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夢魔と人形

夢の中へ・7

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「別にええじゃろ、ゴーレムが恋バナしてたって」
「いや別にいいんですけども……」

決死の覚悟で夢に飛び込んだ結果、辿り着いたのが恋バナ。
マッピーはなんとも言えぬ脱力感に襲われていた。

一方でインキュバスはニヤニヤとしたり顔だ。
状況がこちらに攻撃的ではないことを理解し、どこか他人事のように楽しんでいる。

「女の子同士混ざってきたらどうじゃ?」
「世の女性が全員恋バナ好きと思わないでくださいよ」

きい。
先ほどよりも警戒を薄めて扉を開けて、

『インキュバスにまた銃口突きつけちゃった』
『これで総計百三十二回目ね』

「えっ」

己を表す名前に直撃した。

『そろそろ嫌われてもおかしくないかも』
『やだー!』
『でも態度変わらないよね』
『そんなところも好き!』

がちゃん。
さすがに三度目ともなると気づかれるのではと思ったが、向こうは自分たちの会話に夢中のようだ。
滂沱のごとく汗を垂らすインキュバスに視線が向けられることはなかった。

「良かったですね、好かれてましたよ」
「えーっと、すまんけどタイプじゃないっていうか」

今度はマッピーがニヤニヤ顔を向ける番であった。
普段飄々としているインキュバスがうろたえる様をからかうのは大変に面白い。
ちょっとしたいじめっ子精神に目覚めた瞬間であった。
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