ、レイルさんが!?」
レイルの名前を出した途端、飛び上がらんばかりに驚くメリッサ。
その様子を見て、知り合いだったのか? と、あたりをつけるロード達。
「そう! レイルです! 俺たちの仲間のレ──」
「…………レイルさんなら、とっくに帰ってきましたよ?」
……………。
……。
「「「「はぁ?」」」」
※ ※ ※
え?
レイル??
……レイルいるの???
「…………いやいや。そんな馬鹿なことがあるわけないじゃないですか。……レイルはあの村で死んだ────」
そう。ロードもラ・タンク達も皆目撃していた。
血まみれでグリフォンの前に倒れていたレイルを。
あの状況で助かるなんて奇跡でも起きない限り無理だ。
「あははは。メリッサさん。それはきっと見間違いですよ──それか、幽霊でも見たんじゃないですかね」
「わっはっは! ちげぇねぇ!!」
ゲラゲラと笑うロード達にメリッサが眉を顰める。
「幽霊も何も、レイルさんはきっちり報告してくれましたよ? グリフォンを仕留めたって──」
「「「はぁぁぁぁあああ?!」」」
ロードたちが間抜けな表情で口をパッカーと開けて驚く。
そして、次の瞬間。
ぷ……。
ぷくくく……。
「「「「ブハハハハハハハハハハハ!!」」」」
ぎゃーはっはっはっはっはっ!!!
「あはははは、何を言ってんですか? アナタ、ギルドに勤めて何年ですか?」
「ひーっひっひひ! グリフォンを討伐だぁ? 馬鹿言ってんじゃねーよ」
「うぷぷぷ! そうですよ。そんなデマに振り回されるなんて、このギルドもたかが知れてますねー」
「くすくすくす。もーどこの誰が流した噂? 嫌になるわねー、有名になるとすぐこういう……」
レイルがグリフォンを退治とかどんなデタラメだよ。
つくなら、こう───もう少し、ましな嘘にしろってーの。
「いえ、噂も何も…………。というか、皆さんお仲間ですよね? 死んだとか、嘘とかどういう意味ですか?」
あー…………。
「いや、だから────レイルは、」
ロード達の大騒ぎにギルド中が「「なんだなんだ?」」と注目を始める。
どうやら悪質なデマが流れているらしい。
おまけにレイルを名乗る偽物まで──。
それもこれも、この田舎のギルドのザルな仕事が原因だろう。おまけに、メリッサのデマを真っ向から信じる純粋無垢ッぷり──……。
(──はぁ……大方、このデマを流したのは開拓村の連中だろうな)
村を無茶苦茶にされた腹いせに、ロード達の悪評をばら撒いているのだ。
まぁ、宿代も踏み倒したし、
グリフォンを怒らせたのはロード達だから、気持ちはわからなくはない。
(だが、後で覚えとけよ、田舎の貧乏開拓村め……。絶対に滅ぼしてやる!)
と──────。
それはさておき、
「────メリッサさんでしたか? 辛いですが、事実は事実です。……レイルは死にましたよ。俺たちの目の前でね……。グスっ。ゆ、勇敢な、かけがいのない仲間でした」
「え………………?」
ここではっきりとレイルの死を告げるロード。
「そ、そんなはずは!!────だって、討伐証明も提出されましたし、多数のドロップ品も入手し、エリクサーも見つかったって……」
…………。
はぁ、……馬鹿な女だ。
レイルがグリフォンを倒しただぁ??
そんでもって、ドロップ品がなんだって??
「ほー。エリクサーをねー」
────なぁにが……エリクサーだよ。
ありゃ、伝説級のアイテムだぞ?
そんなもん入手したら、当分遊んで暮らせるっつーの!
