二度目の語りはどうあれ花よ

mrr

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10語り

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鬼松 千熊が一国の主と成った。
ここから先は更なる波瀾万丈の運命が待ち構えている。
なので要らぬ話に花を咲かせる余裕はないはずだ。

「アントニアちゃんがですね、『ここで一番でかい『バカ』が出た』と言ってました」
「お嬢さん、話題を変えませんか」
「私もバカだと思いました」
「なんで???」

はず、なのだが。
平然と話の続きを促すロッテに、話題を変える様子は微塵も見られない。

ケンシローの耳が再び垂れ下がってきた。
異国の二回りは離れた少女にバカバカ言われればさすがに凹みもする。

「夜伽、というのはその、夜のお誘いのことなのですよね」
「そうですね」
「誘いを了承したのに芝居の一座とやらの別の方と致した、ということですか」
「まって誤解がある!」

二股野郎めが、とでも言わんばかりの冷たい目線に、えらい勘違いを受けていることを察したケンシローは声を張り上げた。
できることならノータッチで別の話題に移りたかったが、これを無視するととんでもないことになると己の勘が警鐘を鳴らしていた。

「確かに芝居の一座、っていうのはそういうことを商売にしてる男の子の役者さんが多かったしそれ目当てに行ったけど、彼らと致したわけじゃない!
夜伽にあたって準備しておくこととか気をつけておくこととか聞きに行ってたの!」
「キャバクラ帰りのお父さんのような言い訳です」
「ちがう!
熊様と私が夫婦みたいな例え方も止めて!」
「そのようなものでは」

ロッテの返答に、無意味に暴れていた尻尾をはた、と止めた。
どうやら根本的なところで思い違いがあるらしい。

「夫婦じゃない」
「でも」
「あの時代、武将が男を夜伽に呼ぶのは良くあったの。
大抵は強固な絆を結んで裏切らせないようにするために。
普通は自分より年下、特に十代の子を呼ぶのが主流だったけど……
家来であると誓ったし、私が呼ばれたのも他に信頼できそうな相手がいなかったんだろうな」

さすがにあの頃の年じゃとうが立ちすぎてるよ、とくたびれ気味に首を振るケンシローに対し、その台詞を吟味する。
ケンシローと熊様は既に強固な絆を結んでいる(一方からの意見)。
裏切らせない目的で夜伽をやる必要はない。
ケンシローの当時の年齢から、必ずしも夜伽をしたい対象でもない。
となると、熊様がケンシローを夜伽の相手に指名した理由は、どう考えても。

「……やっぱりケンシローさんはバカです」
「またバカって言った!」
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