ったく。
「はぁ……。──それはデマです。俺たちのクエストを横取りしようっている悪質な連中の仕業ですよ。……まさかとは思いますが、報奨金払っちゃってたりしてないですよね?」
「あ、いえ……。金額が金額ですので、それはまだ──」
「それは重畳。よかったですよ、ギルドが詐欺にあう前で……」
さすがに、あの大金をポンと払うような真似はしていないらしい。
領主の出した依頼なだけはあって、真贋もきっちり見分けられているのだろう。
誰だか知らないが、『放浪者』の上前を撥ねようだなんて舐めた真似を……。
「はー……。まったく困りましたね。まぁ───たまにあるんですよ。Sランクにもなって、冒険者界隈で目立ってくると、こういう嫌がらせがたまーに、ね──……」
「そ、そうなんです、か……?」
ようやく話を聞く気になったのか、やたらとテンションの高かったメリッサも少しトーンダウン。
そして、ギルド中の目が『放浪者』達に集まる。
「えぇ、そうですとも」
「で、ですが……! れ、レイルさんが──」
なおも食い下がるメリッサ。
「レイルは死んだんです……! 俺たちが見届けました。勇敢で称えられるべき行為です。彼は村人と俺たちを逃がすため……。そして、自ら進んで殿を務めてくれたんです」
「そ、そんな……! そんなバカことって───」
ハッとして口を押えるメリッサ。
あまりにも衝撃的な一言だったのだろう。
「えぇ、わかります。お知り合いが亡くなったということを受け入れたくないのでしょう。……俺たちだってそうです。彼の死は辛い────そして、俺の責任でもあります。……後でいくらでも罵ってください」
キラリ! と、目に涙さえ浮かべてレイルの死にざまを語るロード。
そして、存分に罵ってくれと言う。
もちろん、そんなことをするはずがないと知っていて、だ。
腐ってもSランクパーティ。実力者たるロード達を真正面から罵れる人間は、まずいないし、今まで囮に使ってきた冒険者はそもそも泣いてくれるような人もいない連中ばかり。
だから、どうということはない。
それを知ったうえで言うのだ──。
「──ですが、レイルの偽物を騙るような奴はこの場できっちりと否定しなければ!」
「え、えっと……」
オドオドとするメリッサに対して、ロードの仲間達は全員がウンウンと頷く。
「だいたい、どうやって信じるって言うんですか? 討伐証明なんて偽物に違いありませんよ」
「し、しかし、本物だと鑑定器は証明しているんですよ?」
メリッサは奥にしまわれていたグリフォンの討伐証明だという巨大な嘴を取り出してきた。
たしかに二体分あるし、禍々しいオーラを放っているが……。
「あーはいはい。偽物偽物────レイルにグリフォンが倒せるわけないでしょ」
「そ、そんなはずは……! レイルさんの報告は詳細で、たった一人で立ち向かい二体のグリフォンを倒したと……」
必死な表情のメリッサを見て、ロードが思わず吹き出しそうになる。
フラウを除く仲間も、今にも吹き出しそうだ。
……っていうか、笑ってるし。
「ぶふー!! れ、レイルがグリフォンを倒した?! ぶぷぷー!!」
「ら、ラ・タンクさん、笑っちゃだめですよ──ぶふふー!!」
「あはは! でぃ、でぃ、Dランクの冒険者がグリフォンを二匹もた、倒すって、なんの冗談なのよ──ぷぷぷ!」
かけがいのない仲間と言ったわりには、酷い言い草。
だが、それを気にするものは冒険者界隈では非常に少ない。
ザワザワ、
ヒソヒソと、
さざ波のようにレイルの陰口が広がっていく。
もちろん、あの【鉄の虎】もいる。
「「「たしかに、疫病神のレイルがグリフォンを倒せるわけないよなー」」」
「「「なんだよ、ただのデマか? やっぱり疫病神だな──」」」
「「「この悪質な噂も疫病神のせいに決まってるさ。『放浪者』もあんな奴を仲間にして大変なこった……」」」
「けけ! アイツに何ができるってんだよ! 昔からレイルはそうさ!」
「「ジャンの言うとおりだせ!」」
と、まぁ散々だ。
それほどにレイルは疎まれていた……。
「──メリッサさん。気持ちはわかりますが、彼はDランクの冒険者ですよ? 騎士団ですら手を焼くグリフォンを彼がどうやって倒したというんです……」
「で、ですが!!」
それでも、認めないメリッサ。
これはロード達がどうのこうのというより、レイルが死んだと認めたくないのだろう。
全くバカバカしい。
なんであんな役に立たないカスのためにロード様が語ってやらねばならん、とばかりに心の中でため息をつく。
「つまり、それこそがデマだということです。Sランクの俺たちですら手を焼く大空の覇者!!──それを倒したというなら、証拠を見せてほしいものですよ!!」
あーーっはっはっは!!
「…………あっそー。そんなに証拠が見たいなら、見せてやるよ」
──バンッ!
気持ちよくレイルを罵っていたロードのもとに、派手な音を立てて扉を蹴立てる一人の影。
そいつは、正面から堂々とギルドに乗り込むと、ロード達の目の前にズカズカと────……。
「え……?」
「な……?!」
「ちょ──!!」
ゴツ、ゴッ、ゴッ!!
「お、お前──……!」
「れ、レ……──」
ゴッゴッゴ!! と、固いブーツの足音も荒々しくギルドを行く人物。
そいつこそ、件の冒険者で────胸に鈍く輝く冒険者認識票にははっきりと「Dランク」と……。
あぁ、そうとも。
彼こそが疫病神と忌み嫌われる冒険者で────。
……万年Dランクの──。
れ、
「「「「れ、レイル?!」」」」
ボケた回答をする受付嬢のメリッサに苛立ちを感じるロード。
当のメリッサはといえば、
ポカーンとした顔。
(ち……。使えねぇ、受付だな!)
だが仕方ないことかもしれない。と思いなおすロード。
きっと、事の大きさに衝撃を受けているのだろう、と。
──……だから、新人の受付嬢は困るのだ。
もっと、こう大モノをだね──……!
「はぁ…………。おーい、何を言っているかだと? おいおいおーい、しっかりしてくれよお嬢さん! グリフォンだよ! グリフォン! それが二体も街の北方に現れたんだ! どういうことかわかるだろう?!」
「は、はい。まぁ、聞いておりますが……。あ、あのー……?」
熱く語るロードの言葉を遮る様に、メリッサが口をはさむ。
「…………さっきからなんだ! おい、このギルドにはまともな職員は──」
何なんだ、このボケた受付嬢は!!
ロードが顔を不機嫌にゆがめるのだが……。
「……えっと、『かけがいのない仲間を失った』とおっしゃりましたが、どなたかお亡くなりになったんですか? 見たところ、全員おられるようですが──」
全員?
「何を言っているんだ! ここで加入した冒険者がいただろう! レイル。レイル・アドバンスのことだ!」
そう、全員なものか。
大事な大事な、大事な囮のレイルがいない────。
「え、えぇ?! れ、れれれ、レイルさんが!?」
レイルの名前を出した途端、飛び上がらんばかりに驚くメリッサ。
その様子を見て、知り合いだったのか? と、あたりをつけるロード達。
「そう! レイルです! 俺たちの仲間のレ──」
「…………レイルさんなら、とっくに帰ってきましたよ?」
……………。
……。
「「「「はぁ?」」」」
※ ※ ※
え?
レイル??
……レイルいるの???
「…………いやいや。そんな馬鹿なことがあるわけないじゃないですか。……レイルはあの村で死んだ────」
そう。ロードもラ・タンク達も皆目撃していた。
血まみれでグリフォンの前に倒れていたレイルを。
あの状況で助かるなんて奇跡でも起きない限り無理だ。
「あははは。メリッサさん。それはきっと見間違いですよ──それか、幽霊でも見たんじゃないですかね」
「わっはっは! ちげぇねぇ!!」
ゲラゲラと笑うロード達にメリッサが眉を顰める。
「幽霊も何も、レイルさんはきっちり報告してくれましたよ? グリフォンを仕留めたって──」
「「「はぁぁぁぁあああ?!」」」
ロードたちが間抜けな表情で口をパッカーと開けて驚く。
そして、次の瞬間。
ぷ……。
ぷくくく……。
「「「「ブハハハハハハハハハハハ!!」」」」
ぎゃーはっはっはっはっはっ!!!
「あはははは、何を言ってんですか? アナタ、ギルドに勤めて何年ですか?」
「ひーっひっひひ! グリフォンを討伐だぁ? 馬鹿言ってんじゃねーよ」
「うぷぷぷ! そうですよ。そんなデマに振り回されるなんて、このギルドもたかが知れてますねー」
「くすくすくす。もーどこの誰が流した噂? 嫌になるわねー、有名になるとすぐこういう……」
レイルがグリフォンを退治とかどんなデタラメだよ。
つくなら、こう───もう少し、ましな嘘にしろってーの。
「いえ、噂も何も…………。というか、皆さんお仲間ですよね? 死んだとか、嘘とかどういう意味ですか?」
あー…………。
「いや、だから────レイルは、」
ロード達の大騒ぎにギルド中が「「なんだなんだ?」」と注目を始める。
どうやら悪質なデマが流れているらしい。
おまけにレイルを名乗る偽物まで──。
それもこれも、この田舎のギルドのザルな仕事が原因だろう。おまけに、メリッサのデマを真っ向から信じる純粋無垢ッぷり──……。
(──はぁ……大方、このデマを流したのは開拓村の連中だろうな)
村を無茶苦茶にされた腹いせに、ロード達の悪評をばら撒いているのだ。
まぁ、宿代も踏み倒したし、
グリフォンを怒らせたのはロード達だから、気持ちはわからなくはない。
(だが、後で覚えとけよ、田舎の貧乏開拓村め……。絶対に滅ぼしてやる!)
と──────。
それはさておき、
「────メリッサさんでしたか? 辛いですが、事実は事実です。……レイルは死にましたよ。俺たちの目の前でね……。グスっ。ゆ、勇敢な、かけがいのない仲間でした」
「え………………?」
ここではっきりとレイルの死を告げるロード。
「そ、そんなはずは!!────だって、討伐証明も提出されましたし、多数のドロップ品も入手し、エリクサーも見つかったって……」
…………。
はぁ、……馬鹿な女だ。
レイルがグリフォンを倒しただぁ??
そんでもって、ドロップ品がなんだって??
「ほー。エリクサーをねー」
────なぁにが……エリクサーだよ。
ありゃ、伝説級のアイテムだぞ?
そんなもん入手したら、当分遊んで暮らせるっつーの!
ったく。
「はぁ……。──それはデマです。俺たちのクエストを横取りしようっている悪質な連中の仕業ですよ。……まさかとは思いますが、報奨金払っちゃってたりしてないですよね?」
「あ、いえ……。金額が金額ですので、それはまだ──」
「それは重畳。よかったですよ、ギルドが詐欺にあう前で……」
さすがに、あの大金をポンと払うような真似はしていないらしい。
領主の出した依頼なだけはあって、真贋もきっちり見分けられているのだろう。
誰だか知らないが、『放浪者』の上前を撥ねようだなんて舐めた真似を……。
「はー……。まったく困りましたね。まぁ───たまにあるんですよ。Sランクにもなって、冒険者界隈で目立ってくると、こういう嫌がらせがたまーに、ね──……」
「そ、そうなんです、か……?」
ようやく話を聞く気になったのか、やたらとテンションの高かったメリッサも少しトーンダウン。
そして、ギルド中の目が『放浪者』達に集まる。
「えぇ、そうですとも」
「で、ですが……! れ、レイルさんが──」
なおも食い下がるメリッサ。
「レイルは死んだんです……! 俺たちが見届けました。勇敢で称えられるべき行為です。彼は村人と俺たちを逃がすため……。そして、自ら進んで殿を務めてくれたんです」
「そ、そんな……! そんなバカことって───」
ハッとして口を押えるメリッサ。
あまりにも衝撃的な一言だったのだろう。
「えぇ、わかります。お知り合いが亡くなったということを受け入れたくないのでしょう。……俺たちだってそうです。彼の死は辛い────そして、俺の責任でもあります。……後でいくらでも罵ってください」
キラリ! と、目に涙さえ浮かべてレイルの死にざまを語るロード。
そして、存分に罵ってくれと言う。
もちろん、そんなことをするはずがないと知っていて、だ。
腐ってもSランクパーティ。実力者たるロード達を真正面から罵れる人間は、まずいないし、今まで囮に使ってきた冒険者はそもそも泣いてくれるような人もいない連中ばかり。
だから、どうということはない。
それを知ったうえで言うのだ──。
「──ですが、レイルの偽物を騙るような奴はこの場できっちりと否定しなければ!」
「え、えっと……」
オドオドとするメリッサに対して、ロードの仲間達は全員がウンウンと頷く。
「だいたい、どうやって信じるって言うんですか? 討伐証明なんて偽物に違いありませんよ」
「し、しかし、本物だと鑑定器は証明しているんですよ?」
メリッサは奥にしまわれていたグリフォンの討伐証明だという巨大な嘴を取り出してきた。
たしかに二体分あるし、禍々しいオーラを放っているが……。
「あーはいはい。偽物偽物────レイルにグリフォンが倒せるわけないでしょ」
「そ、そんなはずは……! レイルさんの報告は詳細で、たった一人で立ち向かい二体のグリフォンを倒したと……」
必死な表情のメリッサを見て、ロードが思わず吹き出しそうになる。
フラウを除く仲間も、今にも吹き出しそうだ。
……っていうか、笑ってるし。
「ぶふー!! れ、レイルがグリフォンを倒した?! ぶぷぷー!!」
「ら、ラ・タンクさん、笑っちゃだめですよ──ぶふふー!!」
「あはは! でぃ、でぃ、Dランクの冒険者がグリフォンを二匹もた、倒すって、なんの冗談なのよ──ぷぷぷ!」
かけがいのない仲間と言ったわりには、酷い言い草。
だが、それを気にするものは冒険者界隈では非常に少ない。
ザワザワ、
ヒソヒソと、
さざ波のようにレイルの陰口が広がっていく。
もちろん、あの【鉄の虎】もいる。
「「「たしかに、疫病神のレイルがグリフォンを倒せるわけないよなー」」」
「「「なんだよ、ただのデマか? やっぱり疫病神だな──」」」
「「「この悪質な噂も疫病神のせいに決まってるさ。『放浪者』もあんな奴を仲間にして大変なこった……」」」
「けけ! アイツに何ができるってんだよ! 昔からレイルはそうさ!」
「「ジャンの言うとおりだせ!」」
と、まぁ散々だ。
それほどにレイルは疎まれていた……。
「──メリッサさん。気持ちはわかりますが、彼はDランクの冒険者ですよ? 騎士団ですら手を焼くグリフォンを彼がどうやって倒したというんです……」
「で、ですが!!」
それでも、認めないメリッサ。
これはロード達がどうのこうのというより、レイルが死んだと認めたくないのだろう。
全くバカバカしい。
なんであんな役に立たないカスのためにロード様が語ってやらねばならん、とばかりに心の中でため息をつく。
「つまり、それこそがデマだということです。Sランクの俺たちですら手を焼く大空の覇者!!──それを倒したというなら、証拠を見せてほしいものですよ!!」
あーーっはっはっは!!
「…………あっそー。そんなに証拠が見たいなら、見せてやるよ」
──バンッ!
気持ちよくレイルを罵っていたロードのもとに、派手な音を立てて扉を蹴立てる一人の影。
そいつは、正面から堂々とギルドに乗り込むと、ロード達の目の前にズカズカと────……。
「え……?」
「な……?!」
「ちょ──!!」
ゴツ、ゴッ、ゴッ!!
「お、お前──……!」
「れ、レ……──」
ゴッゴッゴ!! と、固いブーツの足音も荒々しくギルドを行く人物。
そいつこそ、件の冒険者で────胸に鈍く輝く冒険者認識票にははっきりと「Dランク」と……。
あぁ、そうとも。
彼こそが疫病神と忌み嫌われる冒険者で────。
……万年Dランクの──。
れ、
「「「「れ、レイル?!」」」」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
《作者からのお知らせ!》
※2025/11月中旬、 辺境領主の3巻が刊行となります。
今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。
【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん!
※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる